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研発投稿⑨『見方・考え方を整理しよう』

京都教育大学附属桃山小学校 研究発表会

令和6年2月22日(木)

[https://pay.f-regi.com/fc/kyokyo/council/momosho]

研発の単元に入るには少し早いということもあり、いろいろな授業をやってみました。
投げ込みの教材を使って、単元ではなく単発の授業として行いました。
「きまり発見」の授業なので、全員がイキイキと授業に参加する様子を見てもらえます。参観日やどなたかが教室に来る場面で使ってきた教材でした。
その単発の授業をいくつか組み合わせて、「見方・考え方」を実感し、表現していくような時間になればと行った実践です。

「①ひいて、ひいて、ひいて」
11枚のカードを提示しました。
「緑のカードをとると、ある数が書かれています。一番大きい数を当てましょう」という課題です。何も説明せず、グループでカードを選んでもらいました。
・左にある数字が多くも少なくもないカードが大きそう
・左のカードと右のカードを足したら100になるようになっている
説明がなくても、自分できまりを予想して、適当に選ばない姿勢が素敵です。
しかし、「きまりがあるとは思うんだけど、これだけじゃわからないよ」と言い始めます。
そこで、1つのカードを開いて見せました。その数値を頼りに、より具体的にきまりを予想して、グループでカードを選びました。
どのグループからも選ばれていないカードから開いていきました。
「わかった!」と、きまりを見つけた声が広がっていきます。
ここで「選び直したい!」という思いを叶えることにしました。「どうしてこのカードにしたいの?」と聞くと、きまりについて少しずつ表現され、また一人また一人と理解が全体に浸透していきます。
ここまで来ると、自分の選んだカードがどうというよりも、自分の考えているきまりに沿っているかどうかに反応するようになっていました。
きまりに気づき、表現し、そのきまりを使って、別の場合を想像する。この思考の深まりについて全体と話をし、振り返りを書きました。



「②はんぶんパズル」
次は『分数』の発展教材です。前回の校内公開授業の単元です。気合いが入ります。
この教材については、今年度のある研発(広島の岩本先生の教材)で公開する授業の教材を試しに使わせてもらった授業です(その研発は、先日、終わりました)。
「はんぶんパズル」と書いてある封筒からパズルをゆっくり引き出すと、「あー…えっ!できるできる!」とどんな「2分の1パズル」ができるか追求し始めました。面白い形がたくさんできました。
さらに、もう一つの封筒を見せました。そこには「□パズル」と書いてあります。「3分の1」「4分の1」「12分の1」「長方形」「三角形」と、色々なパズルが作れそうだと考えました。しかし、その封筒の中から出てきたパズルは、さっきのパズルと同じ形でした。
「3分の1ができそう」と意気込んでいましたが、「1マス多い…」と言い始めました。
「全部で16マスあるからこれは、15マスを5マスずつ3つに分けたいのに」と。
「どんな形だったらできるの?」と聞くと、12マスだったらできるというので、ハサミで切って12マスのパズルに変身させました。
それでも、「テープで貼り直せばできるけど…」「マスでバラバラにせず、このまま切って3分の1にしたい」と、意欲的に取り組みました。
既有知識を使ってイレギュラーを考える授業として教材を使わせていただきました。「何をしたかったか」「どうしてそうしようと思ったか」「その結果、どんなことがわかったか」と、自分の学びを振り返ることについて話、自分のサイクルについて表現する時間としました。



「③サンスウジマ(15分授業)」
本校では、学校図書の教科書を採用しています。
算数の学習では、知識が「つながる」「つかえる」ということを大事にしてきました。「つながり」を意識するときに、教科書に載っている「1年生でできるようになったこと」という『算数の島』のイラストを使って考えてきました。
しかし、2年生の『算数の島』は、2年生の教科書に載っていません。なので、2年生の『算数の島』を作るように提案しました。
それぞれに考える「見方」と「考え方」が混ざっている印象がありました。なので、今回は教科書にある「考え方モンスター」を改めて提示しました。「モンスター」と「メガネ」で整理し直すとわかりやすいかもしれないと考えました。
それぞれの単元は、どの島なのか?「考え方モンスター」は、どこで使ってきたか?「さんすうメガネ」には、どんなものがあったか?これまでの経験と学びを振り返りながら「サンスウジマ」としてまとめていきました。



「④サンスウジマ(続き)」
前日の「ジャーナル」に、どの「モンスター」が、どの単元でよく使われているのかについて書いた人がいました。この話題を、全体に投げかけました。
すると、「どのモンスターを使うかは、人によるんじゃない?」という意見がありました。
「考え方モンスター」とは何か?「さんメ(さんすうメガネ)」との違いは何か?について、体験しながら整理していきました。
まず、1から9の中から好きな数を2つ決めました。大きい数字を十の位、小さい数字を一の位とする2桁の数を作りました。
次に、その2桁の数を引かれる数、その2桁の数の十の位と一の位を反対にした2桁の数を引く数とした引き算の答えを出しました(例:81ー18=63)
一人指名して、答えを聞くと、27でした。「おれも!」と声が上がったので、確認すると、7人も同じ答えになっていました。「すごい偶然だね!」というと、「おかしい!」「たまたまじゃない!」「何かきまりがありそう!」と思考が加速していきます。
他にも聞くと、「18」が5人、「9」が5人と、どれもたくさん同じ答えになっています。偶然ではないようです。でも、同じ数字を選んでいるだけかもしれません。確認してみると、色々な式でそうなっている場合もあるようです。子ども達の好奇心が高まっていきました。全ての答えを確認し、ゆっくりと読み上げました。
「18」「9」「36」「54」「36」「63」「45」「72」…「あぁ!」「えっ?」「なんで!?」「すごい!」「わかった!」色々な声が上がります。
どれも九九の9の段の答えであることに気づきます。
「□×9になっているけど、どんな時にどんな数が□にはいるんだろう?」というつぶやきが聞こえます。答えが9になる式から順に確認していくと、「あぁ!」「すごい!」と声が上がっていきます。
「これが”キマリン”だよ!」と「考え方モンスター」を指さして興奮しています。しかし、その興奮とは反対に、「どうして?」「何がすごいの?」と不安そうにしている人もいました。まだ気づいていない人が「あっ!」と自分で発見できるようにヒントを出すことを提案しました。たくさんのヒントが出ました。良いヒントで、自分でわかった人がどんどん増えていきました。
授業の最後には、「これは引き算なのに、いつの間にかかけ算として見ているよね。これがかけ算の見方をするメガネなんだね」と見方と考え方の違いを整理しました。
授業後に、「これって2桁じゃなくてもできるの?」や「どうして9の段になるか、考えてみたい」と、この教材を使ってさらに深く考えようとしている人がいました。



「⑤さんすうメガネ」
「振り返り」を読んでいると、「さんすうメガネと考え方モンスターの違いがわからない」ということが書かれていました。さらに体験しながら、わかったことをまとめていきました。
テレビに、あるお菓子の箱をうつしました(埼玉の伊垣先生に教えていただいた教材)。
「おいしそう!」「チョコが入っているよ」など、気づいたことを発表します。
気づいたことから算数を探してみると、
・箱の形が六角形 ・立方体 ・何個入っているのかな? ・小さいな ・六角柱
・五角形のものもある
と、形や数、量に注目して見ていました。
その他の見方もありました。
「誰がどうやって作っているのかな?」「CMは何のためにしているのかな?」など、社会科としての見方をしている人もいました。
「コアラの物語があるのかな?」「誰が主人公何だろう?」「女の子がいるみたい」と、国語として見ている人もいます。
はちまきに注目して、桃太郎を想起した人もいました。
どこに注目するかによって、その見方が変わっていくことを体験してもらいました。「さんすうメガネ」で見るということは、そこに算数が見えるということだと感じていました。教室の中にも、たくさんの算数がありました。



今、それぞれの領域をつなげて考えることに関心があり、子どもが領域について語ることを意識しながら授業作りを進めてきました。研発の授業の前に、これまでやってきたことを図にして整理するということを行いました。
ただ振り返るのではなく、単発の授業を具体として、「領域」「考え方」「見方」について気づき、語り、図にまとめました。
研発では、このような1年間の学びの積み重ねが発揮されるといいなと思っています。
既有知識や経験をもとにして、自分の学びを作り上げたり、得られた知識を生活や他の学びにつなげたりする時に、エージェンシーが発揮されるのではないかと思っています

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