カラアゲ

急遽、鹿児島に来ています。

鹿児島県、鹿児島市。
ここは父が生まれ育った町で、
幼いころには夏休みだったり年の暮れだったり、
家族でよく祖父母たちのもとに帰省していました。

鹿児島って場所はね、ご飯が旨いのよ!
……まぁ「俺の地元は飯がマズイ」なんて言う人は
日本ではそうそういないと思いますが、
それでも鹿児島の、特に肉!黒豚!鶏!
最近は「黒牛(くろうし)」なんてブランドもあるんだって。

中でも僕が一番好きだったのが、
ばあちゃんが作った、鳥の手羽先のカラアゲだったんだよね!
(オルタネーターではない)

ばあちゃん、って言ってもその人は、
祖父の姉であって実の祖母ではないのですが、
弟の孫である僕たち兄妹を
たいそう可愛がってくれたのでした。
あんまり可愛がるもんで、
祖母とモメたこともあったみたいだけど、
俺が言うのもなんだけど、そういうとこ、
どこか可愛らしくもあります。

で、カラアゲですよ。カラアゲ。
もう忘れらんないカラアゲ。
まず鹿児島の鶏だからかサイズがデカい!
大人になってから作ろうかと思ったとき、
スーパーの精肉コーナーに立った時点で諦めたもの。
こんなに小さかったら再現できないじゃん!と。

それに、理由がわからんのだけど、
衣が茶色くない。黄色……いや、
あえて思い出補正込みで黄金色と言いましょう。
「簡単お手軽唐揚げの素」とかではない、
戦後間もない頃から引き継がれている
謎の技術があったに違いない。
危険な薬物ではないことを祈るばかりである。

この手羽先をね、小学生だった僕と妹が、
手づかみでこう、ガッといって、喰らいつくわけです。
旨い!パリッとした衣!鹿児島の鶏!そして完璧な味付け!
……が、ほおばることはできないんですね。
手羽先ですから骨が邪魔で邪魔で(笑)

「手羽の骨なんてなければいいのに!」と思いつつも、
4つ5つと食べていくうちに、
・最初にこの部分を食べると、この骨が外せるな
・そうすると、このカラアゲ全体で一番の肉塊部分をガブリといける!
・で、残った部分のここにもしっかり味があるのでしゃぶっちゃう
みたいにパターンを掴めてくるんですよ。
ハタからみてたらすんげえ真剣に食ってただろうな(笑)

僕たち兄妹があんまりたくさん食うもんで、
次に鹿児島に来るときはカラアゲ増量してくれてて、
山盛り作ってくれてましたね。
でも食べちゃう。全部食べちゃう。
鹿児島に帰れなかったときは、冷凍にしてくれて送ってくれて、
家族みんなで食べてた。
冷凍だとなんだかサイズが小さくなったように感じたんだけど、
今思えば、だんだんと自分の手が
大きくなってたんだろうなぁ。

そうしている間に僕も中学生に上がり、
部活だなんだで鹿児島には帰らなくなっていった。
ばあちゃんの体調もあってか、冷凍で送る機会も減ってた。
母に「あのカラアゲを再現してほしい」って
頼んだこともあったけど、
料理がうまい母が割と即答気味に「いや、あれは無理」
って言われて残念だったけど……
でもなぜだかそう言われたことが、なんだろう、
誇らしい……に似た気持ちもあった。
だよな、そりゃそうだよな!みたいなね(笑)

僕が学生生活を終え、足を伸ばせる世界が広くなると、
居酒屋やなんやらで唐揚げを食べることが増えた。
名古屋に友達と旅行に行った時には
名物の手羽先を、ウマいねこりゃ、とか言いながらたらふく食べた。
それでも、
ばあちゃんのカラアゲには、
やっぱり敵わなかった。

時は流れて今日、鹿児島に来て、
ばあちゃんの親戚の人といろいろ話をしたんだけど、
そしたらやっぱり、
「あのカラアゲは最高だった」って。
なんか、ジンときた(笑)
あんたもあの味を知っているのか!って。
その人もやっぱり冷凍してもらって、
お酒のツマミにして食べてたって。
作り方を聞いてもマネできなかったって。

僕も作り方と材料を聞いたけど……
やっぱり、再現できないだろうなぁ。
でもいいんだ。
再現できなくて。
いいんだ。いいんだよ。

……いや、やっぱり食べたいけどね!

おばあちゃん、カラアゲ食べたいよ!
悪いんだけど、いつか食べに行くから、
そっちで作って待っててくれないかな!

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