不妊治療経験者が産科デビューをして感じた違和感

無事に不妊治療を卒業し、通常の妊婦検診を受けるため、近くの総合病院を受診した。

初診は産科部長の診察で、今までの治療歴、流産の有無を聞かれ、伝えようと頑張るも、内容が濃すぎてうまく伝わらない。しかし、そこはあっさりスルー。産科では今までの不妊治療での経過は重要ではないようだ。

今までの下積み時代(不妊治療)は関係ないとはっきりと言われているようで、妊娠しないとスタートに立てない、土俵に立てない、これが世間一般の「妊娠する」という事なのだとその時感じた。

妊娠は病気ではないし、女性は「妊娠して出産する」というごく自然な考え方で産科は成り立っているのだと思う。そこに不妊は関係ないみたい。

産科部長はこうも言った。
「化学流産は妊娠したうちに入らないから流産したとは言わない。」
投げ捨てるような言い方に、悲しくなった。
あれほど、化学流産で辛い思いをしたにもかかわらずなかったことにされ、産科部長という偉い立場の医者が、「化学流産は妊娠ではない」と言い放ち、私の過去の流産回数は1回に訂正された。

これが今の産科の現状。化学流産は妊娠とはカウントされないと言われている。これが今の医学の見解なのだから。

2017年欧州生殖医学会では、生化学的妊娠も流産の回数に含めるとの認識を初めて示しており、今後、不育症の研究が進むにつれこの辺りも明確になってくると思っている。
私としては化学流産は母体側の原因が考えられる場合は流産としてカウントしてもらいたい。なかったことにされるのは本当に辛い。

産科部長の診察では言葉の端々に不妊治療をしていた私には辛いと感じる言動が時折あった。胎児ドックを希望した時にも、ギョッとした表情で、うちではできないからと流された。

胎児ドックは過去に繋留流産をした経験があるからこそ、夫婦で話し合って決めた事で、それすら話す雰囲気ではなかったし、 結局、病院は自分で探して検査を受け、胎児ドックの結果も伝える事はなかった。

もう少し、不妊治療経験者に寄り添った妊婦検診のあり方があってもよいと思ったが、一般の妊婦検診というのはそういうものなのだろう。

「女性は妊娠して当たり前」

生理学的にはそうかもしれないけれど、これからの時代は果たしてそうか?
女性が仕事にやり甲斐を持って活躍する時代、安倍総理だって、「女性活躍推進法」を制定した時代。妊娠適齢期を仕事に没頭し、晩婚化が進む時代になってきているのではないか。不妊治療を必要とする夫婦は必然的に増えてくると思う。

少し前に、偉い年配の議員さんが女性議員さんに「子供産めよー」なんて野次をとばした人もいたけれど、そういう考えは古臭い。
そういえば、産科部長も年配だった。

これは私の経験を踏まえた見解だけど、
不妊治療の専門病院と一般病院の産科はもう少し連携してもよいのではないかとも思う。
これは不育症専門病院にも言える事だか、それぞれ独自に機能しているため、私のように3つを掛け持ちしている人にとっては、気を揉むようなシチュエーションが多々あった。(産科で不妊や不育の話をしても完全にスルーだったり。不育の薬を処方してもらえなかったり。身重で去年のあの猛暑の中、病院あちこちはしごしたり。)

辛い不妊治療を乗り越えて、やっと土俵に立てた妊婦の気持ち、妊婦検診で少しだけでいいから汲み取ってくれたら。私のエゴかもしれないけれど、もう少し、不妊治療経験者にとって優しい時代がくるとよいなと心から思う。

#不妊治療

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