【短編小説】「正解」
幼いころ、世の中には「正解」があふれていた。テレビや広告に書いてあること、先生や大人のいうことは完成形であって、正しい。同級生も、みんななにかの「正解」を持っていて、それが目ではっきり見えているのだと思っていた。
わたしにはその「正解」が見えなかった。他人には見えているはずだから、みんなが持っている共通の「正解」を回答しないと、のけ者にされてしまう。回答権が回ってくる。わたしは答えられない。すると、どこからか誰かが「正解」を回答する。それは「正解」が見えているすべての人たち