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逆噴射小説大賞2021応募自作まとめ

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どれも気合入れて書きました!ぜひどうぞ!
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初めての逆噴射小説大賞《2021》参加の感想と、応募作あとがき

逆噴射小説大賞に初参加するまでの道のり お世話になっております。このたび初めて、この『逆噴射小説大賞』に応募させて頂きました。抱負としていた2作品の提出を終えたので、感想を記録しておきます。結論から言うと、何が書けるか正直不安でしたが、やってみると意外なほどに楽しく作ることができました。ありがとうございます。 このコンテストの存在を知ったのは、ほぼ一年前、逆噴射小説大賞2020開催決定の報によるものでした。あの『ニンジャスレイヤー』を擁するダイハードテイルズさんの主催する小

【短編小説】Finder (Full version 2.0)

仕事は順調で、可愛い恋人もいる、幸せな日々。それは記憶を失った私の見る、甘い幻想だった。カメラを通じて切り取られたのは、荒廃した現実の世界。断片的な記憶。私は思い出す。憎き仇の、その姿を。 これは、逆噴射小説大賞2021に応募した「Finder」の完全版です。 【Ver.2.0 UPDATE】全体的に描写が濃くなってわかりやすくなりました! 逆噴射版とは主人公の設定が少し違っているので、一旦リセットして読んで頂けると嬉しいです。 Finder (GYAKUFUNSYA-

Finder

 ふと思い立って、押し入れからカメラを引っ張り出した。きっかけは単純で、昨日、ビルの谷間から覗く夕陽が、とても綺麗に見えたからだ。  憧れのままに奮発した、フルサイズ・デジタル一眼レフ。結局、上手く使えずにしまい込んでしまったのだが。思い出と苦手意識が蘇る。  『目で見たまま』を捉えることは難しい。デジタルカメラはどこまでも0と1の機械で、物理世界の事象をそのまま切り取る。対して人は、視細胞の電気信号を基に、脳が勝手に映像を補正する。感情や思い込みは容易に現実を捻じ曲げ、

灰燼よりうまれた獣

 狭苦しいコックピットの足元から、発動機のくぐもった高音が響き始める。操縦桿から伝わる拍動。右手元のガラス質の燃料槽では、深紅に輝く流動体が静かに揺らめいている。頸椎に浸入した針が熱を帯び、鋼の巨人の眼が、俺の視界に重なった。  目標地点上空、警報と同時に、無人輸送機に無数の穴が穿たれる。30ミリ機関砲弾。こいつには豆鉄砲だ。有機的に艶めく装甲が軟質に歪み、衝撃を逸らす。俺は炎上する輸送機の壁を抉じ開け、5メートルの身体を宙に躍らせた。  攻撃機に飛び付き、爪で切り裂く。金