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5レーンと最適解

こんにちは、ニシザワです。今回は直近の試合での問題点を整理し、最適解を考察していこうと思います。

(*選手は敬称略です。)


さて、19節北九州戦、20節徳島戦と上位との6ポイントゲームを立て続けに落としてしまったアルビレックスですがこの2試合の問題点は何があったか考えていきます。

2試合とも基本布陣は4-4-2でした。途中中盤の4枚を横一列に並ぶフラットの形からダイヤモンドの形へと変更していましたが、これは今から説明する問題点を多少なりとも解消するために打った策と考えるのが妥当です。この点はまた後で述べていきます。

では本題に入りましょう。この2試合で起きていた大きな問題点は2つ。


①5レーンの整備が不十分

②左サイドの守備(至恩と荻原)


ではまず①の点から考察します。前回のnoteでも少し述べましたが、ここ数試合の至恩は基本ポジションは左サイドながら意図的に中央へ寄る動きを繰り返していました。18節千葉戦後のインタビューでも「監督からの指示」と答えています。おそらくアルベルト監督は至恩のプレー幅を広げる(左からのカットイン以外の選択肢を増やす)ことを狙ってのことだと思いますが、ある程度至恩に自由を与えた結果5レーン理論に不備が起きました。

5レーン理論とは、4バックの場合4人の相手DFを基準にピッチを5分割し各レーンに1人ずついることでディフェンスラインにギャップを作るという理論です。その際、左右から各2番目のエリアをハーフスペースと呼びます。ここをどう突くかが相手を崩すうえで重要なのですが、以下のようになっていました。(スタメンは徳島戦のものですが、大体起きていた現象は同じでした。)

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至恩が中に入りすぎたことで荻原が孤立し、前にDFが2枚もいる状況で、前へのパスコースが無くなる。さらには中島も中央でゲームメイクし、新井は相手のサイドハーフを見ているため右のハーフスペースをとる人がいなくなる。

5レーン理論を理解してもらえると、このポジショニングの問題点は分かりやすいと思います。そのため特に徳島戦では攻撃が行き詰まるシーンが多かったです。(北九州戦はある程度個の力で強引に剥がしていました。)

そして②の問題点。こちらは6ポイントゲームとなった2試合はもちろん、21節愛媛戦でも出ていた問題です。ひとことで言ってしまえば至恩のフィジカル不足により左サイドの守備が厳しいというものです。これに関してはポジションを変えない限り対処の仕様がないのですが、これも敢えて至恩に守備力をつけさせたいというアルベルト監督の狙いな気がします。いずれにせよ相手より身体を前に入れてる状況でも競り負けるというのはまだまだ身体的な弱さを感じます。そして左SBの荻原、彼も守備時に一か八かでスライディングする癖がありこの2人が縦に並ぶ左サイドの守備はかなり不安定でした。(荻原について補足すると、サイドバックよりサイドハーフやウイングの選手だと思っています。)


ここまでの考察でアルビに起きていた問題を理解してもらえたかと思います。ところが先日の22節甲府戦で、①5レーンの整備問題が解決されていました。

甲府戦の基本布陣は4-2-3-1、2列目の人選が左に至恩、右に大本、トップ下に高木とここ数試合では見ない形となっていました。また田上が右サイドバックへ入り、攻撃時は左肩上がりの3バックへと可変していました。この試合の主な狙いは以下の通りです。

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甲府の守備は5バックだったので厳密に言うと5レーンではなく6レーンの活用が必要です。まず甲府の右サイドバックは至恩が釣り出し、その内側を荻原がインナーラップ、これにより至恩にパスかカットインかの2択が生まれます。この形を狙うため甲府戦の至恩は比較的大外に張っていることが多かったです。そして右サイドは大本が相手の左サイドバックを釣り出し、状況に応じて高木が甲府の左センターバックの左右を走り分けていました。この判断は非常に的確で素晴らしかったです。

ただ守備時は高木がトップの位置まで上がる4-4-2のブロックだったので、②左サイドの守備が不安定な問題は解決されていませんでした。また荻原のインナーラップのタイミングがいまひとつだったのもあり(後半からは少し改善されていた)まだ最適解とは言えない状況でした。それでも後半戦最初の試合で改善の兆しが見えたのはプラス材料と捉えていいでしょう。


最後に私が考える最適解を紹介してみようと思います。基本布陣は以下の通りです。

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4-3-3をベースに守備時は至恩がトップまで上がり、中島が左サイド、高木がボランチの一角、新太が右サイドを担当することで4-4-2を形成します。そしてこのシステムのポイントは両サイドバック、攻撃時は以下のようになります。

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甲府戦の逆バージョン、右肩上がりの3バック可変です。至恩と大本が両サイドをピン留めし、空いたエリア、右のハーフスペースは新太、中央のエリアはファビオ、左のハーフスペースは中島がとります。左サイドバックに新井を置くことで守備問題も改善し、各スペースが有効活用されます。

ただこのシステムにも問題点はあります。それは至恩のプレー幅が広がらないということです。場合によっては相手のディフェンスラインを広げるためだけの役割になり、試合から消える時間帯が多くなるかもしれません。そのため至恩の成長を狙っているアルベルト監督は絶対にやらないでしょう。さらにはこの記事を書いている途中に新太が負傷のリリースも出たので実現不可能になりました(泣)。(一応矢村が同じ役割を担えるのではないかと考えましたが…)

ちなみにこの4-3-3システム、金沢戦や磐田戦の後半で追いつかなければならないときに少し使っていたので、将来的にはこのシステムを使いたいのではないかと想像しています。(アルベルト監督がアカデミー主任を担当していたバルサロナや他の欧州強豪も使っているシステムです。)

そしてその際に至恩を使いたいのは左インサイドハーフ、私の考える最適解では中島のポジションではないかと思います。そのために中央でのプレーを意識させ、守備のタスクも求めているのでしょう。至恩がこれらの課題をクリアできたら化け物じみたインサイドハーフになれると思うので非常に楽しみです。


目先の勝利か若手の成長か、二極化で考えるのは難しいですね。その中でも選手たちを成長させつつ問題点を解決する方法を考えているでしょうし、実際甲府戦では問題のひとつが解決されていました。アルベルト監督の手腕については近年の監督と比べて良いですし、実際に至恩や新太、新井など去年よりプレーの幅が広がった若手は目立っています。この先のさらなる進化に期待しましょう!

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