薄明りにもえる林を抜けて(ながめぐ論03)

目黒陽介のながめくらしつは多分に叙景的作品だ。様々な風景の表現が、シリーズを貫いている。

2008年の堀の外のジャグリングの中で演じられたながめくらしつ一作目からずっと扱われているモチーフに、林の中の風景がある。実存的な木々なのか、夢の中の迷いを意味する抽象的な林なのかは判然とはしない。どちらにせよながめくらしつでは必ず、主人公が優しい雨のそぼ降る林をさまよい歩くのである。

最近に近い後期の作品では、チンアナゴとも呼ばれる白く高い棒の林。中期2012年の起きないあたまでは、不安定に連結した棒の林。もしかするとミニチュアの林もあったかもしれない。

記念すべき2008年の第一回では、出演者中のキーマンでもある松田が、その身体を持ってそれを表していた。目黒や池辺が片足立ちで不安定に立つ松田のそこここにボールを乗せていく。それに呼応して松田が風に揺れるような動きで、そっとボールをホールドする。
寂しさはなく、薄明るい林の中の一本の木がすっくと立っていた。そこを目黒が通り過ぎていった。

ぼうやりと、ながめくらしているはずなのに、木々にはどうしても、なにか不思議な引力があるのだ。

ながめくらしつ : 目黒陽介が主催する、ジャグリングを基点とした・音楽・パフォーミングアートなどからなる舞台創作集団。代表作は「ながめくらしつ」 http://nagamekurasitsu.com/

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