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辞書のできごと(2023年4月)

先月あった辞書に関する出来事をまとめます。コメントはあったりなかったり……のつもりでしたが、一応ぜんぶ付けました。最初くらいは。



4/1 📃国語研広報誌でながさわさんのエッセイが掲載

国立国語研究所広報誌『ことばの波止場』に辞書マニアのながさわさんが寄稿。「いかつい」の意味が単なる「すごい」へ変化していることについて、「えぐい」「やばい」「いかい」の語誌を参照しつつ検討しています。(その「すごい」自体も同様に語義変化したものですよね。)
イラストはたぶん本人提供?(と書いていたら、違うとのことでした。)


4/3 📱物書堂セールが開始(~4/24)

恒例の「物書堂春の辞書まつり」(©Meme-Memeさん)。今年も「辞書by物書堂」アプリのコンテンツなどが大幅に安くなり、各地で財布が爆散。例年以上に反応している人の多かった感じで、年明け頃から「セールまだか」の声が増え始め、セール中も戦果を披露するツイートが大量に見られました。いいことです。
これまで春のセールで対象になったことのない(と思う)、〈ジーニアス英和〉が第6版になって割引されていたのも目を引きました。


4/4 📺辞書部屋チャンネルで読み比べ動画が公開

久々の更新。テーマは「遠足」。前回「もぐらたたき」の引き比べでは「割といいんじゃない」という扱いだった〈広辞苑〉が、今回はオチ担当になっています。


4/4 📱物書堂辞書〈アクセス独和・和独辞典(第4版/第1版)〉コンテンツが発売

物書堂セール期間中のコンテンツ追加第1弾。三修社〈アクセス独和辞典第4版〉(2021)がコンテンツとして入りました(販売は和独とセット)。前のバージョンの〈アクセス独和・和独〉を持っていれば割引も効くようです。
なお、2010年から長らく販売されていた旧版〈アクセス独和3版〉コンテンツは終売し、〈アクセス独和〉単体での販売がなくなりました。

以下は書籍版。


4/5 📕見坊行徳・三省堂編修所『三省堂国語辞典から消えたことば辞典』が発売

イラストは萌える国語辞典。さん。LINEスタンプもほぼ同時に発売され、4/28に電書版が配信されています。4/26には重版のリリースが出ました。

2023年の辞書関係の書籍は既に、

  • 山田詩津夫『問題ですよ 辞書の日本語』(2/14)

  • 鈴木絢音『言葉の海をさまよう』(3/7)

  • 高橋聡『1秒でも長く「頭」を使いたい 翻訳者のための超時短パソコンスキル大全』(3/24、ただしこれは最後の2章だけが辞書ですが)

……と大量に刊行されており、もう大渋滞です。


4/6 📱物書堂辞書〈研究社 露和辞典〉〈研究社 和露辞典〉コンテンツが発売

物書堂セール期間中のコンテンツ追加第2弾。物書堂辞書では2016年から小学館〈プログレッシブ ロシア語辞典〉コンテンツが使えますが、そこに研究社〈露和辞典〉〈和露辞典〉が加わって、ロシア語ラインナップが盤石になりました。歓迎する声多数。
〈露和辞典〉は1988年刊行の古い辞書ながら、“デジタル版として加筆・修正を行なったもの”とのことで、Интернет(インターネット)やсмартфон(スマートフォン)なども載っていますね。

下記は書籍版。


4/6 🌐小学館辞書編集室の新サイト「ことばのまど」が公開

新サイトですが、まだ新コンテンツはないようです。
旧サイト「Web日本語」(InternetArchive)は閉鎖になっています。辞書の作り方ページ(InternetArchive)のような面白いコンテンツがまた公開されることに期待。作り方より使い方の指南が先かもしれないですが。

個人的には木緒なちさんデザインにオッ!となりました。


4/8 📻NHKラジオ第一で「国語辞典サーフィン」が放送開始

芸人で辞書マニアのサンキュータツオさんがパーソナリティを務めるラジオ番組。昨年夏と秋に放送した特番が好評につきレギュラー化。めでたいです。
放送はNHKラジオ第1、毎週土曜の昼0:45から15分間で、聴き逃し配信が便利です。
4/8のテーマは「右」、4/15は「丘」、4/22は「さばさば」、4/29は「猫」。街行く人にお題の語釈をやらせるというのが他にない魅力でしょう。ツイッターのハッシュタグ #国語辞典サーフィン でだいたい雰囲気がわかります。


4/8 📺〈タイ日大辞典 改訂版〉編集部を訪問した動画が公開

冨田竹二郎〈タイ日大辞典〉(1997)の改訂に当たるめこん編集部で、大詰めを迎えた編集風景を取材。他の仕事をキャンセルしてゲラの点検に臨む赤木攻さんが、見やすさ・引きやすさを重視しながら“冨田色をできるだけ消さないように”したと方針を説明しています。


4/9 📰北陸中日新聞で「辞書を知る展」の記事が掲載

石川県白山市の呉竹文庫にて、5/28まで開催中。記事は4/9ですが、展示は3/14から行われていたとのことです。
展示してある辞書は記事によれば24点、博物館のページによれば30点。ん?


4/10 📱JKで〈小学館 オックスフォード 英語コロケーション辞典〉が公開

訳語も付いて日本人に使いやすいコロケーション辞書がジャパンナレッジに入りました。英作文で自然な表現を見つけたり、表現の幅を広げたりするのに便利です。


4/11 📱〈デジタル大辞泉〉が更新

小学館〈デジタル大辞泉〉(固有名詞などを大量に立項する〈デジタル大辞泉プラス〉も)が更新され、4/11付でコトバンクに反映されています。現在、〈デジタル大辞泉〉は年2回アップデートが反映されていて、コトバンクでは昨年10/7から半年ぶりです。
ちなみにジャパンナレッジでは年1回しか反映されません。

※上記「ことばのまど」は4/25の記事ですが、ここではコトバンクの「お知らせ」に表示されていた日付を採用しました。


4/16 📺日テレ「イツマデモツカ」で辞書勢がしりとり

辞書コレクターの稲川智樹さんと、〈三省堂国語辞典〉編纂者の飯間浩明さんという豪華なカードが、教会でしりとり勝負をしていました。何でだよ。
リズムに乗って答えなければ負けという強制横スクロールみたいな特殊なルールでした。TVerで見逃し配信中。うどんこ病。なお、勝敗は。


4/17 📱コトバンクで〈日本歴史地名大系〉が公開

地名の由来やその土地の来歴などを調べるのに便利な〈日本歴史地名大系〉が無料辞書サービス・コトバンクでも使えるようになりました。ただし全文ではなく、項目の前半部だけが表示されるようです。
きちんと使いたければ有料のジャパンナレッジへ、とコトバンク内でもわざわざ案内されています。
凡例はジャパンナレッジにあります


4/18 📃小学生向け辞書の選び方記事が公開

学校で辞書の購入が必要になってくる時期ですが、「パパやる」というサイトで小学生用国語辞書をどう選ぶかという記事が出ました。ライターさんのお子さんは、軽さが気に入って三省堂〈例解小学国語辞典〉にしたそうです。とらデザイン版は私もお気に入り。

ちなみに、小学生向け辞書の比較記事は色々あるんですが、使い手(親)目線かつ詳細なものというと、けんでんさんの力作がやはり群を抜いて内容が濃いと思います。


4/20 📺物書堂辞書の使い方ガイド動画が公開

英語辞書の使い方や物書堂辞書アプリの活用法について発信しているMiwa TEAこと武田三輪さんが、「物書堂 徹底 使いこなし術」シリーズを開始。
現在③まであり、④の公開が予定されています。

ハイペースで動画が公開されていて、すべては取り上げきれませんが、とりあえず。


4/26 📕小倉孝保『中世ラテン語の辞書を編む 100年かけてやる仕事』が文庫化

2019年刊の単行本が角川ソフィアで文庫化されました。
って、もう4年間積んでることになるのか。


4/30 🌐研究社サイトの無料〈ルミナス英和・和英〉がサ終

〈ルミナス英和辞典・和英辞典〉が研究社サイト上で長らく無償提供されていた(InternetArchive)のですが、終了しました。
〈ルミナス英和〉(第2版は2005)の後継である〈コンパスローズ英和〉(2018)は同社のKODや物書堂辞書、DONGRI等で使用可能です。〈ルミナス和英〉もKODで使用可能。いずれも有料です。

『翻訳者のための超時短パソコンスキル大全』の著者・高橋聡(帽子屋)さんの発言を思い出します。

無料サイトは、明日いきなりサービスが終了しても文句が言えません。

禿頭帽子屋の独語妄言 side A 2020.06.28

実際、無料で提供される辞書のコンテンツやサービスは(今月もあったように)増えることもありますが、消えることも間々あります。帽子屋さんは“「辞書はタダ」という風潮は好ましくない”ともはっきり言っています。無料で使える辞書が完全消滅するとは考えにくいですが、今後どちらに向かっていくのか。


今月分は以上です。

3時間ほどかかりました。これくらいなら毎月書けると思うので、なるべく続けます。

5/3 公開
5/3 加筆修正

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