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ちょっと思い出しただけ

※ネタバレは直接しませんが、作品の雰囲気はわかってしまうかもしれません。

尾崎世界観が主題歌の映画。

友人が称賛していたのと、同じようにクリープハイプが主題歌だった『百円の恋』がけっこう好きだったので見るっきゃナイトを決めてきました。

※過去記事はこちら。

ところで、映画館っていつのまにメンズ/レディースデーがなくなったんだ?



予告編はこちら。



「作り」を意識しながら観た映画だった。

最初の入りは非常に静か。さみしいと感じるくらいで。そこから音が増え、動きが増え、言葉が出てくる。

最初のほうは、含みのある言葉を並べて、世界に入れ込ませる。そこから「もっと知りたい」と思う要素をちりばめていく。

そして、目を引く大きな仕掛け(同じ日付を観ていくというもの)が出てくる。

ふむ。

どこで引きを作り、どこを感じてもらう想定か、よく考えながら作ったんだろうな~と思いながら観てた。

決して邪魔はしていないので、きれいだな~とも思いながら。


作中の場面がコロナから前年に戻って以降、作品の持つテーマがなんとなく見えてきた。

この作品は「あったかもしれない豊かさ」に対して、それが感じられた時の時代や空気感を観ていく、振り返っていくことで「いま、うしなってしまったものは何か」考えていく物語かな、と。

1年ずつ戻るたびに、時の流れによる変化を感じて、ドラマにある変化を感じることで、人生をなぞっていける。

恋愛映画、というくくりで観ると当てはまらない気もするけれど、恋愛ドラマって結局はヒューマンドラマなので、人生に恋愛を絡めれば、それはもうみんなの大好物になる。(なっている・・・よね? 完全に入り込んで観た訳じゃないので自信がない)

そして、流れをわかってきて、全体像や人物像が見えてくるとともに、先の時代の雰囲気を知っているぶん、切なくなる。

この瞬間が刹那のものだとわかってしまっているから愛おしく観てしまう。

観終わった後には、時間旅行を終えたような、取り残された自分が戻ってくるような、不思議な感覚になった。

鑑賞後の感覚は人によって全然違うんだろうと思う。

自分は某ミュージカル映画に似た感覚だった気がする。ちょっと、ぼうぜんとしてしまった。

いやー。良い映画だな。と思いました。

残るものもあったし、さっき「刹那」の話もしましたが、瞬間瞬間の美しさはすごかった。

映画にしかできない時間や雰囲気の使い方。印象的なフレーズはいくつも出てきて、自然だったり、いい意味でわざとらしかったりする。

素敵な作品でした。

ちなみに、この時代に映画館で観ることの体験価値もある作品だと思います。

コロナによって、閉鎖的な苦しい時代になった今だからこそ、鑑賞することで感じられるものがあるんじゃないかと思います。(・・・なんかよくある監督コメントみたいだな)

人によって、印象に残るシーンも全然違うんだろうなと思います。

自分は各時代のタクシー車内のかけあいシーンでした。



で、俳優さんの話。

みんな良かったけど、特にやっぱり主演の伊藤沙莉と池松壮亮。

とっても良かった。

予告でも出てるように、この作品はさみしさの部分と明るさの部分が極端だし、それがなんとなくいつ出てくるかも、後半からは予想できてくる。

その予想ができてもなお、感情が感じられたし、観ている時の美しさもあった。

そして、なにより凄いな~と思ったのは「何かあると感じさせていた」こと。

作品のつくり上、未来から過去にさかのぼっていくので、未来の言動について引っかかるところがあれば、過去の何が関係してくるのかが気になってくる。

それを自然な感じで不自然に醸し出す。日本語がとても難しいんだけど「何かあったな?」と嫌味なく思わせてくれる演技。

これはも~すごいな~と思いました。

登場人物の人生の奥行きを感じさせるんですよ。で、それは作中で拾われていく。

作品に関わる人たちはみんな、登場人物の人生について高い解像度を持ちながらやってたんだろうと思いました。




終わってから「ナイトオンザプラネット」を聞くと、ほんとそのまま。びっくりするくらいほとんど歌詞の内容を拾ってました。

これで思ったのは「俺にもこれは真似できるんじゃないか?」ってことでした。

好きな曲を下敷きにして、5000文字くらいで小さな物語を、人のドラマを描く。・・・これなら、俺にもできたりするんじゃないか。

スタートをゼロから考えるのは苦手だとするなら、そのきっかけをもらって、そこから動き出せばいいんじゃないか・・・?


そのうち気まぐれに、映画の所感じゃない記事も書く・・・かもしれません。言うだけタダだし、これを読んでくれる人ならきっとバカにはしないだろう、なんて思ってます。

時代は流れてしまうものだし、待ってはくれないし、
どこかに連れて行ってくれる誰かや何かを待つ人生ってのも、ちょっとさみしいじゃないですか。目的地は自分で決めていいんですよ、自分で。


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