オールイングリッシュの授業で文法は身に付く?
英語脳が身に付くオールイングリッシュ授業が中学校で採用に
英語をいったん日本語に置き換えるのではなく、英語を英語のまま理解できる思考回路を「英語脳」と呼んだりします。
日本語という余計な経路を含まないため素早く英語を理解でき、流暢に話すためにも英語脳は重要だと言われています。
この英語脳を作るために、まず英語の文法を日本語で覚え英文を日本語に訳しながら読んでいく「文法訳読法」という学習法では不十分で、日本語を使わず英語だけで英語を勉強する「直接教授法」が有効だと言われています。すなわち、オールイングリッシュの英語の授業が効果的ということです。
学校教育においてもこの考えが採用され、2021年から学習指導要領上では中学校の英語の授業がオールイングリッシュで行われることになっています。
しかし、先生のスキルの問題、生徒の基礎力の問題、1クラスの人数の問題など、様々な問題があり、実際にオールイングリッシュの授業ができているのかは定かではありません。
オールイングリッシュのレッスンと聞くと、何だか魅力的に聞こえますが、同時に英語の説明だけできちんと英語の文法が身に付くの?と疑問に思う方もいらっしゃるのではないかと思います。
この記事ではそんな疑問について考えてみたいと思います。
「知っていることを知らない」文法
ところで、みなさんは日本語の文法についてどれくらい知っていますか?
日本語が話される環境で育った人は、たった数年のうちに日本語の規則を身に付け、自由に日本語を操れるようになります。
みなさんも日本語の文法なんて当然知っていると思っているのではないでしょうか。
ですが、日本語をよく観察してみると、「知っていることを知らない」文法が意外とたくさんあるのです。
(1) 学生がコーヒーを3杯飲んだ。
(2) 学生が3人コーヒーを飲んだ。
どちらの文もすんなりと意味が理解できます。
次の文はどうでしょう?
(3) *学生がコーヒーを3人飲んだ。
なんとなく意味は分かりますが、とても文法的とは言えません。なぜこの分がヘンテコに思えるのでしょうか?
理由として、修飾する語(3人)と修飾される語(学生)の距離が離れているからと予想できます。が、これは間違っています。
次の文を見てください。
(4) コーヒーを学生が3杯飲んだ。
修飾する語(3杯)と修飾される語(コーヒー)の間に「学生が」という言葉があり距離が離れているのに(4)の文は文法的だと感じます。
このように日本語には、「名詞の数を説明する助詞のつかない言葉(3人、3杯など)は、主語を挟んで目的語を就職できるが、目的語を挟んで主語を就職できない」という文法があるのです。
この文法を知っていて使っていたという方はどれほどいらっしゃるでしょうか。
言葉にして説明すると日本人でもよくわからない複雑な文法ですが、この文法を習得するのに高い認知能力は必要なく、3歳児で(3)の文がおかしくて、(4)の文は正しいという違いを理解できることを示した実験もあるそうです。
他にも「知っていることを知らない」文法はたくさんあります。
次の文字を声に出して読んでみてください。
(5) 1本 2本 3本 4本 5本 6本 ・・・
さあ、「ほん」「ぼん」「ぽん」の使い分け方を知っていることに気づいたのではないでしょうか。これも立派な文法です。
このように、少なくとも母語の獲得においては、そもそも文法は言葉で説明されて理解するものではなく、周りで話されている言葉を聞いて自然と頭に染み着いていくものです。
助詞の「は」と「が」の使い分けを日本人が説明できないように、英語の"a"と"the"の使い分けも言葉で説明しにくく、使っていくうちに覚える必要があるのです。
オールイングリッシュでも文法が身につけられる。
だいぶ話がそれましたが、オールイングリッシュの英語学習においても、たくさんの英語の文に触れるうちに、母語を獲得するのに近い形で文法も身に付けることができるのです。
さらに、オールイングリッシュに慣れ、ある程度英語を聞く力が身に付いてくれば、文法の間違えやすいポイントや、どういう使い方をするかなども、英語での説明で理解できるようになっていきます。
オールイングリッシュレッスンは文法も身に付き英語脳も鍛えられるとても効果的な教授法です。
一方で、気を付けなければいけないこともいくつかあります。
気を付けなければならないこと
一つは、とにかくたくさん英語を聞くことです。自然に文法を身に付けるには、当然ながらたくさんの英語に触れる必要があります。
ネイティブか、ネイティブ並みに英語が堪能な先生にたくさん話しかけてもらうこと、お家でも英語の歌や絵本を見て英語の中に身を置く時間を増やすことが大切です。
もう一つは、特定の文法を含んだ例文に集中的に触れることです。
日本で生活していれば、どうしても英語に触れる時間は限られてしまいます。その時間を漠然と英語を聞いているだけだと理解も中途半端になり、文法が間違ったまま定着してしまうことすらあります。
今週は動詞の活用に関する例文、次は疑問形に関する例文、といったように、しっかりしたカリキュラムのもと、定着させたい文法にターゲットを合わせて例文に触れる必要があります。
そして、英語を話す機会も作ることも重要です。実際に英語を使ってみることで定着は早まります。その面では、英語教室なら少人数クラスがおすすめでしょう。
1クラス30人で60分の授業の場合、半分は先生が話す時間とすると、生徒1人当たりが話す時間はどんなに長く見積もっても1分です。これでは十分ではなく、やはり少人数でインタラクティブな方がおすすめです。
最後に、学習を始めるなら早いうちが良いということです。人間が言葉を習得できる期間は、若いうち、特に幼い子供のうちに限られているという説があります。
成長すると完全に身に付けられないかと言われると定かではありませんが、幼いころの方が吸収するのが速いのは紛れもない事実です。
特に文法を自然に定着させるのは子供特有の能力ですから、はやいうちから英語を聞くことができる環境をつくるのは効果的なことでしょう。
英語を学習したい、学習させたいのなら、オールイングリッシュのレッスンを試してみてはいかがでしょうか。