音も色もない世界

自慢じゃないが私はゲームが好きだ

ぼちぼちアラフィフなんて話も聞こえてくる世代だが、私はゲームが好きだ。

同世代と比較しても、たぶん尋常ならざるゲーム遍歴を持っている。

小学4年生でPC-6001というパピコン(大昔のパソコン)をおもちゃに、BASICというプログラミングで遊び、愛読書はマイコンBASICだった。

カセットテープで起動する色鮮やかなゲームに魅せられ、家で黙々とディスプレイに向かっていた。

ピポパポと軽快に鳴り響く音を真似て、歌ってみたりもした。

ドアドアMarkIIのBGMは、今でも口ずさめる。

とりあえず、今に至るまでこんな小学4年生女子に会ったことはない。


その後、ファミコンもスーファミも、プレステにセガサターン、3DOにPC-FXにワンダースワン、ドリキャス…とにかく手当たり次第プレイした。

時が経ち成人し、家庭を持つことができた。

もちろん伴侶もゲーム好きである。

子を育むといつしか家族それぞれがPSPを構え、家族でパーティーを組み、モンハンで宝玉を集めるような家になった。

そして子がそこそこ成長した今も、私はPS4でデスストやらfallout76に勤しんでいる。

とりあえず、今に至るまでこんなカーチャンに会ったこともない。


それくらいゲームが好きだ。


推しが推す推し

そんな私だけど、2次元だけでなく3次元にも推しがいる。

その推しは、星野源という。

言わずと知れた音楽家であり、俳優であり、文筆家であり、ラジオのパーソナリティーでもある。

我が推しは時折、自身の深夜ラジオでゲームの話をしてくれることがある。

そして、とある回で紹介してくれたゲームが、こんな私のゲームの概念を変えたのだ。


音も色もない世界

そのゲームは「LIMBO」という。

大半のゲームタイトルは網羅しているつもりだったが、そのタイトルは聞いたことすらなかった。

聞けばPCのゲームプラットフォーム「STEAM」でプレイしていたゲームだそうだ。

私はパソコンこそ持っていたが、STEAMを使ったことはなかった。

けど「LIMBO」は発売からそれなりの年数が経っていて、調べてみると今はPS4でもプレイすることができた。

そりゃあゲーム好きとしては全力でプレイしますよ。

推しの推すゲームですもの。

(↑ 星野源のオールナイトニッポン過去ログ。ゲーム以外にも多岐にわたりすぎる内容満載なのでぜひ聴いて欲しい。)


スタートした瞬間、開くソフトを間違えたのかと思った。

そこに広がるのは、白と黒の、まるで可愛らしい、けどどこかおどろおどろしい、不思議な影絵の世界。

私が初めて触れたゲームでさえ音も色もあったのに、この世界にはそれすら存在しない。

なんていうか…味気ない世界だ、と思った。


目の前に立っているのは、小さな男の子。

…そこから待てど暮らせど、何も起こらない。

そういえばラジオの紹介で「説明らしい説明は一切ない」とか言ってたような。

と、意を決してコントローラーを持ち直す。

ゲームだもの、とりあえずどんな状況でも何とかなるだろ。

そう思いながらてくてくと進むと、草むらが見えてきた。

どこまで進むのか…と思った、次の瞬間



少年の首は、転げ落ちた。



それは恐ろしくリアルだった。

その世界にはBGMも色もないはず。

それなのに、ごとりと首が落ちる音が脳内に響き、鮮やかな血飛沫が目に浮かんだ。

草むらだと思っていた場所には、トラバサミの罠が仕掛けられていたのだ。

それを踏んでしまった少年は…、恐ろしさのあまり、絶句した。


茫然とコントローラーを抱えていると、ふと少年が目を覚ました。

そこは、少し前に見た景色。

首は繋がっている。

ああ、そうか。少しだけ時間が巻き戻った、ということか。

思考回路が動き出したその瞬間、音楽もない白黒の世界は、一気に色を帯びた。

(↑ LIMBOのPS版情報。続編のINSIDEもメチャクチャ面白いです。)


そしてゲームはつづく

最後まで、そのゲームには色も言葉も、音楽さえもなかった。

けれど、頭に浮かぶのはたくさんの物語であり、たくさんの感情だった。

途中で酷さに泣き、徐々に見えてくる背景に困惑し、最後に胸が熱くなった。

ゲーム歴をそれなりに重ねてきた私にとって、その世界はカルチャーショックそのものだった。

誰だよ、もはやゲームは遊び尽くしたなんて思ってたバカは。

必須だとさえ思っていた要素がなくても、ゲームは成立する。

それどころか、説明がない分だけ想像力が爆発的に働き、今までに経験したことのない感情まで沸き上がる。

なんだこれは。

こんなゲームがあったのか。

ゲームの世界、まだまだ知らないことばかりじゃないか。


閑話休題・大人のゲーム

さて、少しだけ推しの話に戻る。

星野源という人は、幼少期からゲームにのめり込むような、俗に言う「ゲーマー」ではないという。

小さい頃こそ親とファミコンでマリオを徹夜クリアしたりしたそうだが、スーパーファミコンの波には乗らず、PCエンジンを買ったことでゲームから離れてしまった。

(※当時のソフトラインナップや子供的お財布事情が影響したのでは?と勝手に思っている。本人は「PCエンジンは名機」と断言したり、CD-ROM2欲しかったと回想している。個人的にはPCエンジンを褒めてくれて非常に嬉しい。)

(↑ PCエンジンの概要。どうでもいいけどPCエンジンmini欲しいです。あとゲームギアミクロも。)


その後、成人してから「ゲームセンターCX」を見てレトロゲームに目覚め、MOTHERシリーズでゲーム好きが一気に加速した。

そのためか、星野源のオススメは「私の知らないゲーム」が多い。

もちろん、ゼルダやバイオハザードのような鉄板ラインナップもあるが、その一方で今回のLIMBOや続編のINSIDE、undertale、PORTALなど意表を突くものも多かったのだ。

そこには大人ならではの楽しみ方だったり、着眼点がゴロゴロと転がっていた。

そこに私は惹かれ、実際にプレイしてみると新しい世界が次々と開けていった。


こんなゲーム人生もあり(と思いたい)

大人になり、子育てや仕事に振り回され、ゲームのリサーチにすっかり疎くなった私にとって、推しの推すゲームはまさに宝物そのもの。

そして幼少期からゲーム漬けだった弊害なのか、割と「食わず嫌い」なジャンルもあることに、今更ながら気がついたりもした。

子供の頃とは違い、今はゲームシナリオひとつ取っても受け止め方が変わっている。

善悪だけでなくその背景や心情、取り巻く環境、たくさんの情報を受け止めることができるようになっているからだろう。

推されるゲームを片っ端からプレイしているおかげで、四十路に入ってから人生初のFPSに勤しむ日々を過ごしたりしている。

大人メガネを駆使しつつ、一向に上達しないエイムに頭を抱えながら、まあなんとか戦っている。

10回負けても11回目には勝てたりする。

それが糧になって、日々を生きているのだ。


そんなFPSの合間に荷物を運んで山々の隙間をジップラインで飛び回ったり、その片手間にスマホでクソみたいなパズルゲームに精を出したりもしている。

忙しくて、楽しくて、最高に充実した時間だ。


ゲームという夢の外

日々「大人の階段昇ってる」自覚はあるし、きっとこの先ままならないことも増えてくるのだろう。

けれども、私にとって夢のようだったゲームの世界の外側には、私の知らない世界がまだまだ広がっている。

そんな驚きを分け与えてくれるクリエイターさんたちに感謝しかないし、それを教えてくれる人達にも感謝を伝えたい。

そして、こんなゲーム漬けの人生も、きっと楽しい。


私の葬式をやるのならBGMはチップチューンにして欲しいし、なんなら遺影が16bitとかってのも面白い。

そうやってほくそ笑みつつ、今日もPS4の電源を入れた。


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