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リバース型人工肩関節置換術(RSA)の周術期管理とリハビリテーション

1. 術前評価

RSAの適応を判断するためには、三角筋機能の評価が重要です。腋窩神経麻痺や三角筋の極端な萎縮がある場合、術後の成績に影響を与えるため慎重な検討が必要です。また、出血傾向や抗凝固薬の使用、肥満、骨粗鬆症などのリスク要因についても術前に評価し、適切な対応を行う必要があります。

2. 周術期管理

  • 出血対策: RSAは他の肩関節置換術に比べて出血リスクが高いため、術中の止血操作やトラネキサム酸(TXA)の静脈内投与が有効とされています。TXAは抗線溶作用を持ち、出血量を減らし、輸血の必要性を低減します。一般的には、術前に1回投与することで効果が得られます。

  • 感染対策: RSAでは、術後感染のリスクが高く、特にCutibacterium acnes(C. acnes)が原因菌として多く検出されます。感染防止のため、クロルヘキシジンアルコールによる術前消毒や、過酸化ベンゾイル外用薬の術前使用が有効とされています。また、術前に抗菌薬を適切に投与し、術後48時間まで定期的に投与します。

  • 疼痛管理: 術後の疼痛管理は患者の満足度やリハビリテーションの効果に大きく影響します。斜角筋間腕神経叢ブロック(ISB)やIV-PCA(患者自己調節静脈内鎮痛)を組み合わせ、術後早期の疼痛を軽減します。また、術後のポジショニング(肩甲骨面上45度の外転位)も疼痛管理に有効です。最近では、複数の鎮痛法や鎮痛薬を組み合わせた「マルチモーダル鎮痛法(multimodal analgesia)」も注目されています。

3. リハビリテーションの進め方

RSA後の機能回復には、時期に応じた適切なリハビリテーションが不可欠です。

  • 術前リハビリ: 術前から肩関節の可動域確保や三角筋の筋力維持を目的とした自主トレーニングの指導を行います。術前の三角筋の筋力や肩関節の可動域が術後の機能改善に影響するため、術前からの準備が重要です。

  • 術後リハビリ:

    • 術後3週間まで: 外転装具を装着し、肩甲骨面上での他動運動を中心に行います。また、肘や手関節の自動運動は許可されます。

    • 術後5週間から6カ月まで: 自動介助運動や三角筋の筋力強化訓練を開始します。この時期が肩関節機能の改善に最も重要であり、肩甲骨の過度な代償を抑制し、肩甲上腕関節の可動性を高めることを目指します。

    • 術後6カ月以上: 肩甲上腕関節での動作が良好であれば、鎖骨や肩甲骨の可動性を含めた肩複合体としての機能獲得を目指します。また、体幹や下肢の機能も向上させることで、全身でバランスの良い動作を実現します。

4. 終わりに

RSA後の肩関節機能の改善には、適切なリハビリテーションが必要不可欠です。特に術後5週間から6カ月の期間が機能獲得において最も重要であり、疼痛管理や適切な運動療法を行うことで、三角筋の機能を最大限に活かし、良好な臨床転帰を目指します。

※実際の患者さんの治療を通して学んだものをnoteにまとめています。
下記参考図書を読んでまとめたものですので、私のnoteは参考程度にお願いします。
関節外科 2024年7月号 Vol.43 No.7 リバース型人工肩関節置換術(RSA)の最前線 メジカルビュー社
https://www.medicalview.co.jp/catalog/MAGA978-12363-24-07-0.html

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