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帝国に挑む(1) ~忘れたくないこと~

少しでもスマホから離れればLINEの未読が数百件という毎日。

様々なプロジェクトを同時進行させながら、今年は映画「えんとつ町のプペル」の公開も控えている。

次から次へと新しい情報が舞い込んできて、困ったコトにこの身体は挑戦に狂っていて、知らない世界に飛び込みたがるから、また新しい情報が舞い込んでくる。

その中から、必要な情報だけに飛びついて、どうにか人とコミュニケーションがとれる程度には生きているけれど、一昨日、何をしていたのかは思い出せない。

地元に美術館を建設すると決めてから、地元に帰る機会が増えた。

夜は同級生らと集まって、皆が思い出話に花を咲かせる中、自分の思い出がなかなか見つからず、当時のボクの思い出を皆から教えてもらう始末。

時々、YOUTUBEで見かける半年前の自分は他人にしか見えない。

「こんなコト、喋ったっけ?」

「こんなコト、僕が本当にしたんだっけ?」

そんな毎日を過ごしている。

ロケット鉛筆のように古い記憶から順に押し出されちゃってるのかな。

いやいや、シンプルにバカなんだと思う。

いずれにせよ、どうやらボクは、皆みたいに昔の思い出を保管しておくことが苦手らしい。

話したコト、感じたコト、その時の天気、匂い…せっかく体験したアレやコレを次から次へと忘れてしまう。

その中には、きっと、忘れちゃいけない思い出が混じっていて、父ちゃんや母ちゃんや、友達や、好きな女の子から貰った大切な言葉が混じっている。

子供の頃の記憶は、今はもう、ほんの少ししか残っていない。

弟が生まれたので、母ちゃんは田舎に帰っていて、いつも幼稚園の送り迎えは、婆ちゃんが来てくれた。

若いお母さん達に混じって、ボクの家だけヨボヨボの婆ちゃんだったんだけど、ボクは婆ちゃんが大好きだったから、ちっとも恥ずかしくなんてなくて、用水路沿いの道を二人で手を繋いで帰った。

時々、家族の皆には内緒で、ブルボンの『バームロール』を買ってくれて、とてもとても嬉しかったことを覚えている。

このまま今の生活を続ければ、きっと、この思い出も無くなるのだろう。

婆ちゃんは数年前に死んじゃったから、ボクが婆ちゃんとの思い出を忘れちゃったら、あの時の時間がこの世界から無かったことになってしまう。

それは、やっぱり寂しすぎるので、この先、どれだけの情報に飲まれても、後でちゃんと思い出せるように、子供の頃の記憶から順に掘り起こして、ここに綴っていこうと思う。

2020年2月23日(日) 石垣島のホテルより

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