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文明開化がもたらした相棒たち【#創作のマストアイテム】

きっかけはラジオ

ひょんなことから、ハガキと向き合うことが増えた。
きっかけは「星野源のオールナイトニッポン」という深夜ラジオで、ハガキ限定のコーナーが爆誕したことだ。
そこで手にした、久しぶりのハガキ。
年賀状以外でこのハガキを手にしたのは、いつ以来だっただろうか。
手書きでボールペンを走らせることに、とにかく緊張したことを覚えている。

しかし、パソコンとスマホに慣れすぎた現代人にとって、手書きはあまりにもハードルが高すぎた。
年賀状だって宛名含めてほとんどが印刷だし、辛うじてメッセージを手書きするにしたって文章はほんの数行だ。
それを、ハガキ全面に手書きする作業。
指は思うように動かず、文字はお世辞にも褒められたものじゃない。
これはどうにかしないと、と決心したのは4年前だった。

そこで私は、ふたつの武器を手に入れた。
ひとつは「フリクションボール」、そして「プラチナ万年筆 プレジール」だ。

フリクションボール

実際にあった出来事であっても、文章はどうしても組み立てたり表現を考えたりするものだ。
そうなると、私にはどうしても「下書き」という作業が必要になる。
それこそスマホやパソコンでメモ帳機能を使えばいいと思うが、パッと思いついてガーッと殴り書くのにはやはり紙とペンが必要不可欠なのだ。

そこで迎え入れたのが、おなじみのフリクションボール。

細身で持ち運びしやすく、しかも書いて消せる。
これほど下書きに向くものはなかった。
投稿してしまえば捨ててしまうだけの文章だし、むしろ消えてくれてありがたい。
カラーバリエーションも豊富なので、何本か持っていても持ち運びは苦にならなかった。
余談だが、どうしても消してしまったものを復活させたいときは冷凍庫に入れておくと少し浮き出てくる。
消すときも要は熱が伝わればいいだけなので、極端な話、火で炙っても消える。
これを作った人に称賛を贈りたくなるような、まさに凄まじい文明開化だ。

閑話休題

その一方で、実はその文章をまとめあげた後、スマホやパソコンに打ち直している。
だって拡大縮小も簡単にできるし、文字のバランスを見るにはやはり文字を並べて見るのが一番なのだ。
文明の利器を余すところなく使い倒して、ハガキ1枚に書く短い文章は着々とブラッシュアップされていくのだ。
じゃあ最初からスマホやパソコンで…と言いたくなるのは分かる。
けど、結局ここに落ち着くのだ。
人間だもの、無駄を楽しむ生き物であってもいい。

プラチナ万年筆プレジール

そして、完成した文章をいよいよハガキに書き写す。
そこでようやく登場するのが、お気に入りの万年筆プレジールだ。

たぶん、文章を書く人ならば一度は憧れるものがある。
それは羽根ペン、ガラスペン、そして万年筆だ。
なんなら封筒には封蝋(シーリングスタンプ)を押してみたくなるに違いない。
けど、そのどれもがなかなか高価なもので、おいそれと集められるものではなかった。
それなりのお店に行かなければ見ることも叶わなかったし、手にするにはハードルがかなり高い。

そんな古来からの文房具にも、文明開化は訪れていた。

気がつけば千円以下で万年筆が売っていたのだ。
欲を言えば高価で一生モノの万年筆をお迎えしたいとは思うが、残念ながら現状では手間も暇も金もない。
そんな私にも手の届く場所に、プレジールはいた。
見た目はそれなりに重厚感があるが、本体はアルミニウム製で思った以上に軽くて持ちやすい。
しかもインクはカートリッジ式で、ペン先の乾きもほとんど感じない。
ほぼノーメンテナンスで使えてしまうのだ。
本来なら水に浸けたり洗浄したりと、相当な手間のかかる万年筆なのに…一体どんな理屈なのだろうか。

万年筆があるだけで、テンションが上がる。
一文字ずつを丁寧に書こうという気になるし、筆圧でなんとなく文字に個性も出る。
もちろん、まだまだ不便はある。
インクはたぶん水に弱いだろうからと、雨の日には投函するのを見送る。
書き損じても修正テープにはうまくインクが乗らないので、渋々最初から書き直す。
けど、それを含めてもこの万年筆という筆記具は、愛おしい。

ハガキの向かう先

送ると言っても宛先は番組宛で、スタッフさんの手に渡ったとしても読まれる可能性なんて、とてつもなく低い。
それでも何かを思いつけば、懲りずにフリクションボールを手に取り、早く万年筆を持ちたいなあとうずうずする。
余談だが、星野源のオールナイトニッポンのノベルティには「ねぶり棒」というものがある。
詳細は省くが、それが欲しいという欲望も抱えつつ、昔ながらのハガキを何度も懲りずに投函する。
届かない恋文よりももどかしいハガキだけれど、そんなどうしようもない状況にまた笑いたくなる。

文明開化がもたらした、時代の先端と古来からの技術がグチャグチャになったこの2本。
私の大切な相棒は、今日もくだらない投稿に付き合ってくれるのだ。


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