世田谷線にて

ときどき世田谷線に乗る。
世田谷線は、東京・世田谷区を縦に走る路面電車。東京とは思えないような、のんびりとした雰囲気が好きだ。通勤時間に乗ったことないから、そう思うだけかもしれないが。

その日も長閑な時間が流れる世田谷線に乗っていた。ぼんやり車窓を眺めていると、女子高生二人組が乗ってきた。派手さはなく、ごく平凡な感じの二人。運動部に入っているような、明るく快活な印象を受けた。
二人は座っている私の真横に立っていたので、彼女たちの会話を聞くとはなしに聞いていた。女子高生特有のテンポで話題はクルクルと変わり、コロコロと楽しそうに笑う。箸が転んでもおかしい年頃だ。なんだか私も楽しい気分になった。

若いっていいなぁなんて思っていると、唐突にひとりの子が言いった。

「ねぇラッセン展やってるから行かない?ラッセン好きなんだよね」

「え!?」
言われた方は驚き固まったが、私も同じ反応をした。そして一瞬の間のあと大爆笑。私も笑いそうになったが、なんとか堪えて、そこからは彼女たちの会話に夢中。

言われた方が笑いながら問いかける。
「ラッセンて、"ラッセンが〜好き〜"のラッセン?笑笑」
一世を風靡したリズムネタを爆笑して歌いながら。

「え、うん、そう。好きなんだよね、あの絵」
なぜ笑うの?という感じで答えるラッセン少女。ラッセンの絵がなぜ好きかを、真剣に話す。要約するとマジ絵が上手いから好き、らしい。

「え?マジ?ゴッホより普通に?笑笑」
尚も笑いが止まらず、ネタを交えて問いかける永井、ではなく女子高生。次第に貰い笑いしだすラッセン少女。

そして答える「ゴッホより普通にラッセンが好き」

二人でまた大爆笑。

ひとしきり笑ったあと少女永井が言った。
「いいよラッセン展行こう」

世田谷線は今日も長閑だ。

#エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?