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(アニメ感想)ODDTAXI(オッドタクシー)

この記事はTVアニメ「オッドタクシー」の感想を一通りやったあと、ここから映画の話をしますという前置きをした上でに映画「オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」の話をします。

最終回を終えての感想

放送当時から面白いという話は色々と聞いていて、尚且つその面白さみたいなところがキャラクターが可愛いとか作画がすごいとかそういう面でなく、やっぱりドラマ性から感じる予想外の面白さみたいなところをよく言われていたような気がします。

観よう観ようと思って月日は経ってしまったのですが、丁度仕事に余裕が生まれて時間ができ、4月1日から映画が始まるということで「観るなら今か!」と一気に駆け抜けました。
最初の方はあんまり面白くないみたいな話をどこかで聞いたような気もしたのですが、個人的には前情報はありますが1話から面白くなりそうというオーラをひしひしと感じる期待感にあふれていました。
1話ごとにキャラクターたちの状況が掘り下げられて話が進み、関係性や新たな発展が生まれ…とシンプルな構図を丁寧に積み重ねて結果として何回ではない複雑さが形作られていく様子は本当に見事な脚本だったと思います。
無駄な回が一つも無く、明確にこの話数は誰かの話という区切られ方もされていないので本当に一本のドラマを観終わった読了感に近いです。

まとめて観るのも大変良かったのですが、リアルタイムにこの話の顛末を毎週楽しみに待ちたかったという気持ちも大いにあります。
とても良いものを観ることができました。

雰囲気作りが良い

全編を作画とCGを組み合わせて制作手法としても面白い本作ですが、話の内容に沿うようにどのシーンも彩度が浅く、どこか薄暗い画面作りがとても心地良い。
美術なども写真などをベースに加工を施したようなリアリティがあるものの、少し手触りのあるような感じでアニメと実写の中間にあるようなイメージ。
現実世界に即しながらも「セイウチの姿をした人間がタクシードライバーをしている」という非現実感・アニメでしか生み出せない空気感を絶妙なバランスで作り上げているような気がします。

セリフ回しもどこかオシャレで現実っぽい心地良さがありつつ、でもそこにはアニメっぽさも共存しています。
この絶妙な感じはなんだろうなと考えてみるとなんとなくほんの少しの「間」の取り方とか「会話のやり取り」とかそういうところなのかなと。
気にせいかも知れないのですが、本作はよくキャラのセリフに別のキャラのセリフを被せてくることがよくある気がしていて、現実だと当然誰かの話を遮ってしまったりすることは多々あるはずなのですが、アニメだと誰かのセリフってちゃんと区切られているので(本作も当然そうですが)あんまり遮るようなイメージは無いです。
このキャラクター同士が生み出す一言一言の絶妙な空気感がオッドタクシーには存在している…ような気がしますし、ある意味その「間」をコントロールするプロフェッショナルである芸人の方々がメインキャストとしているのはそこへの強いアプローチなのかも知れないですね。

花江君も含めてみんな喋るテンションが現実っぽいのも良いですよね。なんというかキャーキャーしてないというか芝居じみてないというか。
何より小戸川の声が花江君だということは明確に分かるのにその本人紐付かないような絶妙な雰囲気は素晴らしいの一言に尽きる名演技でした。最高。

まんまとハマったトリック

終盤にかけて続々と伏線が回収されていった感じはとても気持ちよかった。
ドブの作戦が「オッドタクシー」とタイトルを回収したのは心が高揚するのと同時に「オッドタクシー=小戸川のタクシー」だとアタリをつけていたので、これはバッチリハメられたと思います。

続くこの動物たちが暮らす世界観そのものの真実というところは最初の方に違和感を覚えてはいたものの「そういう世界観なんだな」と思って気にしないでいましたが、そこにもしっかり回収されました。
序盤の方に「人間」と呼称する場面で「この世界では動物たちが現実世界の人間としている世界なんだな」と決めつけていましたね…。
多くの人は小戸川の過去回想で人間が出てきたタイミングでこの世界の常識・前提を疑い始めたものかと思います。
自分もそうでしたし、よくあるトリックですがこんな終盤まで温めておくとは思わなかったので見事にやられました。
改めて公式サイトのキャラクター紹介とか見ても何一つ動物であることについては触れられていないので非常に巧みに張り巡らされた最後の大きな伏線は天晴でした。

そしてラスト

最後の5分ですよ。すっかり忘れてたところにしっかり爆弾が置かれていたというか「お前…!!!」ってなってしまいました。
これも全て計算通りなんでしょうね。見事な脚本です。

これを観終わったのが夕方の18時頃。非常に温まった気持ちのまま一番早い劇場の予約をとるのは致し方なかったと思うのです。


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ここから映画の話

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(映画)新たな視点で描く『新板オッドタクシー』

意気揚々と映画を観に行ってきました。
結論からいうと元からそう言われていたとおり総集編+αという内容なのですが観に行って良かったですね。
「全く同じ話をこんな見事に見せ方を変えることができるのか…?」とその部分に大変興奮を覚えました。
事情聴取・インタビューという形式で描かれる全編ですが、それを逆手にとって時系列の組み換え・整理や、当事者の別視点で展開されていくことで緻密に練られた本編の良さを損なわずに更に隙間に情報を流し込んでいくような巧みな見せ方です。
所謂総集編版特有の時系列順に見て途中のエピソードが抜け落ちていくことで話の概要は分かるものの満足度がやや劣るということは個人的には無かったように思います。
もちろん抜けたエピソードやセリフは多数あるのですが、それ以上に映画用にカスタマイズされた演出に拍手を贈りたい。

(映画)その後の話+α

TVシリーズの例のラストのその先、ドキっとしつつも安心感のある展開でした。
当然ですがみんな気になっていたところかなと思うので、心なしか新板の話になった頃に少し劇場に緊張感が生まれたような気さえしました。
三矢さんが一番怖いよ…。

内容としては非常に満足しているのですが、「その先」と謳っているのでもう少しボリュームが欲しかったような気もしますし、変にハッピーエンド感出されるよりも視聴者にある程度委ねつつ余韻を楽しむくらいの方が良いのかも知れません。

ちなみに自分は映画を観たあとに言われて履修したのですがYouTubeにあるオーディオドラマを聴いてから見ると更に世界観・新板の話の解像度が上がってとても良いと思います。

この後は多分誰かの考察とかを見に行くと思うのですが、インタビュアーだった彼らは結局どんな目的や理由があってそこにいたんでしょうかね…?
3人中2人はホワイトドルフィンのキャスト(or 元樺沢信者)と田中の同級生だったと思うんですが、組み合わせが謎すぎてそこは誰かの解釈を参考にしたい…。
あとは一瞬だったので見逃してしまったのですが、小戸川を助けたのは柿花だったと思うんですが何がどうなってそうなったのかまだピンと来ていませんね…。

あとはラストの実写映像は何かドラマ化とかの布石か、それともこの世界と現実を繋ぐ・同一みたいなメッセージなのかな…難しいなオッドタクシー…。

終わり

2日にかけて全ての情報を飲み込んだのですが、非常に充実した時間を過ごすことができました。
アニメですがP.I.C.S企画ということでアニメらしくない作品に仕上がり、非常に意欲的な内容で2021年トップと推す人が多いのも納得の作品だと思います。

作画の良さやアクションの素晴らしさ、声優の豪華さなど色々と高水準なものが作られる昨今のアニメ業界の中でリミテッドな環境下の中でも創意工夫と、このご時世だからこそより深く踏み込むことができる様々なアプローチなどファンとともに作り上げていった純粋な面白さが印象的な意欲作でした。

お陰でオススメのアニメは?と訊かれたときに出せる引き出しがまた増えました。

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