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小説家の頭の中

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日々のこと。書籍化にいたるまでの話など。
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#時間

光陰矢の如し

 楽しい時間は一瞬にして過ぎ去る。  その日の夜、朝が来るのが待ち遠しかった。一晩なんて寝てしまえば一瞬で朝になる。 そして朝が来て、楽しい時間が始まると瞬く間に時は過ぎ、あっという間に夜になり別れの時間がやって来る。  この一瞬で過ぎ去る時間感覚を何度も体感すると、まるで誰かに魔法をかけられたような不思議な感覚に陥る。  この時間感覚、どうすれば長く感じることができるのだろうと考えたことがあったが、時を止める術はない。 目の前にある楽しい、嬉しい、幸せ、といった感情。そ

失ってから気づく

 人はなぜ失う前に気付くことが出来ないのだろう。当たり前だった存在が、ある日突然、自分の元から離れる。二度と帰らぬ存在になった時、どんなに嘆き悲しんでも戻ってこない。そんな悲しみと後悔を経験したにも関わらず、また繰り返す人の愚かさ。     少し前、お世話になった人がすごく落ち込んでいた。これまでやってきた研究は無意味だったのではないか、そして、もう研究を止めようかと思っていると言った。  似たようなことを私も言ったことがある。その時、相談に乗ってくれ、励ましてくれたのは、こ