「サブスク彼氏」

〈原案〉


〈あらすじ〉
パワハラ、セクハラ、モラハラが飛び交う職場で、恋愛も結婚も出世も諦め、目立たぬように努め、あらゆるリスクを回避し、心を無にして日々の業務をこなすサトコ(27)。私生活での楽しみはネットで炎上するニュースの高みの見物をすること。貯金だけは増え、老後に備え、一人暮らしのマンションの購入と、孤独死さえ計画していた。
そんなある日、サトコはSNSで彼氏派遣サイト「サブスク彼氏」の広告に出くわし、鼻で笑いつつ、クリックしてしまう。週末、目の前に現れたのは信じがたいイケメン(28)だったが、デートは初回特典の無料30分間で打ち切られた。2回目の男(33)はパネルマジックの疑いがあったものの、女性慣れした振る舞いに引かれ、終電まで甘いときを過ごした。3回目は一転してサービス精神を欠いたやる気のない男・マコト(23)で、逆にサトコが気を遣うほどだった。が、偶然出くわした会社の同僚男子(26)に「サトコさんとお付き合いしています」と堂々と自己紹介するのを目の当たりにし、サトコは長期契約を決意する。
その後、洋服に気をつかい、エステなどの自分磨きも始め、サイトの細かな利用規約に翻弄されつつ、デートをリードし、また、いくつものオプションを追加し、サトコはついに親への挨拶を済ますことができた。結婚を確信したサトコだが、その直後、男から「アイドルとしてデビューするため契約を解除する」と告げられてしまう。
金も尽き、絶望して引きこもるサトコの自宅を、職場でいつも気にかけてくれていた冴えない同僚男子が、個人情報の壁を乗り越え、訪れる。「恋なんてリスキーなことはすべきではない」とこぼすサトコに、同僚男子は「じゃあ、友達から始めましょう」と提案。サトコは同僚男子をSNSの友達に登録するのだった。


〈登場人物〉
サトコ(28):ブラック企業勤務
初回の男(28):「サブスク彼氏」初回要員?
2回目の男(33):青年実業家風の男
3回目の男・マコト(23):つかみどころのない男
課長(30代)
部長(40代)
同僚男子(26)
サトコの父親(60代)
サトコの母親(60代)


〈シナリオ〉
◯サトコの実家、昼
 サトコとスーツ姿のマコト、田舎の一軒家の門のまえに立っている。
 サトコ、ばっちりメイクし、服装も華やか。
サトコNA「ついに……ついにここまで来た!」

◯オフィス街、昼
テロップ:半年前

◯中小企業のオフィス、同
 社員数人が忙しそうに働いている。
 化粧っ気がなく、地味めのスーツに身を包んだサトコ、
 机に向かって黙々と作業を進めている。
 と、机のうえに大量の書類が置かれる。
 サトコ、顔を上げる。
課長   「悪い。これ今日中に頼むよ!」
サトコ  「……(眉をひそめる)」
課長   「え、忙しい?」
サトコ  「……いえ」
課長   「だよね! いつも助かるよ〜」
 部長、後ろを通りかかり、
部長   「おいおい、サトコちゃんだって
      早く上がりたいときもあるだろ……デートとか(笑)」
課長   「部長、それ、セクハラっすよ(笑)」
部長   「人聞き悪いな〜。セクハラっていうのは
      こういうのを言うんだろう?」
 部長、サトコの肩を揉む。
課長   「ちょっと何やってんすか〜(笑)」
 周囲、苦笑い。
 サトコ、無の表情。
 席の離れた同僚男子、部長に声をかける。
同僚男子 「部長! 部長! お電話です!」
部長   「おお……お前らも仕事しろ、仕事」と席にもどる。
 同僚男子、サトコに近づき、
同僚男子 「……あとで手分けしましょう」
サトコ  「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。慣れてますから」

◯サトコのアパート、夜
 帰宅したサトコ、灯りを点ける。
 ワンルームの質素な部屋。
 サトコ、壁に貼られた紙に手早く何かを書き込む。
 部長と課長の各欄に「正」の字が並んでいる。
 サトコ、椅子にドスッと座り、
サトコNA「って……コロス……いつか……そのうち……
      機会があれば……死ぬまでに……」
 * * *
 サトコ、髪を拭きながらバスルームから冷蔵庫へ。
 発泡酒を取り出し、一口飲む。
サトコNA「……と言っても、私、まだマシかもしれない」
 サトコ、スマホを眺めている。
 その画面には「セクハラ議員逆訴訟」「〇〇不倫発覚」
 「××バツ泥沼離婚訴訟」などのニュースの見出しが並んでいる。
サトコNA「……はあ、どうなってんのよ、“リスク管理”ってやつは」
 サトコ、飽きれたようにため息をつく。
 と、スクロールしていると「期間限定彼氏」「僕と恋しませんか?」
 などのコピーが目に飛び込んでくる。


(すみません、時間切れのため、ここまでです)

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