作品「18 赤い耳」


18 赤い耳


その人は
すっかり酔うと
耳たぶが赤くなった

私が
 耳、赤いですよ と
指摘すると
彼は
 そろそろ眠ることにするよ
 あなたも、そろそろお帰りなさい と
言った

 このお酒は……
重ねて訊くと
 ……おやすみ
その人は私の問いに答えず
ふとんに入って
眠ってしまった

私も
 おやすみ と
声をかけ
ふらふらと
暗いトンネルをくぐった
銀色の月が
森の上で
眠っていた









『耳の人』(BOOKLORE)
『歩きながらはじまること』(七月堂)


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