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君たちはどう生きるか

※ネタバレします! どんな映画かどうかだけでなく、作品の内容自体にもガンガン言及します!
 まだネタバレを読みたくない方は、いますぐブラウザバック!







さて、警告はしたので・・・・
ここからはどんどん書いていきましょう。





いや~~、これは感想めっちゃ分かれそう。
観た人なら共感してもらえると思うけれど、まぁ、観て全部わかるような内容のものじゃない。

観た、よかった。でも、これなんだったんだ?
となる。
物語というか、作品を分解したり、細かい描画を掬い取って楽しんだりする人向けだった。
でも、やっていることはジブリ映画のエッセンスしかない。そんな映画だったという感想。


え? わからないって?
いやいや、言語化ムズイですよこれは。
なので、全部を言語化することは諦めて、観てからあまり時間がたっていない新鮮な感想を「何がジブリだったのか?」を主軸に語ろうかと。

※予告編はありません!


1.作画がジブリ

背景は美しく、それだけで一枚絵として完成している絵を下敷きにして、セル画の雰囲気を残した生き物やモノが浮き上がって動いていくような、今はもうかなり珍しいアニメ手法を想起させる映像美でしたね。
もう、これを楽しめただけでも良い。極論ですけど。
こんなのもう、新興勢力で出てくるアニメスタジオは絶対真似できない。コストがおかしいし、こだわりを持って背景を描けるスタッフがいないと成り立たない。
これはジブリしかできない。
新作でもきちんとジブリの作画をしているのは流石ジブリ様。

昨今のアニメも描画はきれいだし動きも(良いものは)きっちり違和感なく動くけれど、ボケのある風景画のような美しさのある背景はなかなかない。

それがあって、絵の上のキャラクターが動くし、それを観て「ああ、ジブリだな」と見ている人が感じられるのはブランド。素晴らしいですね。

今後はキャラクターの話にいくけれど、やっぱジブリのババアはすごいよ。
年を喰った分の老獪さというか、綺麗なだけでないし・・・今回だと丁稚奉公なのもあるが、恭しい感じがもう、すごい。むせかえるようなレベルで濃いババアだった。あれも、ジブリじゃないとあんなにやらないだろう。
悪意でもないし、綺麗でもないし・・・すごいね、あれ(言葉にできない)。

話の中核を担うアオサギもとてもよい。醸し出す不気味さがなんともいえない。最初の美しさ、夢で邂逅した後の怪しさ、冒険の道中での人間味。
どれをとっても魅力的なキャラクターでしたね。主人公の眞人があまりにも落ち着いているので、彼の感情がストーリーの起伏を生んでいたかと思います。

2.世界観がジブリ

現実世界(=昭和)は中々綺麗ではない。そんな悪意や脅威のない世界を作り主になることもできてが、それを断って元の世界に戻る。
でも、確かな経験と友人を得て、また元の世界に戻る。なにか大きく変わったわけではないが、その世界で得たものは主人公(眞人)の今後の人生を支えていくだろう・・・

まあちょっとだけ語りましたが、味気なくストーリーをまとめるとこんな感じですよね。

これは、かなり千と千尋に似通ったテーマでないかな、と思います。
訳のわからないまま異世界に放り出され、そこで大人(キリコ)に仕事を求められる。それに応えることできっかけを得て、次のステップへ進む・・・

こう振り返っても、いきなり湯婆婆のもとで働き、そこで居場所を見つけていく構図と似ているな、と思いました。
あというと、新海誠がジブリを目指して作った「星を追う子ども」は、かな~り近いですね。やることやってもとに戻って成長している、という点では「すずめの戸締まり」もそうですね。
いわゆる「ヒーローズジャーニー」ってやつです。

見た目や時代が違っても、ジブリの主題はやはりヒーローズジャーニーに行きつくのだと実感しましたね。

その中でちょっと面白かったのは「悪意」の存在。
最初に頭ぶつけて学校をさぼり、自分は嘘をついていないとはいえ、勝手に父親が勘違いすることを踏まえた上での行動で面白かった。それが最後の大伯父との会話につながってくるのも良かった。
道中の要素や流れをうまく楽しめなかった人にもわかる締めでしたね。
「盛り盛りの要素+誰が見てもわかるストーリーのポイント」という構成はやっぱり大事。

(こういう作品を観るたび日本神話の造詣を深くしたいと思うところ・・・)

3.声がジブリ

いい意味で朴訥って感じですね。これもジブリ。
気合の入ったアニメらしい声優は使わない感じ。うんうん、ジブリ。って感じです。
今回はキムタクがそこまでキムタク感なかったので、あいみょんがその枠だった感じでした。「ヒミの声、声優どころか演技慣れしてないな、誰だろう?」と思いながら見てはいました。
歌わせないなんて、なんてぜいたくな使い方。

これもきちんといつものジブリって感じでした。


すごかったところ、思ったところはこんな感じです。
以下は、自分で思ったけれど掴み切れなかったところを述べようかと。
わかる方はほくそえんでいただき、そうでない方は一緒に悩みましょう。

1.兄と弟

冒頭の火事のシーンでちょっとだけ出てきた兄がどこへいったのかうまくつかめず・・・
また、最後に出てきた弟の正体の核心も得られず・・・あの世界で出会った誰かなのか、あのワラワラのどれか1つなのか・・・そのあたりがつかめなかった。

2.インコとペリカン

あれが何を暗喩しているのか・・・個人的にはですが
ペリカンもインコも、現世に存在する罪を象徴しているんだろうな、というのが自分の解釈です。
うるさいし人間の肉を食べるインコ と 小さきものを食べないと生きられないペリカン
これらがはびこる世界にしてしまった責任を、大伯父も感じていたんでしょうなあ。

3.水と火

誘われて入った森の中にあった、母の遺体を模した水。あれはアオサギが作った口ぶりだったが、そのあとに特殊な技能みたいに使うことがなかったなぁと。
あの行為自体、かなりの悪意があると思ったので結構びっくりした。
遺体を観たかどうかの序盤のくだり、そんなに大事だったかなぁ・・・・

あと、ヒミの使える炎もなんでだろうな、とちょっと思ったり。
炎=希望?生命?
ペリカンを追っ払うシーンでワラワラの一部は焼いているんだけど、あれ必要だった? とかは考えてしまう。
自然の摂理の要素を入れたかったのだろうか? とかは考えましたね。答えは出ず。


ま~~
こんな感じで難しい作品ですよね。観た人ですっきり解決して気持ちよくなった人はいないんじゃなかろうか。
芸術作品としての映画ですね。これは。
こういうの大好きなので、個人的にとてもよい映画体験でした。

ジブリ観たことない人なんていないと思いますが(暴論)、
・もののけ姫
・千と千尋の神隠し
・崖の上のポニョ
・風の谷のナウシカ
あたりはきちんと通っておいた分で楽しめた要素もあったかなと思いました。トトロもかなぁ・・・

そんな人いないとは思いますが
人生初の映画とか、ジブリ作品初鑑賞とかには全く向いてないことは確かです。
文脈的要素は多いし神話的だし、ストーリーの流れと、裏にあるテーマみたいなものがうまくかみ合わない。かみ合わせようとすると合致せずにもどかしいんじゃい! でもそれ含めて楽しみ、その上で鑑賞者が何か持ち帰るような作品だと思います!


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