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松本戦惨敗の理由と収穫

こんにちは、ニシザワです。
最近考察記事を書くテーマが見つからず、気づけば1ヶ月ぶりの更新となってしまいました、すみません…。

さて今回は39節のアウェイ松本山雅戦、1-3で敗れ内容的にも惨敗といっていいような試合の考察をしていこうと思います。

(*選手は敬称略です。)


○ここから先は消化試合?

さてアルビは今シーズン昇格の可能性が絶たれてしまい降格も無いため、残り試合の結果が特に影響を及ぼさない状況になっています。こうなるとモチベーションを維持するのが難しかったりすると思いますが、そんな中サポーターからよく聞く声として、
「消化試合じゃねえんだよ!」
「最後までやりきれよ!」
「今やらなきゃ来年も無理だぞ!」
などがありますが、この手の精神論的な言葉はリアリストの私としてはあまり好きではありません。

あえて言わせてもらいますが、残り試合は間違いなく「消化試合」です。ただこの言い方だと勝敗や内容はどうでもいいと思われそうなので少し訂正しましょう。ここから先の試合は「2021シーズンの0節」です。来季に向けたプレシーズンだと考えましょう。私の意見は来季の戦略や補強ポイントを探るものとして試合を使い、内容に狙いが見えれば勝敗は二の次でいいと思っています。残りの試合数で無理をして怪我を負うことなく、アルベルト体制2年目の地盤を作れれば良しです。

ただこれも私の個人的意見なので賛同してもらう必要はありません。どんな状況下でも全ての試合で全力を出し結果を求める、そう願うサポーターも理解はできますし、アルビにおいてはこちらが多数だと思います。ですので、これから書いていく考察は私の見解、残り試合を「2021プレシーズン」として捉えているということだけ理解していただければ幸いです。


○3-4-2-1の採用

この試合、アルベルト監督は3-4-2-1のシステムを採用していました。今シーズンこれまで4-2-3-1、4-4-2、流れの中から4-1-2-3などいくつかのシステムを使っていましたが、スタートから意図して3バックで臨んだのは初めてでした。選手の配置は以下の通りです。(田上と史哉は前半飲水タイム後から左右交代)

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さて特筆すべきは右WBに使われた矢村です。このWBというポジション、3-4-2-1システムにおいては非常に重要な役割を果たすのですが、今回の矢村はどうだったのか。まずはこのシステムの活かし方から考えていきましょう。


○WBの活かし方と失敗

以前の記事でも何回か書いていますが、相手の陣形を崩すときは「5レーン」を意識することが重要です。ただしこの「5レーン」、5バックを相手にするときには「6レーン」として考えないとスペース活用が全くできなくなるのです。今回のアルビは3-4-2-1でしたが、対する松本は3-3-2-2、奇しくも両チームとも守備時は5バックになるため、いかに崩すかがポイントになっていました。

ではアルビは相手の5バックをうまく崩せていたのか。結論からいうとNOですが、その原因はWBにあります。
5バックを崩す場合、まず大外のWBを外に引き出し幅を開けることが必要です。そうしてできたスペースを使い、6レーンのうち中央の4レーンを突いていくというのがベーシックなやり方のひとつです。ただ今回のアルビはこの幅がうまく取れていませんでした。前半は右WBの矢村がポジショニングに戸惑う場面が多く、効果的な位置どりになっていませんでした。後半から入った荻原、大本の2人は幅自体は取っているもののポジショニングが低いため、相手のWBを釣り出す以前に相手の中盤に対応されていました。そのため外からの攻撃に可能性がなく、1トップ2シャドー頼みの中央偏重の攻撃になりました。これは中央を固め5-3-2で守る松本に対しては最悪の状況でした。

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つまり今回の敗因の一番の理由としては、WBの機能不全が挙げられます。この問題はアルベルト監督のプランニングが不足していたのか、単にWBの能力不足だったのかは不明ですが、現状のスカッドにおいてWBに適正を持ち効果的に使える選手はいないと断言していいと思います。

そして、松本の攻撃は上記のことを徹底しアルビのWBを釣り出し、中央の4レーンを突く、CBが引っ張り出される、ギャップが広がる、といった具合に見事なまでにアルビの5バックを破壊していました。


○敗戦から得た収穫

このようにズタボロにやられた松本戦ですが、マイナスな面は多かったものの、プラスな面もあったと思います。それは3-4-2-1の「2-1」、1トップ2シャドーの関係性です。
1トップに入った選手が鄭大世のようにフィジカルが強く収められる選手の場合、2シャドーのように近くにいる選手が2人いることで、「レイオフ(後ろ向きにボールを受けた選手が後ろから来る味方の選手が前向きでボールを受けられるようにパスすること)」が使いやすくなりますし、至恩や中島といった狭いスペースでも輝くテクニックがあり、周りとの連携で崩すタイプにとっては新たな可能性を感じました。

また、個人的にはアルベルト監督の狙いとして現状の戦力やシステムに満足せず、オプションを増やしていくという意図が感じられたことに満足しています。現有戦力ではWB不足により機能しなかった今回のシステムですが、的確な補強ができれば今後も十分に試す価値があると思います。


○終わりに

今回の考察で松本戦に敗れた原因のひとつが理解してもらえたと思います。確かに結果だけ見れば酷いものでしたが、監督やチームが既に来シーズンを見据えていることは感じられました。シーズンを戦い抜くうえで、いくつかのシステムを使い分けることはスカウティングが発達した現代サッカーにおいてマストです。また、この時期の試合において体力的負担がかかっていること、無理を効かせるプレーに対して無意識的に制限がかかっていることもあるでしょう。もちろん結果は欲しいですし、私もアルビの勝利を見たいとは思います。それでもチームが発展途上であり、新たな可能性を探る中でその過程にNOを突きつけるのは短絡的だといえます。

今後も来シーズンに向け新たなシステムを試す可能性はありますが、どんなものでも一度目は意図を探り客観的に見てみましょう。二度目以降、改善が見られないとき、一度やった過ちを繰り返しているとき、NOを言うのはそのときです。




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