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戻らないものと変わりゆくもの【MIU404 #6 リフレイン】

放送から1週間近く経ちますが、未だその衝撃から抜け切れていません。
志摩の過去は、あまりにも辛く苦しいものでした。
救えなかった生命と、救われない気持ちと、そこにあったもうひとつの事実の話。



◎爆弾発言ってこういうこと


志摩が「相棒殺し」だと言われている。
それを知った伊吹はどうにかしてその話を知りたいのですが、なかなか上手く切り出せない様子。
「あ!…あ。…あ?」って言っても伝わらないでしょうねw
(この段階で「伊吹なりに切り出すタイミングを計っている」のが結構重要だと思う)
話をしようと引き止めても「結構です」されてしまい、最終的に伊吹が取った行動が

「いよっ、相棒殺し!」

凍りつく空気。
い、伊吹さん、それは貴方にしかできない方法です…というか一歩間違えば全てが音を立てて崩れかねない、かなりのパワープレイ。
きっと数多のお茶の間も凍りついたと思います、とりあえず我が家は凍りつきました。
無言で伊吹を見据える志摩の表情は、額に銃口を向けたあの「死にたがり」の時と重なり、本当に怖かった…。

陣馬と九重に止められつつ、ようやく「本当に相棒が死んだ」という事実に向き合った伊吹の「マジか…」が低く真面目な声でまた切ない。

改めて志摩にその話を真っ向から振る伊吹。
陣馬は「6年も昔のこと今更ほじくったってしょうがねえだろ!」と止めますが、そんな言葉で止まる伊吹ではありません。
当の志摩はロッカーの扉に思いっきり当たりながら「うぜえ…」とポツリ。
そして伊吹に宣戦布告するのでした。

「やってみろよ」と。

心配する陣馬に対しては「どうせ分かりませんよ、本当のことなんか」と冷静に返す志摩ですが、明らかにいら立っている様子。
成り行きで桔梗家に行くことになったこともあり、志摩は早々に分駐所を立ち去るのでした。



◎臨時スペシャルバディ、爆誕


そんなことでは負けない伊吹。
その場に残っていた九重を盛大に焚きつけます。
「志摩だったら調べてくれるのになあ…まあ、きゅーちゃんには無理かあ♪」
その一言でまんまとスイッチが入ってしまう九重。可愛すぎか!w
こうして、伊吹と九重という臨時スペシャルバディが誕生したのです。

まずは「相棒殺し」と言い放った、当の本人に直撃!
刑事局長の肩書きを存分に使いながら、2人は事件の概要を知ります。
そして、その前日に逮捕された南田弓子連続毒殺事件のこと。
タリウムという薬品を使い、同僚男性2人を殺害した女性が逮捕された事件。
(この時、九重が犯人に対して「怖い女だな」と呟きますが、伊吹が「どっちがだよ」と言っています。これもまた謎です…)
その事件を担当していたのが、当時捜一(捜査一課)にいた志摩、そして香坂というバディでした。
志摩が「相棒殺し」と疑われている原因は何点かありました。
ひとつは、殺してもおかしくない剣幕で香坂と言い合いをしていたこと。
そして、犯人逃亡という非常事態があったにもかかわらず、志摩も香坂も捜索に参加していなかったこと。
最後が…転落死したと思われる香坂の第一発見者が志摩であり、そこに駆けつけたのは志摩とは旧知の仲である3機捜の隊員「桔梗と陣馬」だった、ということでした。

そうとなれば、まずは身内から。
ということで陣馬を酔わせて吐かせるバディ。伊吹、そこからなのかw
ぐでんぐでんな陣馬さんも本当に可愛かったです。
酒瓶の蓋すら外し忘れる泥酔っぷりを見せながらも、最後まで口を割らなかった陣馬さんはやっぱり刑事の鑑!と思いましたねえ。
そんな陣馬でしたが「飲めばいいんですよね。飲めば、話を聞かせてくれる」といきなり酒を手にしたバディ・九重には屈するしかありませんでした。
あれだけ酒ハラスメントはお断りだった九重が、ここまでしようとする真剣さを見たら…それは話すしかないですよね。

陣馬は、当時の様子を語り始めます。
志摩は香坂から漂う酒の銘柄を当て、転落死に見えると指摘し、屋上への上がり方も正しく答えました。
そう、まるで現場に来たことがあるように。
そして…香坂の最後の手紙があった、と。

寝てしまった陣馬から、標的は隊長・桔梗へチェンジ。
酔ったままで来てしまい隊長に「面白半分に調べることではない」と言われながらも、反論する伊吹がもう最高でした…。

ここはもう、とにかく見て欲しい。
言葉にしても伝わらない。
ただひたすらに、伊吹の真っ直ぐな訴えに感涙でした。
「一個一個、大事にしてぇの。志摩と全力で走るのに、必要なんっすよ」と微笑む伊吹が、本当に全力で切なくて…

と書いているだけで、泣けます。というかウルウルしてます。

その甲斐あって、伊吹と九重は刑事部長(ってことは九重パパではないのか)に提出したという転落死事件の報告書を見せてもらえました。
「変な噂に惑わされてウロウロされるより、事実を共有した方がいい」という隊長の考え方が最高にクールです。

手紙と呼ばれたのは、香坂の退職願。
志摩と香坂が追っていたのは、中山詩織という容疑者です。
しかし逮捕への決定打はなかなか見つかりません。
焦った香坂は単身で容疑者を訪問し、麦茶のようなものを無理やり飲まされてしまいした。

どうにかして証拠を取りたい香坂は自分の毛髪を鑑定に出し、さらに証拠を捏造してしまいます。
「使えない奴だと見限られたら、捜査一課にいられなくなる」というのは恐怖だったのでしょう。
志摩はその証拠捏造に気がつき、香坂を問い詰めます。
しかし「命がけでやってるんだ!」という香坂の叫びに、一瞬眉をひそめました…。

そして、犯人は逮捕されました。
志摩と香坂が追っていた中山ではなく、南田という名の犯人が。

改めて報告書を片手に、現場を確認する伊吹志摩バディ、そして付き合わされる陣馬w
(検死報告書に三澄ミコトの名前があってグッと来ました)
香坂は低い場所からの転落死であり、足を滑らせる事故であったことは間違いありませんでした。
そっと現場で手を合わせる伊吹。こういうところが伊吹ですよね。

現場を後にしながら、九重は陣馬に「俺が香坂刑事だったら、志摩さんに言えたかなあ」と漏らします。
エリートで通ってきた九重が、初めて口にする「失敗」への恐怖。
そして間髪いれずに「間違いも失敗も言えるようになれ!」と叫ぶ陣馬。
404だけじゃない、もうひとつのバディが最高に熱い瞬間でした。

それにしても伊吹九重バディも、相当に面白かったです。
伊吹の軽さに乗せられて、あれだけ嫌がっていた「親(刑事局長)の肩書き」を全面に押し出して聞き込みをしたり、お酒の力を借りて陣馬の懐に入っていったり。
果ては飲酒状態のままで隊長の前に出て行くという、良い意味での「弾けた九重」が見られましたね。
それと同時に「自分が使えない奴だって認めるのは、怖い」という、自分の弱さをバディである陣馬に見せることができた九重。
陣馬さん、そんな九重を見られて嬉しかっただろうなあ。
これがきっと「人間としての成長」だし、機捜としてのステップアップにも繋がるでしょうから。



◎隠れていたもうひとつの事件


「志摩、教えて」
生きてる香坂に会ったのはいつよ?なんて声かけたの?
こう問いかける伊吹に、志摩はゆっくり答えます。
伊吹の出した「事故だった」という結論に、志摩は安心したのかも知れません。
それが真実であり、志摩にとっての後悔そのものだったから。

まるで懺悔のような、志摩の震える声。
声をかけなかったという後悔が、何度も何度も志摩の心を抉ります。
たくさんあったスイッチを無視し、見ない振りをした。
「進退は自分で決めろ」、それが香坂への最後の言葉だったなんて。
「事故?俺はそうは思わない。悔いても悔いても時間はもう戻らない」

言葉をかけていれば。
少しでも顔を見ていれば。
失ったものにその真意を聞くことはできず、だからこそ後悔はどこまでも救われることがありません。
志摩が持つ事実は「転落による事故死」であり、その背景には自分の無視してきたスイッチが無数に存在している。
どんな言葉をかけたって、たぶん志摩は救われません。
それはもう二度と消えない後悔で、それを打ち消すものなんて存在しないのですから。

けれども、伊吹はあることに気づきます。
それはもうひとつの「事実」でした。

「志摩、今すぐ来い!」「来ないとお前は、後悔する!」
突然電話してきて、いきなり来いと急かす伊吹。
「はぁ?な」で切られてしまい、行かねぇよと悪態をつく志摩ですが…悩んで、空を見て、苛立ってw、そして伊吹の待つビルの屋上へ向かいました。

「俺は凄いことに気づいた」
伊吹は管轄外になる、向かいのマンションを指差します。
「香坂ちゃんは気づいた、犯罪の瞬間を」
そのマンションには「この部屋を見て110番してくれた人!探してます!!」という大きな張り紙があったのです。
その事件は実際に入電記録も残され、時間も香坂の言動と一致します。

「その人にくれぐれも伝えてください。あなたのおかげで、元気でーす!」
香坂の救った女性は、結婚を控え、もうひとつの命を宿していました。
「香坂は最後まで警察だった」これは、紛れもないもうひとつの「事実」だったのです。
「…はい、必ず伝えます」と言った志摩の、表情がもう本当に切なくて。
笑顔でもなく、泣くのでもなく、たくさんの気持ちを抱えた表情がありました。

志摩は、ずっと行けなかった香坂の事故現場に立ちました。
「ずっと来られなくて、ごめん」
志摩の懺悔は…ここも、ここも本当に見て欲しい。
「お前の相棒が伊吹みたいな奴だったら…生きて、刑事じゃなくても生きて、やり直せたのになあ…」
けど、志摩に手を差し伸べてくれた伊吹でも、香坂を救うことは…もう、できません。

「忘れない…絶対に、忘れない」

「なーに話したの?」「…内緒」
ちゃらっと聞きはするものの、それ以上掘り下げない伊吹の優しさがまたグッと来ます。

「ま、安心しろ。俺の生命線は、長い!」

最高の笑顔で、手のひらを見せつける伊吹。
少しだけ驚いたように見えた志摩を横目に、伊吹は続けます。

「殺しても死なない男、それが、伊吹っ、あーい!!!」(ドヤァ)

「…今、心の底からイラッとした」

少しだけ微笑む志摩。
そして、隊長の息子・ゆたかに呼び出された志摩と伊吹は、桔梗家でバーベキューを楽しみます。

その様子が、盗聴されていることも知らずに。



◎例え戻らないとしても


志摩の見逃してきたスイッチは、もう二度と変えることができません。
それはもうひとつの事実が出てきたとしても、傷痕のように深く強く残るのだと思います。

けど、志摩は確実に「同じ過ちは繰り返さない」と思っているはずです。
どんな質問でも、どんな電話でも、絶対に見逃さない。
1話からそういうシーンがたくさんあり、一度たりとも伊吹を無視することはなかったのです。
(面と向かってなら、お断りすることはありますがw)
過去は消えなくても、この先で後悔することがないように。
どれだけブーメランを食らっても、やり残すことがないように。
この後悔の裏には、志摩の決意と揺らがない意思がはっきり見えた気がします。

それと同時に、伊吹の冷静な機動力のようなものも見えた気がしました。
確かに初動は「野生の勘」であっても、それを裏付けるための努力を惜しまず、冷静な判断力も兼ね備えているのが分かりました。

「他人も自分も信じない」志摩が、伊吹を信じたら。
きっとまた、新しい分岐点に立てる気がします。


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