見出し画像

ライカンのレビュー :オンラインプレイの可能性

こんな人に特におすすめ:初心者の方、地方在住など対面でプレイが難しい方

作品はオンラインマーダーミステリーで5人プレイ、議論時間も60分未満で、割とお手軽にプレイできるようになっています。
配役によって体験の満足度が変わるであろうこととロールプレイをサポートする仕組みはもう少し欲しかったのですが、プレイヤーのオリジナリティを発揮できる場面や意外な展開もあって十分に楽しめました。

オンラインプレイには「Udonarium」というオンラインでTRPGなどを遊ぶためのブラウザベースのツールと「Discord」というゲーマー御用達のボイスチャットソフトを利用しました。
これらツールの操作に多少の慣れは必要ですが、難しいものではないので少し触ってみればプレイに支障はありませんでした。特に今回は「Udonarium」を初めて触る人向けにチュートリアル用の盤面までGMのテラゾーさんが用意されていて、丁寧な解説と相まって操作をきちんとラーニングした状態でゲームを開始できました。
次回以降に同じツールで別のマーダーミステリーをプレイする場合、チュートリアルなしですぐに始められそうです。

オンラインマーダーミステリーは今回の「ライカン」が初でしたが、オフラインとほぼ遜色ない体験ができたと感じました。
没入感でいえばもちろん皆が集まった方が高まりますし、顔を合わせての議論の方が話も進みやすいでしょう。一方で(故意ではないにせよ)のぞき見されることなくゆっくりメモを取って推理できる、(人によっては)顔を合わせていない方が気恥ずかしくなくてロールプレイしやすいといったメリット、デメリットが挙げられます。

マーダーミステリーが普及するにあたっての大きなネックは、同じ場所に集まる必要性です。1人も欠けることなく人数を揃えて、同じ場所、時間に集まるという腰の重さがマーダーミステリー人口を増やしていく足かせです。
TRPGや人狼がオンラインでプレイ人口を伸ばしたように、マーダーミステリーを大きくする1つの可能性がオンラインセッションにあるのは間違いないでしょう。

「ライカン」自体は少人数で要素がそれほど入れられない中で、犯人探し以外のプロットもうまく組み込まれていて、起承転結がしっかり組み立てられています。序盤、中盤、終盤でどういった情報をプレイヤーたちが得ていて、どういった話題が出るかというのがしっかり考えられています。
犯人探しとそれ以外の主プロットもうまく組み合わされていて、それが終盤の盛り上がりへとつながっています。うまくかみ合ったときには情動的な体験へと昇華していきます。

ただ一部の仕込みが偶然に頼るところがあり、エモーショナルな展開がうまく発動しない回が生じてしまうことがあります。
またほかのマーダーミステリーでも何度か指摘していますが、自分のミッションの成功・失敗にかかわらず配役によってプレイ体験が大きく変わってしまうという課題は本作にもありました。

プロットはよくできていると感じられたので、こうした点を改善できればオンラインマーダーミステリーのショーケースになりそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?