味わい深く愛おしい映画『犬ヶ島』
大好きなウェス・アンダーソン監督作品、犬ヶ島を見た。
前から見たい見たいと思いながらも機を逃していたのだけれど、友人からプライムビデオで公開が始まったと聞き、大歓喜しながら見た。友人ありがとう……。
ウェス・アンダーソン作品は、『ムーンライズキングダム』『ファンタスティックMr.FOX』『ダージリン急行』が特に好きなのだけど
残念ながら、2022年公開の『フレンチディスパッチ』は私には難解で、好みに合わなかった。(好きな方には申し訳ない。批判する意図はありません)
だから犬ヶ島も合わなかったら悲しいな……と思いながら恐る恐る再生し、開始10分くらいで「私が好きだった頃のウェス・アンダーソンだ!!!」と思った。正直めちゃくちゃ嬉しい。しかも日本が舞台の作品を撮ってくれるなんて。
最初の神社のシーンでもう「カッコイイ~~!」と思ったし、日本をディスる意図のへんてこジャパンじゃなくて、海外の方から見た日本文化の美しさカッコ良さを描いてくれているように思った。
物語は「犬の伝染病が蔓延し、すべての犬を『ゴミ島』と呼ばれる離島送りにすることが決定した日本」が舞台。
大事な愛犬を探しに、アタリという少年が島へと渡る。
お子さんでも楽しめそうな、シンプルな冒険と勧善懲悪モノで
(※一部、小さなお子さんが見るにはショッキングなシーンもあると思います)
わかりやすくて楽しい。
でもいわゆる王道とは全く異なった、風変わりな作品だ。
監督ファンからすると、すごく「ウェス・アンダーソン節」が効いている。可愛いのに少し毒のある雰囲気。画面の配置や配色への徹底したこだわり。
ちょっとコミカルでヘンテコな独特のリズム感。会話のテンポや音楽が、シリアスなシーンでも少し調子外れの愉快さを醸し出している。
話を感動的に大きく見せようとはせず、むしろいつもどこか、客観的にカメラを引いて登場人物たちを映し続けているような。
ぐっと感情移入はしにくいし、人を選ぶ部分でもあると思う。美術展で作品をゆっくり眺めている時に感じるような、独特の「間」を感じる。私と作品との間の距離。
その空いた距離の中で、自分の感傷を味わえる。そんな感覚が好きだ。
そしてストップモーションアニメによって作られた本作は、なんというか、良い意味でどこかチープだ。
劣っているとか作りが荒いということではなく、「手作りの作品に感じる、大量生産品にはない良さ」の味わいがある。
誤解がないように書くと、クオリティは相当に高い。犬の毛並みの揺れや筋肉の動きがとてもリアルで驚くし、視線の動きや息遣いに命を感じる。
でも美しく均衡の取れたCGアニメとはまた違う、歪みやチープさがとても愛おしい。
まあCGだって人の手によって作られているわけで、CGと比べるのもナンセンスかもしれないんだけどさ。とにかく好きだってこと。説明がめんどくさくなってきた。
アタリ少年と犬たちとの絆がとても良かったな。万人にオススメできる作品。
こちらが好きだったら、ぜひ『ファンタスティックMR.FOX』も見てほしい。
ウェス監督のストップモーションアニメ作品で、怪盗イケメン狐が主人公です。よろしくお願いします。
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