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伊吹藍と志摩一未【MIU404】

第6話を過ぎ、当初思い描いていた主人公2人の印象が全く違うことに震える日々です。
ちょっと、そこらへんを書き留めておこうと思います。
これはあくまで私見であり、今までの回のネタバレを含みます。
あと、私の予測は当たったことがないので、そこらへんはそういう生ぬるい気持ちで見てもらえると嬉しいですw

◎志摩一未の失いたくないもの



第6話で、志摩の過去が明かされました。
「相棒殺し」という言葉はちらほら聞こえていたものの、実際には相棒の事故死であり、その背景には志摩の「悔やんでも悔やみきれない苦悩」が隠れていました。
何度もスイッチがあったにもかかわらず、お互いの正義を主張し続け、そのサインを全て無視してしまう。
その結果、相棒たる香坂を失ってしまう…という結末は、あまりにも惨すぎました。

志摩の当初の設定は「自分も他人も信用しない」「観察眼と社交力に長け、常に先回り思考で道理を見極めようとする」でした。
自分を信じられないのは、香坂を失ってしまったことへの後悔なのでしょう。
他人へ疑いを向けてしまうのは、もしかしたら志摩の「正義」が既に存在しないから…なのかと思いました。
それは悪く言えば「信用しない」ということになりますが、良く言えば「どんな正義も、時に『暴走』する」ことを知ったから、なのかと。
香坂も思い込みであったとはいえ、犯人逮捕に向けて全力で走りました。
もちろんそれは誤った方法だったし、許されるものではありませんでした。
けど、その時、間違いなく香坂は「正義」のために動いていたのです。

「正義」という概念は、定まった形のないものだと思います。
個々の信じるもの、見えているものによって、簡単に姿も形も変えてしまうものです。
どんな犯罪にも、犯人なりの「正義」があるからです。
「理不尽な上司を止めるため」「汚いお金を誰かのために使うため」その理由はそれぞれが抱えています。
もしかしたら第1話の犯人だって「自分の前を走る失礼な輩に鉄槌を下すため」という大義名分があったのかも知れません。
(もちろん、麻薬を使ってのあおり運転が正義だとは私も思いませんが)

志摩にとって「相棒(バディ)」は「絶対に失いたくない存在」なのでしょう。
だからこそ、伊吹が危機に晒されるくらいなら、自ら銃口を額に向けるくらいのことを平気でやってしまう。
無謀な運転を咎め、「お前は長生きしろよ」と言い、「安全第一!」と防弾ベストを装着させる。
信じる信じない以前の話で、志摩はトラウマである「相手への無視」だけは絶対にしない。
当初は偉そうな元捜査一課、上から目線の規則オバケな印象でしたが、裏を返せば相棒・伊吹を守るために痛々しいほどの努力をしていたのかも知れません。
「野生のバカ」と揶揄され、全く理解できかねる伊吹を「カバーしきれるのか」という不安が、志摩を一層冷酷にしていたのではないかと。

ただ、回を重ねるごとに見えてくる伊吹の「信じる」というスタンスと、ただバカなだけではなく冷静さも志摩は見抜いていた気がします。
そんな伊吹が少しずつ志摩の心を動かし、最終的には隊長や陣馬にも言えなかった「香坂への懺悔」を吐き出せたのではないかと思います。
もちろん、香坂を失ったことは消えないし、きっとこれからも「あの時こうしていれば」という後悔はずっと続くのでしょう。
けれども、その一方で「俺の生命線は長い!」と言い切る伊吹の姿も、一緒に思い出すことになる気がします。
「俺は伊吹を案外買っている」と言っているくらいなので、全面的とは言わないまでも、背中を任せる「バディ」であることは間違いありません。
消えない後悔を背負いながら、少しずつ伊吹との「404」が積み重なることを、願ってやみません。

◎伊吹藍のバカの向こう



そして。
ここまで来て、徐々に伊吹に対する感覚も変わっています。
「機動力と運動神経はピカイチの野性のバカ」「考える前に動いてしまう」と言われ、第1話では理性の行方が心配なほどでしたがw
第1話でも「あれだけ許しがたい犯人を撃たずに捕まえる」という理性を見せ、第3話でも高校生にカマをかけながら正しい道を選ばせ、第6話ではあの堅物・九重までコントロールした挙げ句に臨時バディを組み、最終的には隊長や陣馬をも味方につけています。

伊吹の「野生の勘」は、あると思います。
けれども、伊吹の行動はそれだけに支配されてはおらず、圧倒的に繊細な「場の空気を読む力」と「冷静な判断力」をも兼ね揃えているとしか思えないのです。
冷静さだけで言えば、もしかしたら志摩をも上回るのかも知れません。
確かに「機捜の常識」や「警察の決まり」はあんまり覚えていない気もしますがw、それ以外はもしかして「優秀すぎる」くらいの人物なのでは?と思ってしまうのです。

しかも、伊吹に関しては「奥多摩に飛ばされていた」くらいの情報しか出ておらず、その原因も「許せない犯人相手に暴れた、そして銃を撃った」くらいしか語られていません。
(他は何となく「問題児だった」くらいのニュアンスしか見えていない気がします)
その「許せない」ものは未だにはっきりせず、あとは本人が「よく職務質問される」「信じてもらえなかった」と言っていたくらい。

ここまで的確に動けるのなら、もっと評価されるべき何かがあっても良さそうなのですが…それは全く見えません。
もちろん、桔梗隊長率いる4機捜がなんだかんだで伊吹の「野生の勘」を信じ、規則を守りつつもしっかり使ってくれるから!というのが有力でしょう。
ただ、やっぱり何となくモヤモヤするものが残ります。
なんとなく伊吹にもまだ「何か」が隠されているような気がしてならないのです。
もしかしたら、それは志摩のように、もしかしたらそれ以上に、深い後悔や闇なのか…と疑う気持ちもあります。

ただ、基本的には明るくて可愛くて自分のことを「藍ちゃん!」と呼んでしまうキュルンな伊吹です。
伊吹と志摩の会話劇は本当にどこまでも軽快で面白くて、ついつい爆笑してしまうのです。
そんな最高の凹凹バディをずーーーっと見続けたいと願ってしまいます。

◎側の人たち


そして、もう今更すぎる話ではあるんですが。
そんな伊吹藍を伊吹藍たらしめるのは、やっぱり綾野剛の凄みだとつくづく思うのです。

とても個人的に、私はたまたま綾野剛さんをデビュー作「仮面ライダー555」で見ていました。
劇中のほんの数話だけ出てくる敵役だったのですが、その儚さと強さがメチャクチャ印象に残っていました。
デビュー作ですら鳥肌モノだった演技力…いや、ご本人がおっしゃるように「生きている」としか言えないほどの存在感。
伊吹の「愛らしさ」と「冷静さ」を同時に表現できるのは綾野剛さんしかいない!と断言できます。
特に第6話の、隊長へ直談判するシーンは背筋がゾクゾクするほどに感情が乱舞していくんです。
興味本位なんかじゃない、志摩と一緒に走りたい、だから必要なんだ。
その切実とも言える思いを、ほんの数分で、表情とイントネーションだけで全部余さず伝えてくるんですよ…

もうね、今思い出しただけで涙ぐんでますから、私は。

それまで明かされていない伊吹の真剣さや熱さが、その数分にぎゅうっと凝縮されたシーンでした。
説明されなくても伝わる気持ちって、本当にあるんだなあと。
とんでもない俳優さんですよ、綾野剛さんは。

そして、その隣に立つ志摩一未を志摩一未たらしめるのも、やっぱり星野源の凄みだと思うのです。
当初から「ただの冷静な人物じゃねえ」と見せつける激昂っぷりで驚きましたが、その性格の人間らしさですよ。
ただの冷酷マシーンでもない、ただのキレキャラでもない、もちろん出来すぎな奴でもない。
不思議な人だなあと思わせておいて、ふと見せる目の向こうには、おどろおどろしいほどの深い闇。

星野源さんはコウノドリから拝見してますが、ハマりすぎてあれこれ漁っているので過去作品も網羅してますが。
「今までにない星野源」と脚本家・野木亜希子さんが言うとおりの人物になっています。
その仄暗さや切なさ、苦しさを一瞬で見せてくる演技力も、綾野剛さん同様に唯一無二だと思うのです。
やはり、第4話での銃口を額に当てる瞬間はもやは人ではありませんでした…もう「死」の縁にいる何者かになっていた、そんな怖さを感じました。
とんでもない俳優さんですよ、星野源さんも。



次は第7話、謎の男も動き出し、エトリの存在も感じます。
どうか404が最高のバディでありますように。

そして、苦しくて辛かったとしても、最後は笑って終われますように。

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