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アコギ回顧録 番外編その⑤「リペアとセットアップについて」

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。


「リペアとセットアップ」

 同じようなことを何度も言っているかも?ですが、皆さんは本当に良い状態でギターを使っていますか?この良い状態とは一般に言われている傷があるとか無いとか、クラックがあるとか無いとかの話ではありません。いかにギターをプレイしやすい状態に調整(リペアも含みます)してあるかということです。これは新品・オールド・ユーズドを問わず、すべてのギターにかかわって来る非常に大切な問題です。

 普通はギターが新品で工場から(あるいは個人製作家の工房から)出荷された時、その時が最も良い状態にセットアップされていると思われがちですが、そんなことはありません。マーティンやギブソンテイラーやコリングス等の大規模なメーカーから個人あるいは数人の小さな工房にいたるまで、本当に完璧にセットアップしているところはほとんどありません。(あくまでも、使う方一人一人にとって完璧か?という意味でです。)つまり新品でギターを買っても個人製作家にオーダーメイドしても、100%完全にあるいはそれに近いところで調整されたギターを使っている人は非常に少ないのです。プレイヤー自身がギターのことを非常によく知っていて、本当に細かいところまで指示して調整してもらうことができればまだましだと思いますが、そういう例もまだまだ少ないようです。

 今あなたが持っている(使っている)ギターには何の問題もありませんか?
 弦高、テンション、ピッチ、フレットの浮き・磨耗、指板のレベル、ネックの仕込み角、ナット・サドルのアール、ナットの切り込みの深さ、ぺグの緩み・がたつき、力木のはがれ、etc.まだまだたくさんあると思いますが、それぞれの問題について気になるところはありませんか?もし少しでも気になるところがあるのなら、妥協せずその問題を解決していくことです。これ以上はどうしようもないところまで調整して納得するようなプレイヤーになってください。プロ・アマを問わずきちんとリペアされ、セットアップされたギターを使っているプレイヤーは本当に少ないです。しかしこれをしてこそ一番気持ちよくギターが弾けるというものではないでしょうか?

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30年以上前の写真です。1972年製のMARTIN D-41

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 少し頭を切り替えて別のものにたとえて見ましょう。たとえば車(自動車)やバイクだったらどうでしょうか? タイヤがパンクすれば修理しなければなりませんし、磨り減ったタイヤで走り続ければ自らの命を危険にさらすことになります。エンジンオイルもずっとそのままで交換せずに使えるわけではありませんし、ブレーキパッドも使えば使うほど消耗してきます。直接命にかかわらないにしても、最低限必要な修理や交換しなくてはならないパーツはいくつもあります。特別なクラシックカーのように乗ること、走らせることをまったく(あるいはほとんど)せずにただ鑑賞するためのものであればそれも許されるでしょう。使うこと、弾くことを(車なら乗ること、人やものを運ぶこと)前提にすればギターにとっても同じことが言えると思います。クオリティを維持するために、あるいはよりグレードを上げるために修理・交換などのメンテナンスは必要不可欠なものです。
 もう一つ違うたとえとして、板前さん、コックさん等の料理人が使う包丁、あるいは大工さんのような職人さんが使う道具(カンナ、ノミ等)は切れ味がすべてです。常に研いでおかないと良い仕事ができなくなります。使う道具をベストの状態にして、最高の仕事ができる準備をしておくことが大切です。(ある意味当たり前のことですが)
 アマチュアの方にはちょっとうるさい話になってしまったかもしれません。そこまでしなくても使えれば良いという方も少なくないと思います。が、知っておくことは良いことだと思います。そこまでちゃんと考えて、ギターを使って行く方が増えてくれれば嬉しいです。

モスマンS

30年ほど前に友人に譲ったMossman Southwind 1976
完璧にセットアップされています。先日弾かせてもらいましたが、”メチャええ音!”でした。

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 今一度みなさんもセットアップに対する考えを見直してみてはいかがでしょう。新品のギターだからといって何も考えずに信用するのはやめましょう。新品の時が最も良い状態だとは限りません。マーティンやギブソンのような一流メーカーだからといって信用し過ぎてはいけません。あなた自身の手でしっかりと判断できるようにしてください。ギターが道具であるということを前提に考えてみてください。
 たとえばそれが包丁なら、切れ味が悪くなっても研がずにずにそのまま使い続けることと同じです。料理人の世界なら到底許されることではないでしょうし、家庭でも使いにくい道具になってしまうでしょう。大工さんがカンナやノミを研がずにずっと使い続けるようなものです。そんな道具でよい仕事ができるわけがありませんし能率も悪くなるはずです。ギターを楽器として(使う道具として)とらえているなら、弾いてこそギターですし、良い状態で使ってこそ楽器としての意義があるというものです。

 最後にもう一つの大きな問題です。ここが一番大事なポイントかもしれません。

 どこに依頼するのか?
 誰に作業ををしてもらうのか? です。
 正直なところ、どこまで書くのか?かなり迷いました。レベルの差が大きすぎて、ひとまとめにしてしまうことができないからです。

 昔(私が若い頃)と比べると、今はリペアやセットアップしてくれる工房も増えたと思います。が、残念ながら中には「絶対あそこには依頼してはいけない!」そんな工房もあります。自分でできる限り多くの情報を集めて、確かなところを見つけることが大切です。全国的に名前が知られている業者でも「ド素人か!!」と思うような作業をしていることがあります。(外注しているのかもしれませんが)そんなところに依頼して「これはダメだ!」と思うような結果であったとしても、なんとかやり直せる状態なら良い勉強、良い経験になったと前向きにとらえることができます。しかし、時と場合によっては取り返しがつかなくなってしまったこともあるようです。

 良いギター、愛着のあるギターをお持ちの皆様、自分の見る目を養っておきましょう。リペアやセットアップに納得がいかない場合、きちんとそのことを相手に伝えることができるようにしましょう。そして、そんな自分の思いにきちんと応えてくれるショップ、工房、リペアマンを見つけておきましょう。

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MARTIN D-28 1975年製 今も所有しています。
セットアップ、ばっちりです。もちろんサウンドも!

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
宛先 e-mail:mail@acogian.com または twitter(@acogibucho)にお願いします。

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