「妖怪ウォッチ」が「ポケモン」になれなかった理由を親の視点から考える
いま、うちの子が「Y学園やってる!」とテレビ開始時間を意識して待ってまで、妖怪ウォッチを見ている。
楽しみにしているのだ。「シャドウサイド」に変わったときも好きだった。
「ケータのいる妖怪ウォッチは子供っぽいけど、シャドウサイドは好き」
と言っていた。完全にターゲット層の成長に対応していて、レベル5のマーケティングすげえな、と思ったものだ。いまも新シリーズを楽しみに見ている。
ただなー…親として見たとき、ポケモンに勝てるとは思ったことがない。
まず、妖怪ウォッチが最盛期だった頃、うちの子はまだゲームをやる年齢ではなかった。アニメしか見ていない。妖怪ウォッチも持っていない。
面倒なので、購買状況を羅列してみよう。
◆「妖怪ウォッチ」と「ポケモン」の購買状況
【妖怪ウォッチ】
・映画に毎年行く
・アニメを毎週見る
・新シリーズになっても好き
・妖怪の名前をそこそこ覚えている
・アプリゲームを始めて、親だけが未だやっている(多分このパターンの家庭は多い)
・ゲームをやりたいとは言わない
・妖怪メダルを買わない
・妖怪ウォッチ(実物)を買わない
【ポケモン】
・映画に毎年行く
・アニメを毎週見る
・新シリーズになっても好き
・ポケモンの名前をかなり覚えている
・アプリゲームをたまにやる(親はやらない)
・ゲームをやっている(合計6本は買った)
・ポケモンカードゲーム(トレカ)をやっている
・ポケモンの戦闘とか都市伝説とかポケカ動画とかYoutubeを見ている
・ポケモンのぬいぐるみを買う
・ポケモンのフィギュアを買う
・ポケモンセンターに行きたい
親が企業に払う税金(笑)としては、ポケモンの圧勝なのだった(しかしうちの税金の支払先の最大手は任天堂ではない。バンダイである。しゃーないバンダイは強すぎる)。
この差はどこから出てくるのだろうか?
「親の財布の紐」だろうと思っている。ポケモンは先行コンテンツである。それを除いたら、妖怪ウォッチにある程度、勝機はあった私はと考えていた。しかし、数年子供の様子を観察して、それは間違いだったかもしれない、と思い始めた。
そもそも妖怪ウォッチ自体がポケモンの隙間産業だったのでは?
そんな風に今は思っている。
◆「ポケモン」の強さを考える
言わずもがな、キラーコンテンツをいくつも持つ任天堂は強い。スマブラにピカチュウが出てくるのずるい、と思う。ついでに今聞いてみたが
「スマブラに妖怪ウォッチのキャラ出てくるー?」
「ううん、たぶんいない」
先日までスマブラのヘビーユーザーだった子が言うのだから、まあいないのであろう。ドラクエの勇者が追加コンテンツで出てきたときには、子供ははしゃいでお年玉でキャラを追加購入した。それを考えると、任天堂の採用基準が潔くてステキである。
●ポケモン世代にポケモンのことを聞く
ちなみに、私はポケモン世代ではない。やや下の世代のブームである。なので知っていることと言えば「サトシとピカチュウ」くらいである。アニメのサトシがゲームに出てこないことを、子供がポケモンにはまってから初めて知った。
さて、身内のポケモン世代に語ってもらった話はこう。
「クラスの100%がポケモンをやっていた。女子も」
「やってないヤツにじんけんがないレベル」
「通信ケーブルを持ってるやつは神だった」
し、知らなかった…。そんなことが起こっていたとは。そんな私だが、既に子供の付き合いでポケモンの全映画を見ている。
「ところで、リメイクされたミュウツーの逆襲って、かつて売上No.1で全米大ヒットだったそうだけど、そこまで良いシナリオだとは思えないんだよね」
「そりゃ、今の視点から見ればそうだろうけど。当時はミュウツーは謎のポケモンで、映画で真のエピソードが明かされて、衝撃だったし大感動だったんだよ…」
おおう…それはすまんかった….。オタクとして失礼な質問をしてしまった。まあ当時、大旋風だったのはよくわかった。そして、その世代が大人になり、親の世代になっているのが現在である。どう考えても、親が子供と一緒に楽しみたいコンテンツはポケモンだろう。知名度がすごい。
●ポケモンは昆虫図鑑に勝る?
いくつか、子供のエピソードがある。
親戚に虫が好きな子供がいる。虫取り網を持って家の周りの昆虫を見つけて喜び、名前を教えてくれる。いいなあ、子供らしい。
対してうちの子は、ポケモンをむちゃくちゃ覚えている。非実在性の動物である。役に立たない。
……そうだろうか?
これだけYouTuberがポケカ動画をあげて、子供が夢中で、ポケモンに詳しいことが仕事になるというこの時代、もしかしてポケモンの名前を覚えている方が、たとえば将来就職して休憩時間に会話するサラリーマンの話題として、「使える」のではないだろうか?
夫の会社にはポケカのガチユーザーとポケモンの育成の数字に詳しいゲーマーなどがいて(複数いる)、夫はそこから情報を仕入れてくる。
去年の秋、ポケカのレギュレーションが変わったことは、我が家的には大事件だったのだが(子供が新レギュのカードしか使いたくないとか言うので)、その人に言わせれば「よくありますよ^^」とのことだった。そうか、よくあるのか。
そう言ってもらえただけで、何か安心できた。
うちの子は昆虫博士になれないが、ポケモンにそこそこ詳しいことは、オタクが多い業界に進むのならむしろ財産ではないかと最近思う。
●共通言語としての「ポケモン」
さて、子供が小学校に入学したときに、登校班なるものに入った。
一緒に登校して一緒に下校する仲間である。
同学年は三人だった。
三人グループというのは残酷なものである。どうしても2対1になる。大人ですら気を遣わないとならないというのに、子供は正直すぎる。完全に2対1の構図が出来る。子供の友達が遊びに来たとき、私は2対1になることは、とめられないが、1になった子が誰だろうと、その子が損をしすぎないように見張っている。ゲームとかでも2対1になって、一方的にボコられるケースがあるというか、デフォルトだ。
というわけで、三人グループとなった登校班はどういう内訳だったのか。
・Aくん……ポケモン(サン&ムーン)をやっている。そもそも親がDPからポケモンをやっている。
・Bちゃん…姉妹でポケモン(サン&ムーン)をやっている。ぬいぐるみも所持。
・うち……ポケモンはアニメだけ。しかも最近見始めたXY。
こうなると、ソルガレオとルナアーラを知らないというだけで、仲間はずれなのである。「17番道路いった?」「まだー」そもそも17番道路って何だ、という話である(ゲーム限定用語)。
自然と会話に加われない子供を見た親は、何をすべきだったのだろうか?
【対策】
・誕生日でも何でもないが、DSを買った。
・誕生日でも何でもないが、ポケモン(サン)を買った。
買ってやらせました…。
母親ですらゲーマーの当世帯は、ゲームに対するハードルがとても低い。ゲームのメリットもデメリットも知っているつもりだ。そもそも私は6歳のクリスマスにスーパーマリオブラザーズとファミコンを買って貰った。
……ゲーム悪くないですよ。反射神経とか鍛えられますし。私はゲーム三国志の洛陽の人口増加率が3%ということから、複利計算を学びました。100万人の洛陽は、30万人の他の都市よりも人口増えるの早いんです。人口増加はゲームをすごく有利にします。で、これをお金に置き換えると複利の素晴らしさが体感できるんです。
まあそれはそうとして、ポケモンをやらせたメリットは、
・友達との会話が出来るようになった(共通の話題)
・カタカナを爆速で覚えた
カタカナの方は意外な効果で、もともとひらがなもおぼつかなかったのに、これは嬉しかった。しかし子供はゲームの会話を読まないので、よく攻略に詰まって親が攻略情報を検索した。ダンジョン隅々まで探索しないの理解できないしストレスだし、しかもポケモン図鑑で全ポケモンを埋めようとしない。ゲーマーとして見守るのがストレスだったが好きにさせた。
閑話休題。うちの子は妖怪ウォッチとポケモンにはほぼ同時にはまったが、共通言語として明らかにポケモンの方が強かった。それを目撃した。
◆「妖怪ウォッチ」を分析する
子供は妖怪ウォッチも好きである。
妖怪ウォッチは、マーケティングがいいなあと思っている。
映画のリアルと二次元を融合させた新しい取り組みは好きだった。時事ネタを入れてくるし、パロを山ほど入れてくるし、親を笑わせることを意識しているのも見て取れた。
子供はにゃんぱち先生から金八先生を知った。金八先生の方が先だと言うことを理解させるのが大変だった。パロディやギャグが多かったが、子供がネタ元を知りたがって色々説明したりもした。
シャドウサイドに変わったときはびっくりしたが、むしろ子供は楽しんでいた。Y学園になって、よりマイルドになったというか、一般受け路線になったし、確実に欠点を修正してきている気配がする。ダメだと思ったらすぐ路線変更するフットワークの軽さがすごいと思う。
ただ……ただなー。二つのコンテンツを見比べて知ってしまった。親としてオタクとして、結論が出てしまった。
「王道」が強い、と。
◆結局、「格好いい」と「可愛い」が強い
妖怪ウォッチは、ギャグで茶化す作風である。これを二回見たいか、特に大人が二回見たいかと言われれば、そうではないのだ。
対して「サトシとピカチュウ」はどうだろうか?
ストーリーに感動がある。真面目に王道として「ポケモンは友達だ」と言うのである。で、バトルである。
妖怪ウォッチだってバトルなのだが、違う。説明が難しいが、ポケモンはバトルがデフォで、あの世界観の中で基本ポケモンバトルは「みんなが好きなエンタメ」なのである。
ポケモンと妖怪ウォッチ、設定に破綻がないのは妖怪ウォッチの方だと思う。ポケモンはなんというか、設定が子供向けで既に破綻している部分も多い。二十年?やってればもちろんそうなる。
されどポケモンなのである。
男の子は「格好いい」といい、女の子は「可愛い」という。そして大人になっても「ガブリアスは格好いい」し「ニンフィアは可愛い」のである。強い。ポケモンのかわいさかっこよさに、完全に妖怪ウォッチは敗北しているのである。
そして、ケータは普通の子で、サトシはヒーローだ。
私たちは、どうしても「ヒーロー」が好きなのだ。
●二次創作要素は?
今作のポケモンゲーム(ソード&シールド)を見て驚いた。アニメを見ているかのごときゲーム画面。XYのアニメでこんなシーン見た!というレベルである。
なにこれこんな世界を冒険できるのかよ羨ましい…!
と、1ゲーマーとして思った。
あとどうやら二次創作界隈でも今作は人気っぽい。ツイッターが定着したこと、おそらく今作のシナリオが良かったっぽいこと、かつてポケモン世代だった子達が二次創作の主力である「上手い・熟練層」に成長していること。このあたりが理由なのかな、と思っている。
たしかポケモンは昔二次創作界隈で事件が起こったので、公式に配慮した自重が必要だが、それにしたって今作は女性に人気である。まったくポケモンを知らない人も「最近(伏せ字)って伏せ字を見るのだけど、あの素敵な創作は何?」とか言っていた。ツイッターの波及力ヤバし、である。
妖怪ウォッチも女性受けするキャラはいるのだが、いかんせん世界観がギャグ調なのは、その点で弱点である。Y学園にも美形はいるが、ちょっと難しそうだ。
●海外受けのことはよく知らないが
この点は大して調べていないが、ポケモンGO騒動を知っているので、ポケモンの海外受けも相当良いだろう。スマブラにポケモンが入っているのも、さらに補強要素だろう。
でも「妖怪」は日本独自である。しかももじってあるしギャグだから、海外展開はとても難しいはず。ここでも「王道」かそうでないかが、分水嶺となっている。
◆「妖怪ウォッチ」に寄せて
やっぱり王道は強かった。私も子供につられてポケモンを全話観てpixiv辞典とかでポケモンというジャンルの経緯を調べた上で、ポケモンカードゲームのルールまで覚えてしまった。子供の対戦相手として。
ポケモンセンターでは変身が下手なメタモンのキーホルダーを買った。可愛いので普段使いのバッグにつけている。まあママ友に気づかれることはないだろう。
五年?でここまでポケモンを履修した。
親としては頑張ってると言えるが、オタクとしては普通のオタク活動だった。とにかくポケモンはコンテンツとして強い。それを知った。
ただ、「妖怪ウォッチ」についても強いと思っている。
面白く思うのは、「Y学園」の新キャラも「ああ、前作のあの妖怪がモチーフなのか」とすぐわかる点である。知らないキャラなのに、知っているような気になる。覚えやすい。
もしかしたら、妖怪ウォッチは、こんな風に、毎回初代の妖怪を核にして作風を全取っ替えしながら、長く続いていくのかもしれない。
かつてほど子供にウケてはいないが、それでもやっぱり妖怪ウォッチも強いのである。ポケモンに正面から「王道」で勝負を挑まず、ちゃんと外してきているのも、差別化として素晴らしいと思っている。
個人的に思い出深いのが、「花は咲く(アニメバージョン)」の逸話だ。
3.11のあの歌のアニメバージョンをNHKが作った。アニメ名作の桜関係のシーンを抜き出した特別版で、最高レートで録画済み。
その中に、妖怪ウォッチも含まれている。
どうやらそのシーンは描き下ろしだと聞いた。この歌のための完全新作である。妖怪ウォッチがコンテンツとしてここで書き下ろしを出せる。出す、ということに強さを感じる。
ただ……同歌38作品のラストはポケモンである(!?)。
ジャングル大帝、ヤマトあたりから始まる日本アニメの名作が連綿と続くそれに妖怪ウォッチが入っていることがすごいし、ラストを飾れるポケモンが本当に「強い」のだった。
オチ・・・勝とうと思うよりコラボした方がよさそう。
というか、二時間もかけて私はいったい何を書いているのだ。書きたかったので書いたから悔いはないのだが。さて、そろそろお風呂にいれなければ。
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