作品「静かな家族」


静かな家族              
 
 
ひとりでいることを好むぼくが
きみと出会って
ふたりになった
きみは言葉を丁寧に選ぶ人だから
ぼくたちは
きっと
静かな夫婦になると思った
子供が生まれ
三人になり
四人になって
少しにぎやかになった
そのうち
娘は本を読むことが好きになり
息子は絵ばかり描くようになった
それから
犬が一匹やって来て
最近 
子猫も仲間に加わった
気弱な犬は
庭に現れる鹿に
吠えないし
なかなか美形の猫は
もちろん
寝てばかりいる
奈良のすみっこ
平屋の家で
ぼくらは
ひっそり
暮らしている
ふたりの生活に戻るのは
まだ先だが
その前に
静かな家族が
できあがった
 







『歩きながらはじまること』(七月堂)
『朝のはじまり』(BOOLORE)

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