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オンラインマーダーミステリーの短評(第7回)

今回はオンラインマーダーミステリーと言いつつ、パッケージや店舗公演のマーダーミステリーの短評も含まれています。

加速する闇

コンパクトなのに濃度が高い良作です。犯人探し、個人目標、没入感とどれもバランスが取れていて、少ない情報量の中でうまくまとめられています。
初心者でもベテランでも楽しめるでしょう。

あえていえば濃厚な作品だけに解説を充実させてほしかったところです。特にゲームの根幹にかかる複雑な部分をわかりやすく理解できる資料があれば、感想戦がもっと捗ることでしょう。

RED LINE

初心者も楽しめるGMレスのパッケージ作品のオススメです。
劇団が出自のノーミーツが制作しただけあって登場人物のシナリオが秀逸で、押しつけがましくなく、プレイヤーが戸惑うほど自由すぎもせずとちょうどよいバランスです。
デザインのスタイリッシュさに目がいきがちですが、それだけではなくGMレスでスムーズにプレイするユーザー体験が追及されている真のGMレス作品です。すべての作品が見習うべきでしょう。

一方でベテラン勢には物足りないのと、シンプル化によって一部のゲームバランスが犠牲になっています。

ANONYMOUS

プレイヤーが自分自身としてもプレイできる作品で、犯人探しの難易度、適度な没入感と初心者にも入りやすい良作です。
犯人探しの推理が重視されていて、意外性や情動的な物語、奇をてらったギミックがあるわけではないものの、気負うことなくプレイできます。

箱庭の観測者様へ 弐

前作を踏襲しつつ、世界観や思索に深みを増しています。
単体でもプレイ可能ですが前作のプレイ推奨で、前作が気に入った人はマストプレイな作品です。

マーダーミステリーはナラティブでの没入感を重視していますが、新規IPでは15分程度の説明で世界観や登場人物を知り尽くすことができないという弱点を抱えています。
本作は前作と同じ世界観を踏襲することで弱点を克服し、より深い没入感を実現しています。
ただ非常に思索的であり、推理を楽しみたい人には向いていません。

マーダーミステリーゲーム

デスゲームから始まるマーダーミステリー。一風変わった犯人探しが楽しる佳作です。
王道ではなくてほかと違う楽しみ方ができる点で、ある程度マーダーミステリーに慣れた人の方が刺激は強いでしょう。
ココフォリアの演出も充実しています。

おにさがし

プレイヤーに体験させたいことは明確かつウケがよさそうで、それが実現していれば良作になる可能性を秘めています。ただ導線が細いせいできっちり届けられておらず、ちょっとした工夫で改善できそうなだけにもったいない良作になり損ねた佳作です。
キャラクターのイラストや盤面、カードなどのコンポーネントも非常にクオリティが高いです。

ただキャラクターシートの文章量は非常に多く、プレイヤーとGM泣かせです。
導線の問題が解決してもこの点はプレイする上でのネックです。

アリスインワンダーランド

面白いストーリーでエスカレーションもしっかりしている佳作です。
各登場人物に男女それぞれの素敵な立ち絵があったり、GMガイドが充実していたりと丁寧な作品です。

作者の意図するところとキャラクターの目標が必ずしも合致しておらず、ある種の引力が働かないと意図通りの展開にならない危険性を秘めています。
余談ですが、終わってみると某人気アニメの登場人物の心情はこうだったのかという妙な納得感を得られます。

ラストツアー

個性豊かな男性アイドルグループのメンバーとして犯人探しを行うというのはほかの作品にみられない体験で、わちゃわちゃ感が楽しめます。
一方でミステリーという観点ではフェアさに欠ける面が多々あり、マーダーミステリーという形式を通して物語体験を楽しむ作品としてみるべきでしょう。推理や事件にまつわる絡まった糸を、ゲーム全体を通して徐々に解き明かしていく作品ではありません。

ランダム性を持ったゲームシステムが、推理や目的達成のための進行の妨げにしかなっていません。なぜそのシステムが必要なのか、ゲームデザインについては再考の余地があります。
またゲーム上で非常に重要なポイントが、場合によって絶対に進められない作りになっています。たとえば脱出ゲームがいかにプレイヤーフレンドリーで丁寧に作られているかを見習うべきでしょう。

誰も知らない同窓会

スタンダードに見えてそうではなく、数多くの作品をプレイしてきた人のマーダーミステリースキルが試される作品です。
強くおススメも敬遠すべきでもなく、いくつも作品をプレイする中にこの作品があっても良いでしょう。

薄暮の咲い聲

作品の雰囲気は良いのですが、犯人探しというゲーム性にかかわるバランスが良くありません。バランスが悪いとプレイヤーが苦しい思いをすることになります。
また没入感に関しても一般には受けが悪く、満足度が下がる可能性を多分に秘めています。

没入感が下がるのはプレイヤーが思い浮かべるキャラクターの行動や心情とゲーム内で描かれる行動や心情が乖離するからです。
作者のエゴを貫き通すのも1つの選択ですが、満足度を上げるためには作者といえど自由に振る舞えるわけではありません。望まない行動を取らされることで不満がたまる作品です。

ゲームデス

牢屋に入ってデスゲームをやるという体験自体は非常に楽しいです。しかし全体としてみると駄作です。
マーダーミステリーを謳っていながら脱出ゲーム要素が強いのですが、どっちつかずでとっ散らかっています。
そのせいでどちらのジャンルから見ても中途半端な出来で、マーダーミステリーとは言えません。脱出ゲームとしても平均以下です。

また要素を詰め込みすぎたことで1つ1つの要素の扱いが雑になり、質が担保されていません。
寿司と天ぷらとうなぎが美味しいからといって、1万円で3つとも同時に食べようとするようなものです。

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