病床ひっ迫と医療崩壊~ベッドはなぜ増えない?
新型コロナウイルスにより私たちの生活が一変して、約1年が経ちます。
ここ数カ月は、医療崩壊や病床のひっ迫がどのメディアでも取り上げられていましたね。「病床を増やせばいい」「足りないはずはない」などテレビコメンテーターが声高に叫ぶシーンも目につきますが・・・。
では、ほんとうにベッドは足りないのでしょうか?
あるいは、簡単に増やせないのでしょうか?
医療政策と病床(ベッド)の関係
1.社会保障政策と病床数
日本は世界でもトップクラスの医療サービスを受けることができる体制なのですが、それを支えているのがいわゆる「国民皆保険制度」です。
これは簡単に言うと、「病院(医療機関)が儲かると、国の支出が増える」システムなのです。そのため、国は医療政策(診療報酬改定など)でなんとかこの支出をおさえようとしているわけです。
もちろん、制度の維持を考えれば重要事項なのですが、それにより、うまく病床稼働率をコントロールできない病院は儲からない→医師・看護師の確保ができない→経営縮小→患者が減る→減収→人員確保困難→・・・という悪循環が生まれるようになりました。
結果、病床を減らす医療機関が(特に地方で)増えました。
2.「医療計画」と病床数
じつは、ベッドを設置するには都道府県知事の「許可」が必要なのです。
各都道府県は、人口の増減や高齢化の度合いなどの地域の実情に合わせて「医療計画」で病床の総数・種類などを定めてます。
基準病床数を超過している場合、新たに病床を増やすことが簡単にはできないのです。
医療法と病床(ベッド)の関係
みなさんが思い描く病室にはベッドが何台ありますか?
1つ?2つ?4つですか?それとも6つ?
よほどのセレブでない限り1部屋にベッドはいくつかあると思います。
医療法では、「患者1人につき~㎡必要」というルールがあります。つまり、部屋の空いているスペースに臨時だからとベッドをねじ込むわけにはいかないのです。
また、入院患者数に応じた医師・看護師の人数が、病床の種類ごとに細かく設定されているのです。従来女性の多い看護師はライフイベントなどにより離職が多く、また少子化による人材不足は今後も続きます。
さいごに
今回は病床についての一般論ではありますが、病床を増やすというのは決して簡単なことではないのです。人口当たりの病床数を海外と比較するメディアもありますが、患者1人当たりの看護師の数など、トータルで評価する必要があります。
ベッドを増やすには、「人(看護師)ありき」なのです。
コロナのような感染症に関して言えば、看護師ならば誰でもいいというわけにはいきません。「人を守る、命を救う」技術というものは決して一朝一夕では得られないスキルです。
ざっくりになってしまいますが、「病床は簡単には増えない!」ということです。
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