2024年4月19日 参議院本会議(民法改正案の趣旨説明など)

尾辻秀久議長
これより会議を開きます。この際、日程に追加して、民法等の一部を改正する法律案について提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、ご異議ございませんか? なし。ご異議ないと認めます。

小泉法務大臣
民法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨をご説明申し上げます。この法律案は、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や、子の養育のあり方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益を確保する観点から、民法等の一部を改正しようとするものであります。その要点は次の通りであります。
第1に、父母の離婚等に直面する子の利益を確保する観点から、民法等の一部を改正して、婚姻関係の有無に関わらず、父母が養育するにあたって遵守すべき責務を明確化することとしております。また、父母が離婚をする場合に、その双方を親権者と定めることができるようにする規定を設ける他、親権の行使について、父母間の意見が一致しない場合における調整のための裁判手続きを創設することとしております。
第2に養育費の履行を確保する観点から、民法等の一部を改正して養育費等の債権に一般先取特権を付与するとともに、父母が養育費の支払いについて合意することなく離婚した場合においても、父母の一方が他方に対して所定の額の養育費の支払いを請求することができる旨の規定を設けることとしております。
また、養育費等の債権に基づく民事執行について、1回の申し立てにより、複数の手続きを連続的に行うことができる旨の規定を設けるなど、裁判手続きの利便性を向上させるための規律を整備することとしております。
第3に安全安心な親子交流を実現する観点から、民法等の一部を改正して、父母が婚姻中に勉強する場合における親子交流に関する規定を設ける他、家事審判等の手続きにおいて裁判所が当事者に対し、親子交流の試行的実施を促すための規定を設けることとしております。
この他、民法の一部を改正して、養子縁組がされた場合の親権者に関する規定を整備する他、財産の分与の請求をすることができる期間を5年に伸長するとともに、その請求において、裁判所家庭裁判所が考慮すべき要素を具体化する規定を設けることとしております。
なお、この法律案については、衆議院において附則に一部修正が行われております。その内容は、第1に、政府は改正後の法律の円滑な施行のため、子の監護について必要な事項を定めることの重要性について、父母が理解と関心を深めることができるよう、必要な広報その他の啓発活動を行うものとすること。
第2に、政府は改正後の各法律の円滑な施行のため、改正後の各法律の規定の趣旨および内容について国民に周知を図るものとすること。
第3に、政府は、施行日までに、父母が協議上の離婚をする場合における親権者の定めが、父母の双方の審議に出たものであることを確認するための措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとすること。
第4に、政府は、この法律の施行後5年を目途として、改正後の各法律の施行の状況等を勘案し、父母の離婚後の子の養育に係る制度および支援策のあり方等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすることであります。以上がこの法律案の趣旨でございます。

尾辻議長
ただいまの趣旨説明に対する質疑の通告がございます。順次発言を許します。

石川大河議員(立憲民主党)
立憲民主党社民の石川大我です。私は会派を代表し、ただいま議題となりました。民法等の一部を改正する法律案について、小泉法務大臣に質問をいたします。
まず、本法律案は、法制審議会が2月15日に要綱を大事に答申し、わずか22日後に衆議院に提出されました。家族法制部会の採決の際には、委員22人のうち3人が反対、1人が棄権をいたしました。DV被害者やシングルマザーの支援をしている代表の声が切り捨てられたのです。
慎重派議員の訴えを受け、追加した付帯決議は内容が不十分だとして、2人が反対しました。慰霊続きの本案本法律案提出は討論検討が不十分であり、国民の理解を得られているとは言い難い状態です。
16日の衆議院本会議での採決においても、自民党議員から反対者が出るなど、審議が尽くされていないとの声が多く上がっているものと承知しています。
さて、同じく民法改正で対応すべき課題に選択的夫婦別姓制度があります。1996年2月に法制審議会がこれを認める要綱を答申したにもかかわらず、28年以上の長期にわたり、政府は法案を提出していません。
選択的夫婦別姓制度は民間の調査で6割から7割の国民が賛成し、経団連等財界からも要望が出ており、その必要性が叫ばれているにもかかわらずです。選択的夫婦別姓制度こそ、法案提出、そして審議を行うべきではないでしょうか?
法務大臣にお願いをいたします。本法律案を急ぎ提出した理由についてお聞かせください。また、選択的夫婦別姓制度について、法案提出を行わない理由について答弁ください。世論の賛成ということであれば、我が党を初め、野党が提出している婚姻平等法案についてもその成立が急務です。同性同士の婚姻については、共同通信社調査によると、世論の64%が賛成し、若い世代では81%が賛成をしています。
政府としても、同性婚を可能とする制度の創設を法制審議会に諮問し、政府が婚姻平等法案を提出すべきではないでしょうか?
法務大臣、同性婚については、国民のコンセンサスはこれ以上積み上がることがないほどに高まっています。世論が支持している同性婚を可能とする法律法案提出をしない議員を明快にお答えください。
憲法24条は、婚姻について、両性の合意のみに基づき成立をしています。その婚姻中の実共同親権というのが現行法です。しかし本法案では、裁判によって当事者の合意がなくても、共同親権とする非合意強制型共同親権を定めています。
憲法24条は違反する婚姻を許しませんが、意に反する共同親権は許されると解釈されるのでしょうか? 答弁を求めます。政府が国民世論を向いて法案提出をしているだろうかと感じざるを得ません。法務大臣はこの民法改正が、国民が真に求めている法案、家庭の中でDVや虐待に苦しんでいる人たちに希望を与える法案であると断言できるでしょうか? 明快な答弁を求めます。あるいは、統一教会を初めとする特定の宗教や支援団体の方向や家族に対する支配を固定化しようとする家父長制的な価値観を有する人々の方向ばかりを向いて政策立案や法案提出をしているのではないですか? 明確にお答えください。
今回の法改正にあたる立法事実について伺います。法務省の説明資料では、離婚後の子の養育のあり方の多様化を踏まえ、立法事実を説明し、答弁でも繰り返されています。しかし養育の多様化と親権の所在は関わりがなく、改正案は多様性の反映ではなく、合意の強制、制度を複雑化であって、多様性を目指しているものとは言い難いのではないでしょうか?大臣の見解をお答えください。議論すべきは、民法766条に基づき、離婚後の父母間の役割分担や協議のあり方について、どう合意し、定めるか。
子供に安定的な養育環境をどう確保するのか、そのための実親の責任はどうあるべきか、実親が離婚や別居した場合に、その責任の果たし方をどうするのかではないでしょうか?法務大臣の見解をお示しください。
親権の権利的側面は、あくまで第三者に対して、子供の権利利益を守るためのものです。全国1人親世帯等調査によれば、令和3年度の母子家庭、母子世帯は約120万世帯、父子世帯は約15万世帯です。圧倒的多数のケースで母親が親権を持ち、同居し養育をしています。離婚後共同親権の導入が、DV虐待加害者に拒否権、介入権、支配権を与えてしまう可能性があるのではないでしょうか? 法務大臣の見解を求めます。離婚の際および離婚後の夫婦関係について質問します。今回の改正では、親の責務等として、父母は婚姻関係の有無に関わらず、その子の利益のため、互いに人格を尊重し、協力しなければならないと明記されています。
婚姻関係継続中、あるいは離婚後も、子から見た両親が互いの人格を尊重し、協力することは、子の養育上望ましいことではありますが、一方その関係が険悪なものとなり、裁判等を経たり、今後においては、協力をし養育するということは極めて難しいことだと考えます。また、身体的なDVを伴う身体的な暴力を伴うDVや経済的精神的なDVなど、様々なDVの可能性がある場合、何がDVに当たるかを認識していない人が多数見られます。離婚後共同親権は、DV、虐待ケースは除外とされていますが、DV虐待ケースに当たるのかの判断は難しく、すり抜けて共同親権が適用されることが強く危惧されます。
いかにしてDV虐待ケースを除外するのか、その当事者にもわかりやすく具体的にお示しください。養育計画などの報酬は想定されているようですが、それよりも婚姻中にDVに気づくのが困難だという事例が多数報告されていますので、結婚前にDVを防ぐため、DVや虐待があった場合の告発、被害届相談等の対処できるようにする、結婚前のDV講習のような支援の制度化も、子の利益に資すると考えますが、ご見解を伺います。
次に、離婚後の1人親とその新しいパートナーによる子への虐待の関連性について質問します。離婚後の1人親やその新しいパートナーから子への虐待を共同親権で防ぐことができるとする議論があります。しかし、1人親、そのパートナーが虐待をしているケースには、そもそも父親がわからない、父親の所在が不明、音信不通であること、音信不通であることなどで、共同親権になり得ないケースがあります。また親権のない親側がDV虐待の加害者であるといったことで、親権者になり得なかったというケースが多く、共同親権の導入で、1人親そのパートナーが虐待をしているケースを解決できると言い切れるとは思えません。どのようにして離婚後共同親権の導入によって、虐待を確実に防止できるものと大臣はお考えでしょうか? 別居親に別居親に虐待を発見阻止できるスキルがあるのでしょうか? 共同親権を採用している諸外国では、虐待が防止されているでしょうか?
答弁をお願いします。既に民事局長が答弁した協議で合意できなくても、同居親の養育にやや不安があるとか、同居親と子との関係が良好でないという理由で、別居親が子の養育に関わった方がいいという場合という仮想ケースには、現実性がないと考えます。
円満ではなく離婚し、親権行使のあり方すら意見が対立する両親に対して、裁判所が命令で強制的に親権を共同行使させることが、子の利益になる場合とは、具体的にどういう場合でしょうか? 民事局長の説明は神経制限や親権変更すべき事案ではないでしょうか?
離婚後共同親権を導入することにより、子供への虐待を防ぐことができるという意見を見ますが、そのような立法事実はないはずです。何らかの調査や検討したのであればご答弁ください。また、共同親権を導入することによる虐待の増加の形成について、どのような調査をされたのか、法務大臣の答弁を求めます。
次に、監護権の無限ループ問題について伺います。離婚後、監護権者が指定されていない場合、または共同監護の場合の問題です。例えば、同居親である母親が子供の小学校でのプールの授業を欠席すると決めたとします。しかし、小学校に父親から電話が入り、共同し、監護権者としてプールに入れると判断したらどうなるのでしょうか?
改正案、民法824条の2第2項によると、父母ともに、日常の監護教育について、単独で親権行使できるとされていますから、このような日常的監護教育は、まさに両親がそれぞれ単独で親権行使をすることができます。そうだとすると、最新の判断が有効になるということであれば、その父親の電話の後に再度母親が電話をして、欠席をプールの欠席を依頼すれば、再度プールには入れないという対応を学校がしなければならないのでしょうか?
これでは様々な現場において混乱が起きることは必至です。まさに父母の監護権が無限ループしてしまいます。監護権者を指定し、同居親と子供の生活に混乱をきたさないように配慮や手当を行うべきではないでしょうか?法務大臣の所見をお伺いいたします。
本法律案には、共同親権を原則とするという文言はありませんが、一方で法務省の説明や、全体の規定ぶりからは、共同親権が原則として規定されているような印象を与えかねない感があります。この点、共同親権を原則とするとの言葉が多義的であるのか、共同親権とするかは、個別具体的な事情に即して判断するといった答弁が法務大臣からなされていますが、これをもって子の利益を確保することがしっかりなされるのか、不信感を抱かざるを得ません。
共同親権は原則でないと明確にご答弁いただいた上で、共同親権とするか単独親権とするかの明確な基準もお示しください。最後に離婚後の養育の多様化について質問します。冒頭でも触れましたが、法務省の説明資料では、子の養育のあり方の多様化を立法事実の一つとして挙げています。
まず、子の養育の多様化について、同性同士のカップルの子育ては、子の養育の多様化に含まれるのでしょうか? 法務大臣にお伺いをいたします。小泉法務大臣には先日4月11日の参議院法務委員会で紹介をいたしましたが、近年、同性カップルで子の養育をしている人たちが増えています。
現在の法制度では同性婚ができないため、カップル間で養子縁組を行い、子育てをしている同性カップルの事例を紹介しました。その2人は同じ学年にあたる年齢にも関わらず、養子縁組をしたことで、数ヶ月早く生まれたAさんが法的には親、Bさんが子供となり、そのBさんの実子を子育てしています。
同性カップルと子という関係が、法的には養父と養子とその子という状態になり、実態にそぐわない状況です。
また、異性と結婚して子を産んだ後、離婚して、同性パートナーと子育てをしている女性同士のカップルもいます。こうした方たちには法律の手当が届かず、不便な思いをしている当事者が多いのです。子の養育のあり方の多様化を言うのであれば、同性婚の法制化や、同性カップルが子育てしやすい法整備や環境をつくることにも、政府は早急に取り組むべきではないでしょうか?小泉法務大臣の明快な答弁を求めます。
最後に、先日の衆議院における我が党の討論で、道下議員から、立憲民主党は、この法案が少しでも良くなるよう、参議院審議でも尽力するとともに、政府、法務省並びに最高裁判所が、委員会審議における答弁、原案に対する修正案、付帯決議で示された方向性や意味合い、我々の心をきちんと理解して、今後の調停審判に臨み、適切に法制度を運用・措置するよう、監視機能を働かせていきます旨の発言がありました。
本法案がどれだけ多くの当事者に影響を与えるのか、真に当事者が求めているものであるのか。一度立ち止まって審議を行うべきであると確信します。本院の法務委員会における審議はさらに充実したものとなるよう強く求め、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

小泉法務大臣
石川大我議員にお答えを申し上げます。まず、本改正案の提出の経緯についてお尋ねがありました。離婚後の共同親権の可能性を含む親権制度のあり方の検討は、平成23年の民法改正の際に、衆議院および参議院の法務委員会において、全会一致で採決された付帯決議の中に盛り込まれたものであります。
その後、令和3年2月の法務大臣の諮問を受け、法制審議会において様々な角度から調査・審議が重ねられ、令和6年2月に要綱が採択され、法務大臣に答申されました。本改正案は、このような検討を経て提出されたものであり、急ぎ提出したとの御指摘は当たらないと考えます。(えー)。
次に、選択的夫婦別氏制度についてお尋ねがありました。選択的夫婦別氏制度については、直近の世論調査を見ても、国民の意見がわかれています。家族のあり方の根幹に関わる問題でもあり、最高裁判決でも国会で論ぜられ、判断されるべきであると指摘されています。
法案提出の是非は、国民各層の意見、国会における議論の動向を注視しながら検討する必要があると考えております。
次に、同性婚制度についてお尋ねがありました。同性婚制度の導入の問題は、我が国の家族のあり方の根幹に関わる問題であり、国民生活の基本に関わる家族法制やこれと相互に密接な関係にある、国民の家族間に関わる問題であると考えています。その導入については、議論を進むについて議論を進めるには、国民各層の意見を十分に踏まえる必要があると考えております。
次に離婚の際の意に反する共同親権は憲法24条に反しないかについてお尋ねがありました。現行民法において、夫婦の合意がなくても裁判上の離婚および親権者の指定が認められていることを踏まえると、本改正案において、当事者が合意がない当事者の合意がなくても、裁判所が子の利益を考慮して、父母の双方を親権者と定めることができることとしたことは、憲法24条に違反するものではないと考えております。
次に、本改正案と国民世論との関係等についてお尋ねがありました。本改正案は、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが、子の利益の観点から重要であるとの理念に基づくものです。また、本改正案は、子への虐待の恐れがある場合や、DV等を受けるおそれにより、親権の共同行使が困難となる場合には、裁判所は必ず単独親権と定めなければならないとするなど、DVや虐待のおそれがある事案にも配慮したものです。
本改正案については、衆議院での審議でこうした点を丁寧にご説明しご可決をいただいており、国民の理解も得られる内容となっていると考えておりますが、引き続きその趣旨内容が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知に努めてまいります。
次に、本法案が特定の団体等に向けられたものではないかについてお尋ねがありました。本改正案は、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育のあり方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益を確保する観点から、民法等の一部を改正しようとするものです。お尋ねのように特定の団体等に向けられたものではありません。
次に本改正案と子の養育のあり方の多様化との関係についてお尋ねがありました。離婚後、単独親権制度を採用した昭和22年当時は、共同生活を営まない父母が親権を共同して行うことは事実上不可能であると考えられていました。
しかしその後、離婚後の子の養育のあり方が多様化し、離婚後も父母双方が子の養育についての協力関係を維持することも可能であり、実際にそのような事例があるとの指摘もございます。本改正案は、こうした社会情勢の変化を背景とする子の養育の多様性を反映したものであります。
次に父母の離婚後の子の養育に関して議論すべき事項についてお尋ねがありました。ご指摘のように、離婚後の父母の役割分担等を含め、子の監護に関する事項が父母の協議や裁判所の手続きで適切に定められることや、離婚後の父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことは重要です。
これらに関する法制審議会の議論を踏まえ、本改正案には、離婚後の父母双方を親権者にできるようにする規定や監護の分掌に関する規定、父母の責務等に関する規定が設けられております。
次に、離婚後の父母双方を親権者とすることと、DV虐待の事案との関係についてお尋ねがありました。本改正案で、離婚後の父母双方を親権者にできることとしているのは、離婚後の父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことを可能とすることで、子の利益を確保しようとするものであります。その上で本改正案は、子への虐待のおそれがある場合やDV等を受けるおそれにより、親権の共同行使が困難となる場合には、裁判所が必ず単独親権と定めなければならないこととしています。
また、本改正案では、父母相互の人格尊重義務や協力義務に関する規定を新設するとともに、親権は子の利益のために行使しなければならないことを明らかにしています。このように本改正案は、別居の親権者に同居親による養育への不当な拒否権や介入権支配権を与えるものではありません。
次に、DV虐待がある事案に関する裁判所の判断についてお尋ねがありました。本改正案では、DV等のある事案では、裁判所は必ず父母の一方親権者と定めなければならないと規定しており、DV等の有無が適切に審査されることが重要であります。一般論として、DV等の主張がされた事案について、家庭裁判所では、当事者双方の主張・立証を踏まえて適切な審議が行われているものと承知しております。引き続き裁判所で適切な運用のあり方を検討されるものと承知しており、法務省としても、裁判所の取り組みに協力してまいりたいと思います。
次に結婚前のDV講習等についてお尋ねがありました。本改正案を円滑に施行し、子の利益を確保するためには、DV等を防止して、安全安心を確保することが重要です。法務省としては、こうした環境整備のため、円滑な施行に必要な環境整備等について、関係府省庁と連携して適切に検討してまいります。
次に、離婚後の父母双方を親権者とすることと、虐待防止との関係についてお尋ねがありました。離婚後の父母双方が親権を有することによって、同居親による児童虐待を防止できるかどうかについては、別居親の関与のあり方等を含め、個別具体的な事案によっても異なると考えられるため、一概にお答えすることは困難であります。諸外国でも離婚後の父母双方が親権を有することのみで、同居親による児童虐待を確実に防止できるようになった例があることは承知をしておりません。
次に裁判所が父母の双方を親権者と定める場合についてお尋ねがありました。一般論として、父母の間に感情的対立があったとしても、相互の人格を尊重し、子の利益のため、共同して親権を行使するために最低限のやり取りをすることが可能なケースなどでは、裁判所が父母の双方を親権者と定めることがありうると考えております。この他、ご指摘の民事局長が説明ご説明したケースでも同様に考えられ、同居親について親権制限や親権変更がされるべきかどうかは、個別具体的な事案によるものと考えております。
次に、児童虐待防止の観点から調査検討からの観点からの調査検討についてお尋ねがありました。離婚後の父母双方を親権者とすることの必要性については、様々なご意見があり、例えばパブリックコメントには1人親世帯では、同居親による児童虐待のリスクが高いとのご指摘や、別居別居親が離婚後も引き続き親権を有し子との交流を継続することが、そのリスクを低下させるとのご意見も寄せられました。
離婚後の父母双方が親権を有することで、同居親による児童虐待を防止できるかについては、個別具体的な事案により異なると考えられますが、法制審議会ではこのような意見等も参考にした上で議論がなされたと承知をしております。
次に離婚後の父母双方を親権者とすることによる虐待の増加の危険性についてお尋ねがありました。法制審議会における調査審議の過程では、離婚後の父母双方が親権者となることに対し、児童虐待がある事案への懸念が示され、その対応策も議論されたと承知しております。本改正案では虐待のおそれがある場合のように、父母双方親権者と定めることにより、子の利益を害すると認められるときは、裁判所は必ず単独親権を定めなければならないとするなど、虐待のおそれがある事案にも適切に対応できる内容となっています。
なお、別居親が親権を有することで、虐待の危険性が高まるといった調査結果があるとは承知しておりません。次に、監護者指定の必要性についてお尋ねがありました。お尋ねのようなケースは、婚姻中の父母について、現行法のもとでも生じ得ます。
本改正案では父母相互の協力義務等に関する規定を新設し、親権は子の利益のために行使しなければならないことを明らかにしており、お尋ねのような件数では、事案にお尋ねのようなケースは事案によっては、これらの義務に違反することがありうると考えています。いずれにせよ、監護者指定の必要性については、子の利益を優先して具体的な事情に即して判断すべきものと考えます。
次に、共同親権と単独親権の基準についてお尋ねがありました。共同親権を原則とするという表現は多義的に用いられているため、お尋ねについて一義的にお答えすることは困難であります。また、本改正案では、離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするかについて、子の利益のため、父母と子供の関係、父と母の関係、その他一切の事情を考慮しなければならないと定めており、個別の事案における具体的な事情に即して、子の利益の観点から判断すべきこととなります。
次に、同性カップルによる子育てについてお尋ねがありました。子の養育のあり方について、様々な形態があり得ることは承知をしております。最も本改正案は、父母の離婚に直面する子の利益を確保するためには、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが重要であるとの観点から、民法等の規定を見直すものであります。
最後に同性婚の法制化を含め、同性カップルが子育てしやすい環境の整備についてお尋ねがありました。同性婚の法制化を含むこれらの問題は、我が国の家族のあり方の根幹に関わる問題であり、国民各層の意見を十分に踏まえる必要があると考えております。

清水貴之議員(日本維新の会)
日本維新の会の清水貴之です。教育無償化を実現する会との統一会派を代表し民法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
今回の民法改正は、夫婦の離婚後に子の親権について現行では父または母のどちらかの単独親権とされているところを父と母がともに親権を担う共同親権を選択できるようにするものです。
両性の合意によって成立した婚姻は両性の合意によって解消できますが、母と子、父と子の親子の縁は、誰も切り離すことはできません。にもかかわらず、現行の原則単独親権の制度のもとで離婚後には親が我が子に会えないという悲劇が繰り返され、親権獲得を巡る父と母との間での激しい争いも後を絶たない状況です。まずは、原則共同親権の必要性について法務大臣、どうお考えますでしょうか?
改正案によって共同親権が選択できるようになりますが、これまで親権獲得を巡る元夫婦間の争いが共同か単独かの争いに変わるだけではないかという懸念も残されます。子の立場からすれば、両親が争う悲しみが消えることにはなりません。共同親権の選択制によって元夫婦間の争いはどのように減るのか、法務大臣の見解と見通しをお答えください。
また、共同親権が原則であることを明確にすると、親権争いの苛烈化を防ぐことができるできるとの指摘もありますが、法務大臣の認識をお示しください。
改正案の第817条の12では、親の責務等として、父母は子の心身の健全な発達を図るためその子の人格を尊重するとともにその子の年齢および発達の程度に配慮してその子を養育しなければならないと規定しています。
しかしこの条文では、親の責務を担うのは父と母がともに担うのか、それとも父または母のどちらかが担うのかはっきりしません。民法の中でも重要な規定が多義的であるのはふさわしくないと考えます。親の責務は、父母がともに担うべきことが原則であるということで間違いないでしょうか? 法務大臣の答弁を求めます。
離婚後も子の最善の利益を実現するためには、父母の間で養育費について取り決め、その支払いを確実に行うことが必要です。しかし現状では、実際に養育費を受け取っているのは母子家庭では28.1%、父子家庭では8.7%にすぎません。
そもそもの取り決めができた家庭も子がいる離婚家庭の半分にも満たない状況です。養育費の取り決め率や履行率の低い原因は何か、法務大臣の見解を求めます。
もちろん我が子を虐待したり、家族に暴力を振るうような者には子養育を任せることはできず、親権の停止もしくは執行は必要な措置です共同親権に対しての不安の声の中でも多くを占めるのは、DVや児童虐待の問題がある場合、共同親権によって離婚後も、そうした問題が持ち越され、再被害が生じる恐れがあるというものです。
DVや児童虐待は大変深刻な問題です。暴力加害は家庭内であってもれっきとした犯罪であり、警察が毅然として対応すべきと考えますがDV、児童虐待の防止、加害者への取り締まりに関する警察の対応の強化の可能性についての法務大臣の認識を伺います。
また、DV被害の防止や軽減のために、緊急避難や相談の取り組みを抜本的に充実させる必要があると思いますが、併せて法務大臣の答弁を求めます。
DVが認定された親は親権を喪失することになり、しかも、一度失った親権を回復することは至難の技です。共同親権の選択や監護者の指定に当たっては、DVの有無が大きな問題になります。DVの認定については、客観的事実に基づくなど慎重な検証が必要だと思いますが、法務大臣の見解をお答えください。
衆議院での質疑の中で小泉法務大臣は、「DVや虐待の認定について、父母の一方が暴力等を受ける恐れや、子の心身に害悪を及ぼすおそれの有無を基準として判断する」と答弁しています。大臣はDVの立証を必須の要件とするものではないとも答えていますが、立証もないまま、DV等の恐れを同様に判断するのか、法務大臣の具体的な答弁を求めます。
DV認定の難しさは、家庭内といういわば密室の中での行為であることと、DVとは何かという、そもそもの定義が曖昧であることからくるものと考えます。
内閣府男女共同参画局のホームページへは「ドメスティックバイオレンスの用語については、明確な定義はありません」とした上で「日本では配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあったものから振るわれる暴力という意味で使用されることが多いです」と説明しています。
その配偶者からの暴力とは何を指すのかについては、配偶者からの暴力の防止および被害者の保護等に関する法律、いわゆるDV防止法において心身に対する暴力のみならず心身に有害な影響を及ぼす言動も含まれています。
今回の民法改正の議論の中では、さらに経済的DVも含まれると言明されています。このようにDVの定義が広範で曖昧なものであると、国民の間でのDVに対する認識がバラバラになり、夫婦間で何が暴力に当たるのかの認識も一致せず、互いの人格を尊重し合うという基本も、かえっておろそかになるのではないかと懸念をします。
DV防止を啓発する観点からも、DVとは何かについてさらに厳格な提示、定義づけを行うべきではありませんか。加藤大臣の見解をお聞きします。
また、DV防止法には、その前文に配偶者からの暴力の被害者は多くの場合、女性であるとの記述があり全国自治体では女性相談員や女性相談支援センターという用語が使われている自治体も多いかと思います。
しかし、DV被害者には男性も含まれます。加藤大臣、国の方から男性DV被害者が使いにくい用語の変更を求めてはいかがでしょうか?
さらにDVの被害者は女性というDV防止法の前提は、親権を巡る裁判での裁判所での調停の際に裁判官の判断に予断を持ち込むことになっていないか。法務大臣の認識をお示しください。
最後に、本改正案については、今なお様々な立場から激しい論争が続けられています。共同親権に反対する立場からは、改正案そのものを廃案にする主張がなされ、共同親権を推進する立場からも、本改正案では、実質的に何も変わらないのではないかという懸念の声も上がっています。更なる議論の継続を求める声もあります。
しかし一方では、両親から愛情を持って育まれる当然の権利を奪われた子供たちが大勢いることを思えば、いつまでも立ち止まっているわけにはいきません。我が会派は、衆議院で自民、公明、立憲民主党との4党協議において附則の修正を提案し、その中で5年をめどにした制度の見直しが合意されました。共同親権の仕組みをまずは開始し、その運用を通じて制度の不備や改善すべき点を洗い出す。
今後の更なる法の見直しについては、躊躇なく実施すべきと思いますが、法務大臣の答弁を求めます。
日本維新の会と教育無償化を実現する会は、結婚離婚の自由を尊重するとともに、親の離婚によって生じる子の悲しみが最小となり、子の最善の利益が最大化するような親権制度となるよう、この参議院での審議においても全力を尽くしていきたいと思います。以上で質問あります。ご清聴ありがとうございました。

小泉法務大臣
清水貴之議員にお答えを申し上げます。まず原則共同親権の必要性についてお尋ねがありました。原則共同親権という表現は多義的に用いられているため、お尋ねについて一義的にお答えすることは困難でありますが、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、責任を果たすことが、子の利益の観点から重要であると考えております。
次に、離婚後の父母の双方を親権者にできる仕組みが、父母間の争いに与える影響についてお尋ねがありました。本改正案では、離婚後の父母双方を親権者にできることとし、また、親権や婚姻関係の有無に関わらず、父母は子の利益のため、互いに人格を尊重し、協力しなければならないとしています。父母間の争いの理由は様々であり、本改正案によって、父母間の争いがどのように減るのかお答えすることは困難ですが、本改正案の趣旨、内容が正しく理解され、子の利益の観点から、父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任が果たされることを期待しております。
次に、共同親権が原則であることを明確にすること等についてお尋ねがありました。先ほどお答え申し上げた通り、共同親権が原則という表現は多義的に用いられているため、お尋ねについて一義的にお答えすることは困難です。
その上で本改正案は父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが、子の利益の観点から重要であるとの理念に基づくものであり、このような本改正案の趣旨、内容が正しく理解されることを期待しております。
次に本改正案の親の責務任に関する規定についてお尋ねがありました。本改正案では、親権や婚姻関係の有無に関わらず、父母が責務をそれぞれべきことを明確化しており、そのことは文言上明らかであると考えております。
次に養育費の取り決め率や履行率が低い原因についてお尋ねがありました。養育費の取り決めや履行がされない理由については、様々な事情が関連しており、一概にお答えすることは困難でありますが、その上で申し上げれば、その取り決めがなされない理由については、平成3年度全国1人親世帯等調査によれば、「相手と関わりたくない、相手に支払う意思がないと思った。相手に支払う能力がないと思った」などの回答があったと承知しております。
また、養育費の支払いをしない理由については、法務省が令和2年度に実施した調査によれば、「支払いたくなかったから支払うお金がなかったから」などの回答があったと承知しております。
次に、DV等に関する警察の対応強化についてお尋ねがありました。DVや虐待は被害者に深刻な精神的肉体的苦痛をもたらし、その尊厳を傷つけるものであり、決してあってはなりません。DV等に関する警察の対応の強化については、法務省の所管外の事項であるため、お答えお答えすることは困難でありますが、警察においては、適切に捜査を行うとともに、必要に応じて、被害者の安全確保のための措置を講じており、今後も被害者の安全確保を最優先とした適切な措置が講じられるものと承知をしております。
次に、DV被害者への支援策についてお尋ねがありました。本改正案を円滑に施行し、子の利益を確保するためには、DV等を防止して、安全安心を確保することが重要です。法務省としては、本改正案が成立した際には、その円滑な施行に必要な環境整備について、関係府省庁等としっかり連携して取り組んでまいります。
次に、DVの認定のあり方についてお尋ねがありました。DVの有無は、個別の事案における具体的な事情を踏まえて、裁判所で適切に判断されるべき事項であるため、法務大臣として具体的にお答えすることは差し控えますが、その上で一般論として申し上げれば、家庭裁判所では当事者双方の主張立証を踏まえて適切な審議が行われていると承知しており、今後も引き続き適切に対応されるものと考えております。
次に、DV等のおそれの判断のあり方についてお尋ねがありました。お尋ねのDV等のおそれについては、裁判所で個別具体的な事案において、過去にDVや虐待があったことを裏付けるような客観的な証拠の有無に限らず、それを基礎づける方向の事実と、それを否定する方向の事実とが総合的に考慮されて判断されることとなると考えております。
次に、DVに関する調停における、判断等についてお尋ねがありました。家庭裁判所の調停手続きは公平中立な立場から、当事者双方の言い分を丁寧に聴取しつつ、手続きが進められているものと認識しております。また、審判手続きも当事者の一方の主張立証に対し、他方に反論反証の機会を保障し、公平中立な立場から資料に基づく適切な認定判断が行われているものと認識しております。ご指摘のような懸念は当たらないものと考えております。
最後に家族法制の更なる見直しについてお尋ねがありました。本改正案については、衆議院で、付則に施行後5年を目途とする検討条項が追加されました。この検討情報の情報に基づき適切に対応してまいります。

加藤鮎子国務大臣
清水隆行議員のご質問にお答えいたします。DVの定義についてお尋ねがありました。配偶者防止、失礼しました、配偶者暴力防止法においては、配偶者からの暴力を、配偶者からの身体に対する不法な攻撃であって、生命または身体に危害を及ぼす暴力、またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動と定義し、こうした暴力の被害に遭った方への相談支援等の体制や国民の理解を得るための教育啓発などを定めております。
配偶者からの暴力は外部からの発見が困難で、周囲も気づかないうちにエスカレートし、被害が深刻化しやすいという特性があります。国民への啓発につきましては、配偶者暴力防止法に基づき、ただいま申し上げた特性も十分踏まえ、取り組む必要があると考えています。
相談支援機関の補償等についてお尋ねがありました。配偶者暴力防止法では、被害発生や被害後の影響についての性別による状況等を踏まえ、都道府県が設置する女性相談支援センターに配偶者暴力相談支援センターの機能を担わせることや、女性相談支援員が被害者の相談に応じ、必要な援助ができることなどを定めています。ご指摘の地方公共団体が使う用語もこれによるものと存じます。
その一方で、同法における被害者は女性に限られるわけではなく、また、配偶者暴力相談支援センターについても、女性相談支援センターに限られておらず、様々な施設がその機能を担っています。男性を含め、多様な被害者が、ためらうことなく相談でき、必要な支援を受けられる環境の整備は重要とか認識しており、引き続きそのような観点からも、相談支援体制の充実に努めてまいります。

川合孝典議員(国民民主党)
国民民主党、新緑風会の川合孝典です。会派を代表して、民法等の一部を改正する法律案について、法務大臣にご質問します。
男女雇用機会均等法の成立から39年が経過しました。時を同じくして、男女共同参画の取り組みも始まり、これまで様々な法整備が行われてきました。かつて社会問題となっていた結婚を機に退職することによる女性労働力の急激な減少、いわゆるM字カーブも、欧米諸国が注目するほどに解消が進んでいます。国際結婚も現在では毎年およそ20組に1組となっており、日本人の家族観や結婚観も大きく変化しています。今後更なる外国人との共生社会の進展が見通される中、本案は提出されました。
本法案を巡っては、反対派、賛成派で鋭く意見が対立しています。それぞれの深刻なDV被害や子供の連れ去りといった深刻な事情を抱えており、法改正に合わせて双方の事情に寄り添った具体的な対策を速やかに講じる必要があることはいうまでもありません。
その上であえて申し上げますが、私は親の権利を示す親権のあり方を通じて、子の権利を論じることに違和感を持っています。
なぜならいかなる事情による離婚であっても、両親の事情による離婚であることに変わりはなく、子供には一切の権利が責任がないからです。したがって私は子供の権利という点に主眼を置いて質問します。まず、子の利益の定義について質問します。
私は子の利益を真に最優先させるのであれば、離婚時の親権の所在を云々する前、子の監護の方法や養育費負担のあり方など、子の権利保護についての議論が最優先されてしかるべきと考えます。離婚後の父母による子育てのあり方を法制化した諸外国の事例を見ると、アメリカではほぼ全ての州で共同監護を規定しており、離婚離婚する父母は養育計画書を裁判所に提出した上で、その取り決めを守る義務を負うこととされています。
また、ドイツでは離婚後は共同親権が原則とする一方、DV虐待をする親の親権の剥奪や養育費の不払いへの刑事罰の適用など厳格な制度が採用されています。こうした諸外国の制度が日本社会に馴染むかどうかは慎重に検討検証する必要はあるものの、いずれの国でも明確に子の権利に主眼を置いた仕組みを採用しています。
今回の民法改正法案でも、条文案の各所に子の権利という文言が見られます。現行民法第766条でも、親子の交流に関して、子の利益を最優先して考慮することが規定されていますが、現実には、司法は親子の断絶や交流制限を容認しています。
その一方で、父母以外の親族と子との交流を制度化する民法第766条の2については、第三者に申し立て権を付与することへの懸念の声も寄せられています。こうした意見を踏まえると、法改正後は、子の利益に対する地方の恣意的解釈が介在しない運用が不可欠となります。そこで質問ですが、今次法改正以降、子の利益とは何を指すのか、その定義を含めて明確な説明を求めます。また、子の利益に対する司法の恣意的解釈を防ぐためには、子の権利の要件を明文化すべきと考えますがこの点についても認識をお答えください。
次に、離婚時に共同養育計画書を作成することの必要性についての認識を伺います。現在の日本の養育費受領率は30%弱であることから、これまで離婚後の養育費の未払い問題が指摘されています。しかしそもそも離婚時の養育費と面会交流の取り決め率自体がそれぞれ46.7%、30.3%と低水準にとどまっています。一方、離婚時に養育費や面会交流に関する取り決めをしっかり行っている世帯での養育費受領率は、取り決めを行っていない世帯を大幅に上回っています。
これらの事実からは、離婚時に養育費負担や面会交流を含む共同養育計画作成を義務化することが、子の利益を保護する上で有用有効だと考えられますが、この点についてのご認識を伺います。DV被害者を守るための体制を充実させることの必要性についての認識を変えます。
共同親権の導入に反対しておられる方々の大きな懸念の一つが、DVからの避難者の安全を確保するための具体的な対応策が見えないことにあります。フランス民法典では、暴力の被害者の保護、女性に対する暴力の予防、暴力の抑止という三つの観点から、家族事件裁判官が保護命令を発することが規定されており、この保護命令に従わなければ、拘禁刑や罰金刑を科すことで、保護命令の実効性を担保する法整備を行っています。
日本においても、警察や配偶者暴力相談支援センターなどがDV被害者の救済などに関する業務を行っている他、DV被害者が一時的に身を隠せる施設として、民間団体がDVシェルターを設置していますが、裁判所の体制面、民間に依存した避難体制など、DV被害者の支援体制が極めて脆弱です。
今後、国費を通して、DVシェルターを整備することを初めとしたDV被害者の保護支援体制を速やかに整備充実させる必要があるものと考えますが、この点についてご認識を伺います。
次に、単独親権の決定に当たっての具体的な判断基準について説明を求めます。単独親権者となる判断基準には、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力、その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無とあります。しかし、夫婦関係が破綻している場合、そもそも顔を合わせること自体が心身へのストレスと考えられることから、おそれという曖昧な判断基準のままでは一方当事者の主張のみが採用される可能性が否定できないものと考えます。そこで、単独親権者決定にあたっての具体的な判断基準とは何かの説明を求めます。
次に、共同親権が認定された後に別途監護者を選定できることとする理由について伺います。今回の法案では、共同親権となる別途監護者を選定できる運用となっていますが、この場合、監護者は身上監護権を単独で行使することとなります。面会交流すら十分に実施されていないケースでは、むしろ新紛争が深刻化する恐れがあることを指摘する声もあります。一般的な共同親権導入国では、親権と監護権を分ける運用にはなっていないものと認識していますが、本法案で、親権と監護権等を切り分けた理由をご説明ください。あわせて子を監護をすべき者の指定の選定にあたっての具体的な選定要件は何かをご説明ください。
また監護すべき者の指定に当たっての選定要件については、当事者が納得できる裁定を裁判所が行う上で明文化すべきと考えますが、選定要件の明文化の必要性についてのご認識を伺います。
次に、子の監護の分掌の割合に関するガイドラインを作成する必要性についての認識を伺います。
一般的に共同親権が採用されている国では、児童心理研究などのエビデンスに基づいて養育スケジュールを作成し、これに基づき共同監護のスケジュールを決定します。日本でも監護の分掌を導入するにあたり、公平性を担保しつつ、監護の分掌が決められるよう、児童心理研究などのエビデンスに基づくガイドラインを策定すべきと考えますが、この点についてのご見解を求めます。
最後に、養育費の請求に関する裁判や調停によって生じる費用負担のあり方について質問します。日本では弁護士に依頼して、養育費請求の裁判や調停を行った場合、その成功報酬は取り決め金額の10から20%程度とされていますが、離婚などの家事事件での成功報酬は公序良俗に反するという理由で制限または禁止している国が少なくありません。
日本でも今年から、こども家庭庁が養育費に関する弁護士報酬の一部を補助することとしましたが、それでも養育費という子供の権利の一部を成功報酬の名のもとに第三者が取ることに国がお墨付きを与えている事実に変わりはありません。
養育費請求に関する成功報酬については、禁止も視野に見直す必要があるものと考えますが、ご見解を伺い、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

小泉法務大臣
川合孝典議員にお答えを申し上げます。まず、子の利益の維持についてお尋ねがありました。一般論としてはその子の人格が尊重され、その子の年齢および発達の程度に配慮されて養育され、心身の健全な発達が図られることが、子の利益であると考えております。また、父母の別居や離婚後においても、父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが、子の利益にとって重要であると認識しております。次に子の利益の要件の明文化についてお尋ねがありました。何が具体的に子の利益であるかは、それぞれの子が置かれた状況によっても異なり、その要件を一時的に規定することは困難であります。
他方で、本改正案は、子の養育に関する親の責務等に関する規定を新設しており、これは父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益にとって重要であるとの理念に基づくものであります。
本改正案が成立した際には、本改正案の趣旨が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知広報に努めてまいりたいと思います。
次に養育計画の作成の義務化についてお尋ねがありました。離婚時に父母が子の養育に関する事項を取り決めることは、子の利益にとって望ましく、養育計画の作成の促進は重要な課題であります。他方で、養育計画の作成を必須とすることは、結果的に離婚が困難となる事案を生じさせ、かえって子の利益に反するとの懸念もございます。
そこで本改正案では、養育計画の作成を必須とはしておりませんが、離婚時に父母が協議により養育計画を作成できることを明らかにするため、離婚時に父母の協議により定める事項として、監護の分掌を追加しています。
次に、DV被害者への支援策についてお尋ねがありました。本改正案を円滑に施行し、子の利益を確保するためには、DV、DV等を防止して、安全安心を確保することが重要です。法務省としては、本法案が成立した際には、その円滑な施行に必要な環境整備について、DV等の防止も含め、関係府省庁等としっかりと連携して取り組んでまいりたいと考えます。
次に父母の離婚後の親権者の判断基準についてお尋ねがありました。本改正案は虐待の恐れがある場合や、DV等を受けるおそれにより親権の共同行使が困難となる場合には、裁判所が必ず単独親権と定めなければならないこととしておりますが、この恐れについては、裁判所で具体的個別的な個別的具体的な事案において、当事者双方の主張立証も踏まえ、それを基礎づける方向の事実と、それを否定する方向の事実等が総合的に考慮されて適切に判断されるものと考えております。
次に、監護者の定めについてお尋ねがありました。離婚した父母の双方を親権者と定めた場合に、父母が子の身上監護をどのように分担するかは、それぞれの事情によるより異なると考えられます。そのため、具体的な事情に関わらず、監護者の定めを一律に禁止することは相当ではなく、本改正案では、親権者の定めとは別に、監護者の定めをすることができることとしております。
次に監護者の定めの具体的な要件についてお尋ねがありました。どのような場合に監護者の定めが必要となるかとは、それぞれの事情によって異なるため、一概にお答えすることは困難ですが、現行民法では、監護者の定めを判断するに当たっては、子の利益を最も優先して考慮しなければならないとされており、このことは本改正案においても同様でございます。
次に監護者の定めの要件の明文化の必要性についてお尋ねがありました。先ほどお答え申し上げました通り、現行民法でも、監護者の定めの判断に当たって、子の利益を最も優先して考慮しなければならないことが明文で規定されております。
その上で具体的にどのような場合に、監護者の定めが必要となるか等は、それぞれの事情によって異なるため、その要件を一時的に規定することは困難であると考えています。法務省としては、民法の規定等について適切かつ十分な周知広報に努めてまいります。
次に監護の分掌のガイドラインの必要性についてお尋ねがありました。監護の分掌の定めの具体的な内容としては、例えば子の監護を担当する機関を父と母で分担したり、教育に関する事項など介護に関する事項の一部を父母の一方に委ねた、といったものがあり得ます。法務省では心理学の専門家の協力も得て、養育計画の作成に関する調査研究の実施を検討しており、こうした取り組みも通じて、具体的な事例を示してまいりたいと考えております。
最後に弁護士報酬のあり方についてお尋ねがありました。養育費の請求を弁護士に依頼した場合の報酬額は、弁護士と依頼者との間の個別の契約で合意されるものと理解しています。その契約の内容の当否については、個別の事案における具体的な事情に即して判断されるべきものと考えております。

仁比そうへい議員(共産党)
日本共産党の仁比そうへいです。会派を代表して、民法改定案について質問いたします。離婚後共同親権を導入しようとする本法案は、親子関係と家族のあり方に関する戦後民法の根本に関わる改正であるにもかかわらず、国民的合意のないまま、まるで波風が激しくなる前にと言わんばかりに、衆議院採決本院に送付されました。
とりわけDVや虐待から逃れ、安心安全な生活を取り戻そうとする方々や、行政、弁護士の支援に対し、裁判所の保護命令が出されたもの以外は虚偽DVなどと一律に非難する質問まで行われましたが、法務大臣、そうした非難は誤りではありませんか。
多くの1人親家族から悲鳴のような怒りの声が噴き上がっています。衆議院法務委員会採決の朝、10万人に達したストック共同親権オンライン署名は1週間で23万筆を超えようとしています。
ある方は、裁判の尋問に立ち、震えながら喋るとき、一人きりで怖かった。でも思った。私は1人じゃない。私達だ。SNSに投稿されました。これまで沈黙を強いられてきた多くの方々が繋がり、上げてきた声を正面から受けとめ、丁寧な審議が尽くされなければなりません。
法務大臣、広がるこうした声をどう受け止めますか? 離婚後共同親権の導入がどのように子の利益の実現になるのか。伺います。夫婦関係は破綻しても、父母間に子供の養育だけは協力して責任を果たそうとする関係性があり、親権の共同行使が真摯に合意され、それが子の利益にかなう場合には、離婚後も共同親権とした上で、諸々の規律を定めることがあり得ます。
しかし、本法案は、そうした合意がない、できない父母間にも、裁判所が共同親権を定めるとするものです。法務省は父母の合意がないことのみをもって双方を親権者とすることを一律に許さないとするのは、かえって子の利益に反する結果となりかねない。子の利益のため必要なケースがありうるといいますがそれが一体具体的にどのような場合、い累計なのか、今なお示しておりません。逆に、法制審の民法学者から共同親権が望ましい場合と単独親権の方が良い場合の基準や運用について十分な議論ができなかったとの発言がなされたのは驚くべきことです。
改正法案によって新たな人権侵害の危険があってはならないのは当然です。父母間に真摯な合意がないのに親権の共同行使を求めれば、別居親による干渉や支配を復活継続する仕組み仕掛けとして使われ、結果、子の権利は福祉が損なわれてしまう危険は否定できないのではありませんか。同居人の不適切養育に対しては、現行法下でも児童相談所を始めとした支援が取り組まれ、民法上も、親権者の変更や親権の停止喪失などの対応が可能です。あえて非合意型共同親権を導入することが、子の利益に必要だとする立法事実を法務大臣にお示しください。
法務大臣は私の質問に、両親が離婚をせずに、その過程の中で子供が育つ、これが一番子供の利益だと言い、離婚後においても、父母双方が適切な形で子供の養育に関わり、責任を果たすことによって、子供の利益を守ることができると述べましたが、それは大臣の家族観であって、立法事実ではありません。関係が破綻した父母の葛藤に晒されることこそ、子の利益を害するのではありませんか。日本乳幼児精神保健学会は声明で、「子供は離婚により傷つくと言われることがあるが、正確ではない。離婚に至るまでの面前DVによる心理的虐待など、父母の諍いに伴う親子関係、離婚後の生活環境や親子関係の変化などの複数のストレス要因の絡み合いにより身体的心理的社会的に大きなダメージを受けるのであり、子供の成長発達にとって最も重要なのは、安全安心を与えてくれる主たる養育者との安定した関係と環境が守られること」と強調して、離婚後共同親権のリスクを厳しく指摘していますが、こども政策担当大臣、法務大臣、どのように受け止めますか。
さらに、日本乳幼児精神保健学会は、家庭裁判所で2012年頃から鮮明にあった原則面会交流と呼ばれる運用に対し、臨床現場では、家庭裁判所で面会交流を決められた子供たちが、面会交流を嫌悪し、面会を巡る別居親との紛争にさらされ、あるいは過去のトラウマからの回復が進まず、全身で苦痛を訴え、不適応を起こして、健康な発達を害されている事例が増えていると厳しく指摘しましたが、法務大臣、どのように受け止めますか。
別居親との面会は原則良いこととし、子供が別居親を拒否すると根掘り葉掘り拒否の理由を尋ねたり、どういう条件なら会っても良いかという聞き方で、直接の面会交流が実施されるように誘導し、あるいは子供が別居親を拒否するのは、同居親の刷り込みであると評価して子供の意思を尊重しない扱いは子供の意思を否定することに等しい。それは逆に、親子関係の改善を困難にし、大人不信、社会不信を募らせるリスクを持つとの指摘はその通りだと思います。法務省は、最高裁判所とともに、この間の面会交流を含む子の監護を巡る家庭裁判所の運用の実態について検証すべきではありませんか。本改正に当たっても、子供の人格を尊重するというだけでなく、子供の権利条約、子供基本法の精神に立ち、子供の意見表明権を明記すべきです。答弁を求めます。
子供の意思に反する強制は、子供を傷つけることになります。戦前の家制度を引きずるかのように、親の子に対する支配権という認識が色濃く残る親権という用語・概念を改め、子供を主体に親子関係を捉え直し、子供が安心安全に暮らせるようにするための親の責務であり、社会による子供の権利と福祉の保障であることを明確にするときです。本大臣どう取り組むのですか。
法案では、既に離婚し単独親権となっている親子に対して、別居親が共同親権への親権者変更を申し立て、合意できないのに、裁判所が共同親権を定めることもありえ、その後、約定の養育費が払われないことがありうることになります。森山文部科学大臣は、高校無償化の就学支援金について、共同親権で2人の親であれば合算親権者2人分2名分の収入に基づいて判定を行うということに当然になると述べましたが、共同親権になって、高収入の別居親が授業料養育費を払わないと無償でなくなるのは、子の利益に反することは明白ではありませんか。法務大臣、親の資力・収入などが要件となっている各省庁の主な支援策は、児童扶養手当や日本財団の真心奨学金など、昨日までの調べで少なくとも28件あります。親の同意や関与が規定されている法令も多数に上っています。離婚後共同親権の導入が、これらにどのような影響を及ぼすか、関係省庁ときちんと協議し、当該政策の基準と運用、課題と検討の見通しを国民が一覧できるよう、速やかに示すべきです。
監護する者が誰かなどの混乱をなくすためにも、少なくとも非合意型で裁判所が共同親権を定めるというなら、監護者の指定を必須とすべきではありませんか。
さらに、省庁横断的な連携協力体制の構築について周囲では、与党の質問に対し、構築に向けて具体的な検討を進めてまいりたいと、逃げ道を残す答弁にとどまっていますが、一体どう進めるのですか。養育費の国による立替払いと求償制度も具体的速やかに検討すべきだと考えますが、いかがですか。法務大臣の明確な答弁を求め、質問を終わります。

小泉法務大臣
仁比そうへい議員にお答えを申し上げます。まず、DVの主張に対する非難についてお尋ねがありました。DVの主張の当否は、個別の事案における具体的な事情に即して判断されるべきものであり、保護命令が発令されていないことのみをもって、DVの主張を虚偽と評価することはできないと考えております。
次に、本改正案に関する様々なお声についてお尋ねがありました。本改正案については、改正に慎重なお立場からも様々なご意見があることは承知をしております。真摯に受け止めるべきものと考えております。今後の国会審議においても、国民に不安が広がることなく、本改正案の趣旨、内容について正しく理解されるよう、丁寧に説明をしてまいります。
次に、別居親による干渉や支配の危険性についてお尋ねがありました。本改正案では離婚後の父母双方を親権者にできることとしているのは本改正案で、離婚後の父母双方を親権者にできることとしているのは、離婚後の父母が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことを可能とすることで、子の利益を確保しようとするものであります。
また、本改正案では父母相互の協力義務等に関する規定を新設し、親権は子の利益のために行使しなければならないことを明らかにしております。このように本改正案は、別居の親権者に同居親による養育への不当な干渉や支配を容認するものではありません。
次に父母の合意がない場合に、離婚後の父母双方を親権者とする必要性についてお尋ねがありました。父母の協議が整わない理由には様々なものが考えられるため、合意がないことのみをもって、父母双方を親権者とすることを一律に許さないのは、かえって子の利益に反する結果となりかねません。
そこで、本改正案では、裁判所が親子の関係、父母の関係その他一切の事情を考慮して、実質的総合的に判断すべきこととしております。どのような場合に父母双方を親権者とすることが、子の利益に資するかについては一概にお答えすることが困難でありますが、例えば、親権者新変更や親権の停止または喪失に至らない事案においても、同居親と子供の関係が必ずしも良好ではないケース、同居親による子の養育に不安があるために、別居親の関与があった方が子の利益にかなうケースがありうると考えております。
次に、父母の葛藤が子の利益に与える影響についてお尋ねがありました。お尋ねについては、父母の意見対立の状況等によっても異なり、一概にお答えすることは困難ですが、例えば父母の感情的問題等により、親権の共同行使、これが困難である状態は子の利益を害すると考えています。
次に離婚後の子の養育のあり方に関する日本乳幼児精神保健学会の声明に対する受け止めについてお尋ねがありました。子の利益を確保するためには、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが重要であり、またその安全安心を確保することも重要であります。本改正案では、DVや虐待の恐れがある場合の他、父母の感情的問題等により、親権の共同行使が困難である場合にも、裁判所が必ず場合にも、裁判所が必ず単独親権としなければならないこととしており、ご指摘の声明で指摘されているご懸念にも対応したものものとなっていると考えております。
次に、親子交流事件の運用に関する、同じく日本乳幼児精神保健学会の声明に対する受け止めについてお尋ねがありました。親子交流の実施に当たっては、子の安全安心を確保することが重要であると考えています。親子交流を実施する旨を定めるか、定めるかについては、個別の事案における具体的な事情を踏まえて、家庭裁判所で適切に判断されるべき事項であるため、法務大臣として具体的にお答えすることは差し控えます。その上で一般論として申し上げれば、家庭裁判所では親子交流の安全安心を確保するとともに、子の利益を確保する観点から、適切な審議が行われることを期待しております。
次に子の監護に関する事件を巡る家庭裁判所の運用の検証についてお尋ねがありました。法務省としては親子交流に関しても協議、協議事項に関する実態調査や、未成年期に父母の別居や離婚を経験した子に対する調査などの調査を行って参りました。
最もお尋ねについては、裁判所の運用に関わる事項であるため、そのような検証を行うかどうかも含め、裁判所において適切に検討されるべきものと考えております。
次に、子の意見表明権についてお尋ねがありました。子の意見聴取は現行の家事事件手続き法で定められています。子の意見表明権を民法上明文化することについては、離婚の場面で、子に親を選択選択するように迫ることになりかねず、かえってその利益に反するとして、慎重な意見もございます。
本改正案では、子の意見表明権を明文化してはおりませんが、父母が子の人格を尊重すべきことを明確化しており、ここに子の人格の尊重は、この意見、意向等が適切な形で考慮され、尊重されるべきであるという趣旨を含むものであります。
次に親権の用語概念についてお尋ねがありました。親権は子に対する支配権ではなく、また、権利のみではなく義務としての性質を有しており、子の利益のために行使しなければならないものと理解されています。本改正案では、親権という用語自体は見直しておりませんが、このような親権の性質を明確化しているところでございます。
次に、親の資力等が要件となっている各省庁の支援策についてお尋ねがありました。本改正案が御指摘の支援策に影響を及ぼすかなどについては、第一次的にはそれぞれの法令を所管する各省庁において検討されるべき事柄であると考えていますが、その上で、衆議院法務委員会の付帯決議では、本法の施行に伴い、税制、社会保障制度社会福祉制度等への影響がある場合には、子の利益が不利益が生ずることはないかという観点に留意して、必要に応じ、関係府省庁が連携して対応を行うこと等とされました。
本改正案が成立した際には、その趣旨を踏まえ、円滑な施行に必要な環境整備を確実かつ速やかに行うとともに、国民への周知広報のあり方の検討も含め、関係府省庁等と連携してまいりたいと思います。
次に監護者の定めについてお尋ねがありました。父母の離婚に直面する子の利益を確保するためには、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが重要です。裁判所の判断で離婚後の父母双方を親権者と定めた場合、父母が子の身上監護をどのように分担するかはそれぞれの事情に異なると考えられます。そのため、離婚後の父母の一方監護者と定めることを必須とすることは相当ではないと考えております。
次に省庁横断的な連絡協力体制の構築についてお尋ねがありました。お尋ねについては衆議院法務委員会の付帯決議でも、子の利益を確保するための措置が適切に講じられるよう、関係府省庁等が連携して、必要な政策を実施するための体制整備を進めることなどとされております。本改正案が成立した際には、その趣旨を踏まえ、円滑な施行に必要な環境整備を確実かつ速やかに行うべく、関係府省庁等との連携協力体制の構築に向けて取り組んでまいりたいと思います。
最後に、養育費の立て替え払い、求償制度についてお尋ねがありました。お尋ねのような仕組みの導入については、期待する声がある一方で、回収手続きに要するコスト、給付型社会保障制度との関係の整備、モラルハザードの問題など様々な問題課題があり、慎重な検討が必要です。その中で、1人親の方が養育費を請求するために、民事法律扶助を利用した場合の償還等免除の要件を緩和する取り組みが既に開始されています。本改正案では、法定養育費を新設するなど、養育費の履行確保に向けた改正を行っており、行おうとしており、まずはその施行後の養育費の履行状況等を注視したいと考えております。

加藤鮎子国務大臣
仁比そうへい議員の御質問にお答えいたします。離婚の際の面前DVなどによる子供への影響についてお尋ねがありました。婚姻状態であるかを問わず、子供の健やかな育成のために、面前DVなど、子供に対する虐待になりうるような身体的精神的な暴力は防がなければなりません。こども家庭庁としては引き続き、離婚前後の親への支援や虐待の未然防止のための支援などを行い、子供の健全な育成に努めてまいります。

(加藤大臣なにやってるんだー)

盛山正仁文部科学大臣
仁比議員にお答えいたします。共同親権の場合における高等学校等就学支援金の取り扱いについてお尋ねがありました。高等学校等就学支援金は、親権者等の収入に基づいて受給資格の認定が行われるため、今般の民法改正後に共同親権となった場合には、親権者が2名となることから基本的には親権者2名分の収入に基づき算定を行うこととなります。他方で、親権者が2名の場合であっても、親権者である保護者の一方が、ドメスティックバイオレンスや児童虐待等により就学に要する経費の負担を求めることが困難である場合には、親権者1名で判定を行うこととしており、これは共同親権となった場合においても同様の取り扱いとなります。
ご指摘のような場合も含め、これらの判定にあたっては、認定を行う都道府県等により個別のケースに応じて柔軟に判断することとなりますが、文部科学省としても適切な認定事務が行われるよう、法務省とも連携しながら、都道府県等に対する丁寧な周知に努めてまいります。

尾辻議長
以上で質疑は終了いたしました。これに行って午後1時まで休憩いたします。

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