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時をかける少女

映画自体がとても久しぶり。なのでnoteを書くのも久しぶりです。
(「すずめの戸締まり」は公開初日に観て書いていたのだけれど、公開し忘れていました。機を逃した)

今回は作中に出てくる「ナイスの日(7月13日)」に合わせた再上映を観に行きました。
・2~3回見たことはある
・話の大枠は覚えている
・奥華子のタイミングもだいたい覚えている

という状態でかなり久々に観たんですが、この映画、面白いすね。
面白い。

予告編はこちら
(ちなみに、予告編最初の語りは作中に出てこない撮り卸しです)

あ、まず前提として、細田守作品だけど、この作品は好きです。
なのでアンチだと思って身構えないで読んでね!
あと、書く人が好きではないのでSF的な考察(タイムリープ装置がうんぬんとか、回数がうんぬんとか、並行世界がうんぬんとか)はしません!
でも、いつも通りに本作品のネタバレはするのでご用心を!


では凄いと思ったところから。

1.難しい題材を扱っているがシンプル

タイムリープものって作者がこねてやりたいことをやると、観る側を置いてけぼりにしがち。
時系列の整理に慣れた人ならともかく、多くの方々はあの名作アニメ(別作品のネタバレになると嫌だから名前は伏せるよ!)で描かれた内容でも混乱するらしい。

でも、時をかける少女はシンプル。
主人公・真琴以外の描写が全くと言って良いほど無い
しかも、真琴の喜怒哀楽は波が合って面白く、それを追うだけでエンタメだし、作品として成立する。わかる。

そして、見せたい描写のところも非常にシンプル。
終盤、校舎の屋上で真琴が泣くシーンも、最後の河川敷も、背景は動かさず、真琴の動きと仲里依紗の声だけに集中できるようになっている。
もう正直、ここだけで映画の元が取れるくらい迫力がある。

仲里依紗の泣きが無ければここまで名作になっていないと断言できる
それくらいには凄かった。

だってこれらのシーンは、動きもシンプルなので、味わうところが声しかないのだ。
それなのに、観終わった後も余韻として残っているし、夏の青空と対比した真琴の泣きがとても映える。いや、すごい。小細工がない。
道中なんか棒読みだなあ、と思うのは正直あるけれど・・・作中ずっと聞く声なので、むしろこれくらいがちょうどよいのかもしれないと考えると、キャストの妙とも思う。いや、すごいっす。

あと補足するなら、シンプルだけどキャラ立ちがしっかりしている貞本義行さんのキャラデザもありきですよね、すごい。

2.奥華子

挿入歌、主題歌の良さって色々とパターンがありますが、この作品ではマジで不可欠レベルですね。
「変わらないもの」 https://xn--uta-net-833f7ltkhcw724e85ve.com/song/44075/
「ガーネット」 https://www.uta-net.com/song/44074/

これ、どっちも完全に二人の曲じゃねえか! ってなるパターンのやつです。
作中で語られるタイミングの無かった心理描写は、ここです。大秘宝(ワンピース)はここにあります。

特にガーネットが最後に流れることで、いろいろと救われるものがあります。真琴は今後どう生きていくのかが詰まってますね、うん、良い歌詞。
逆にここまでドンピシャでやってしまうとそりゃ、別の曲を歌っても「時かけ」の人ってなっちゃうよね、恐ろしいけれど。

「時をかける少女」を見る時間がない人は、代わりに「ガーネット」を聴いてください。観たことがあるひとなら、これで大半が思い出せると思います。

この作品は特徴的なBGMもあまり無いシンプルな作品であり、だからこそ、映画における曲の影響力が凄いと、改めて思わされました。

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と、以上2つがとても素晴らしいので、映画として素晴らしいのは間違いないですね。さすがの作品です。細田守だけど。

では、ここからは個人的に語りたいところを少し。

1.タイムリープによって失ったもの

タイムリープのメタ的な話については、叔母との会話に凝縮されている。誠がタイムリープすることで、失われる言葉がどうしてもある。
最終的には真琴は、最終的に帰った千昭から告白される未来が得られなかった。それがあるから河川敷での涙にはくるものがある。
まぁその後の「未来で待ってる」という言葉は多分にI Love You.だとは思うけど。

まぁ、にしても、気になったのは2つありまして。

まず①、奥華子の「ガーネット」が流れなければ中々にしんどいラストだなあと思う。この歌詞(と、あと途中での叔母のコメント)で救われることはあるけれど、ひと夏の思い出が相当に真琴の人生を狂わせるのではないか、とちょっと思っちゃうよね。
細田守は平気でこういう呪いのようなことをしたがる・・・

もう1つ②は、あのIFルートでの告白を真琴がOKした未来があったらどうなっていたのか? である。
え、まさかそれでフラっと帰ることはないでしょ? と思うけれど、もし付き合った未来があったとしたら、千昭、いつ帰るの?
いやいやいやいや、むごいよ~それはないよ~
千昭に「未来に残した家族」か「過去で作った恋人」かの2択をさせるの? そんな未来はあんまりだよ~
細田守は平気でこういう呪いのようなことをしたがる・・・

2.叔母の存在について

正直、過去に観たときは、叔母の存在意義が良く分からなかった。
だって、なくてもストーリーは進むし、話はするけれど真琴の行動指針にそこまでかかわらない(気づきをちょっと与えるくらい)
今回観て思ったのは、これは玄人へのサービスだなと。
※原作の「時をかける少女」の登場人物であり同一世界であることによるサービスもあると思いますが、私は未履修なのでわかりません・・・

何か(タイムリープによって得た新たな未来など)を得れば
何か(元の未来では存在しなかった周囲の不幸など)もついてくる
といった世界の理のようなものを示唆しているなあと。
手放しで得られる力や特権みたいなものはないって訳ですね。作中で唯一の教育者的な立ち位置。

でも最後のほうに、真琴に対して「そりゃ報いだろ」みたいな言葉を投げかけるのは非道じゃないか? おいおい! とはちょっと思いますね。
アンタ保護者じゃなかったんかい! 的な。
若者に対してハシゴを外すなよ・・・

ただ、このエッセンスは、以後の細田守作品を観た(といっても、サマーウォーズとおおかみこどもくらいだけど)ところで通ずるものがあると感じる。
きれいに幸せ、きれいにうまくいく鮮やかな未来なんて、そうそう実現できるものではないんだよなぁ・・・でもそれは保護者ポジにやらせるな



という感じで、良い作品だと思うし俺は爽やかで好きだし万人に良い作品だと本心から言えるけれど
今後を含めた細田守の思想のようなものも染み出ているな・・・とも感じたのでした。
(僕はおおかみこどもを観て、これ以上はキツイのではと判断したので、以降の作品は未視聴です)

大事なことなので何度も言うけれど、良い作品だと思うし僕は好きです。泣けるし。

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