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マーダーミステリーの短評(第8回)
ウェンディ、大人になって
マーダーミステリーという枠に収まりきらない、パッケージのGMレス作品の傑作です。
文学や映画、マンガなどと同じくゲームには人生に影響を及ぼす力があり、特に没入感が高いマーダーミステリーは潜在的な影響力を秘めています。その単なる娯楽にとどまらない可能性を感じさせる作品でした。
破壊されたアンドロイドのAIが犯人探しを始めるというオープニングだけでもキャッチーですが、キャラクター造詣、ゲームの盛り上がりも緻密に組み立てられています。
GMレス作品としても指示に従えばスムーズに進行できます。
一方で正統派なマーダーミステリーではない要素があるので、本格的な推理を期待すると肩透かしを食らいます。
また2~3回はマーダーミステリー作品を経験した方がより楽しめるでしょう。
ピアノソナタ解放
非常にバランスの取れた良作です。
キャラクターの造詣、推理の導線、物語のエスカレーションとどれをとっても高品質で、物語の最後までとても丁寧に作られています。
奇をてらったところや革新性はありませんが、逆にいえばとてもオーソドックスで万人が楽しむことができます。
GM向けガイドやココフォリアの盤面に至るまで作りこまれていて、下手な店舗作品よりもハイレベルです。
オンラインのマーダーミステリー作品の中で間違いなく五指に入ります。
君のいないリライト
マーダーミステリーをまったくプレイしたことがない、ルールもよくわからないという方でもGMレスで楽しめる作品です。
マンガによる導入というのはわかりやすく、テキストでは情報が足りず、読解するのが難しいという従来作品の弱点が克服されています。
ストーリーは叙情的で初心者にとってはやりごたえがあります。
マーダーミステリー経験者にとっては物足りないかもしれませんが、物語自体はよくできているので、初心者向けだとわかってプレイすれば楽しめるでしょう。
スマートフォンを使った証拠品システムは冗長さがあるものの、証拠品をいつでも確認できるというオンラインマーダーミステリーの良さが取り入れられています。
キャンプ場の殺人鬼
マーダーミステリー経験者こそ楽しめる作品です。マーダーミステリーというジャンルのゲームとしての懐の広さを感じさせてくれつつ、ジャンルの欠点克服に挑んだ作品でもあります。
友人同士で遊んだ方がよいでしょう。
名探偵みなを集めて"さて"と言い
マーダーミステリーや推理小説のパロディになっている作品で、マーダーミステリーファンの気心が知れた仲間同士でプレイすると盛り上がる作品です。
一方で初心者やよく知らない人同士でプレイしても作品の魅力を堪能できないどころか、不満を覚えてしまうかもしれません。
ペダンチックなところも含めて推理モノ好きな人向けです。
ぼくから■■へ、さよならを
構成が美しい作品で高く評価されるのも納得です。
同じ題材でも調理の仕方でうまくもまずくもなりますが、この作品はコンパクトな中でうまく仕上げられています。
出来の良くない作品は終わった後に消化不良なモヤモヤが残りますが、本作は読後感が鮮やかです。
マーダーミステリーのプレイ経験が多い人は傑作とまでは評されないかもしれませんが、良作であることは間違いありません。
加賀っ奏
マーダーミステリー初心者もすぐにプレイできるライトな作品です。
それだけにベテランプレイヤーは物足りないと感じるところもありますが、殺伐とせずに安心してプレイできる作風です。
題材も現代日本の家族の話なのですんなり受け入れられます。
箱庭の住人
クオリティが上がり続けているいま新作としてリリースするには凡作です。
キャラクター間の満足度の隔たり、いま一つな関係性や犯人導線と、マーダーミステリー黎明期の作品であれば許容できましたが、2021年冬の新作としては凡庸です。
プレイの満足感にもつながることですが、ナラティブやキャラクターの目標をもっと再考して練りこむ必要があります。
イノチゴイ
コンセプトは非常に面白いのですが、議論を前進させるシステムが足りておらず、議論が停滞しかねません。
またキャラクターシートの描写不足でプレイヤーとキャラクターの認識の差が生じ、誤った方向に進んでしまう可能性があります。
プレイヤーが情報を得られるのはキャラクターシートやカードのテキスト描写のみです。キャラクターが得た情報をすべて言語化することはできませんが、少なくとも推理に関わるであろうことは情報に含まれていないと、正しい推理ができずに満足度は下がってしまいます。
世界にxxされた人の話
コンセプトは伝わってくるもののゲーム全体の作りこみはテストプレイレベルです。
少なくとも進行用ガイドや配布資料類は時間をかけて丁寧に作ればクオリティが上げられるもので、それをやっていない時点でいい加減さが見えてしまいます。
お金を払ってもらう重みを考え直すべきです。
AV撮影してたら監督が殺されたんですけど
一見してバカゲーですが、ショートマーダーミステリーとしてもきちんと作られています。
とはいえ題材が題材ですし性に対して直截的な表現も出てくるので、深夜テンションで気心の知れた人たちでプレイする作品です。
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