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ゲームマーケット2022秋のマダミスに関する雑感:ダイバーシティを感じたイベント

まだ初日を終えた時点での執筆になりますが、マダミスにとってゲームマーケット2022秋は豊作のイベントだったと断言できます。
前回ゲームマーケット2022春の新作数が30作品程度、前々回2021秋が45作品程度(受注生産を除くと40作品程度)に対し、2022秋は50作品程度と新作のリリース点数だけでも過去最高を記録しています。
前々回がコロナ後で初めての本格開催で大量に作品がリリースされ、前回は間隔が短くて出品数が減少、今回で再び増加というのはおそらく大きな要因の1つでしょう。

ゲームマーケットではマダミスのトレンドも感じられました。
かつてはパッケージ作品の中心は6人~8人程度でしたが、マーダーミステリーミニシリーズをきっかけにGMレス、4~5人用がパッケージ作品の中心になっています。前回2022春はそれが顕著で大人数用がほぼありませんでした。今回は2割程度が6人以上の大人数向けで8人用の作品も頒布されていましたが、作品点数が最も多いのは変わらずGMレス、4~5人用です。
パッケージ作品のプレイは店舗ではなく友人同士が中心ですから、「全員が未プレイの時に誰がGMをやるのか」問題が付きまといますし、7~8人でメンバーを集めるのが難しいということも考えると、GMレス、4~5人用がスイートスポットになるのは当然でしょう。
店舗作品はGMあり、大人数中心(企業としての採算面もありますが)、パッケージはGMレス、4人中心、オンラインは1人用~大人数までごった煮で、プレイ人数はプレイ形態による特徴が強く出ています。

昨今はストーリープレイングが徐々に増えていましたが、今回のゲームマーケットはさらに顕著になり、1つのサブジャンルを形成しています。
マダミスにはもともと物語体験や没入感の要素があり、エモーショナルなだけに強いフックになります。しかしマダミスの主は犯人探しであり、物語体験はあくまで従です。物語体験を重視すれば犯人探しは不要なので、ストーリープレイングへ必然的に移っていきます。
むしろマーダーという物騒な要素やミステリーという論理的な思考が求められる構成物が無い分、ストーリープレイングこそ体験型エンターテイメントとしての深い感動が得られる可能性を秘めているのではないでしょうか。

また企業作品のクオリティも向上しています。
作品そのものの質という点を見ると、優秀な同人作品は企業作品と遜色ありませんし、実際に店舗で公演されるような作品がいくつもあります。一方で価格面では、企業作品は営利活動ですから人件費や利益を乗せなければいけませんが、同人作品は趣味の活動なので製造原価の元さえ取れればかまわないという価格設定が可能です。質が同じで価格が高いとなると、可処分所得が限られていれば企業作品を選ぶ積極的な理由がないということになります。
そうした中で企業オリジナル作品ではIPコラボ、声優の起用、パッケージやコンポーネントの質の向上といった同人作品との差別化が図られています。
これは前々からあった傾向ですが、今回特に強く感じました。
店舗公演ではプレイする部屋そのものを世界観に合わせて造作したり、作中に登場するアイテムを実際の小道具として用意したりで没入感を高め、ユニークさを出していますが、それと同様のことがパッケージの企業作品でも起きています。
そして店舗や企業作品としてのバリューを出すためには、差別化せざるを得なくなっているとも言えます。

今回のゲームマーケットではマダミス専用の印刷やコンポーネント制作のプランを発表した印刷会社があり、こうしたプランを利用すれば印刷物のクオリティは同人作品であっても担保されます。
またこの数か月でAIによるイラスト生成が急激に進歩しています。いまは権利問題など議論が戦わされている段階ではあるものの、こと同人マダミス制作者にとっては天恵になるはずです。
登場人物やアイテム、背景などのイラストを労少なく用意できるようになります。
将来的には同人作品も質の底上げが起きることでしょう。

ゲームマーケット2022秋は作品数、プレイ人数の幅、ストーリープレイングの拡大とマダミスの多様性が感じられるイベントであり、多様性が生まれるくらいに成長している証でもあります。
そして全体的なクオリティの向上の萌芽を感じたイベントでもありました。

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