作品「朝のはじまり」

朝のはじまり　
　　　　　　　　　　
 
毎朝　猫に起こされる
普段は　午前六時前に
にゃーん
にゃーーん　と鳴く
家人には
ごはーん
ごはーーん　と聞こえるらしい
今日は五時前に鳴きだした
もちろん　誰も起きない
みんな寝ている
僕が起きるしかない
居間の戸を開けて餌をやる
カリポリと音がして
あっという間に平らげてしまう
満足して畳の上でごろんごろんと
横方向のでんぐり返りをしている
僕は眠い
とてつもなく眠い
猫もあくびをしている
そして
彼女は
また眠る
丸くふわふわした静けさに戻る
取り残された僕は
これから
仕事に行くのだ
なんだか
猫に囓られたような
朝のはじまり
 

囓られた　・・・　かじられた


『歩きながらはじまること』（七月堂）
『朝のはじまり』（BOOLORE）