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(アニメ感想)takt op.Destiny

最終回を終えての感想

全体的に一貫した世界観と雰囲気、暴力みたいな作画パワーで圧倒されましたね。
ストーリー軸自体は特別珍しい流れではなくよく見かけるタイプのものでしたが、「音楽が人に宿る」という突拍子もない設定を飛び道具ではなく世界観構築にしっかりと活かされていて、音楽の無い生活から結果的に浮き彫りになる音楽の重要性、喜びのような部分を表現されていたように思います。

前述どおり、ストーリー自体は見慣れたもので、最初からあからさまにザーガンが怪しかったのでそのとおりになったりしていきました。
ラスボスであるものの立ち位置的にそう感じるだけで、立ち居振る舞いとしてのラスボス感は薄く(だからこそ狂人じみた発想が際立っていたのですが)、実質的にはオルフェがラスボスです。
ただ、天国と地獄がザーガンに寄り添う理由についてもう少し掘り下げて感情移入したかったなぁとは思いました。
あからさまなのでザーガンがラスボスなのはまだ良いと言えばそうなのですが、D2そのものは人間の理解の及ぶ範囲外にいる存在なので、この世界観としての締めとしては短絡的だった印象はあります。
あとはラストバトルで「運命」が流れるのはこの作品ならではの演出でオシャレで好きですが、あまりにもオルフェが圧倒的な状態だったのに最終的に拳で解決するのはどうかと思います。

本作の存在位置としては「この世界の掘り下げ・興味を持ってもらうこと」と、「いずれリリースされるゲームに対する前日譚としての導線」だと思うので根本的にはこの作品で話をしっかり終える必要はありません。(綺麗に終わると続きへの導線も弱くなると思うので)
単体話数で言えば後述するように好きなところはあるのですが、要所要所で作画の良さで盛り上げているけど物足りなさもあって若干不完全燃焼感はありますが、興味と導線という点では十分役割を果たしたアニメ作品だったと思います。

キャラクターが好き

メインパーティであるタクト、運命、アンナ。
加えて入ってくる巨人とレニーがそれぞれ魅力的な存在で、特にもうひとりの主人公でありメインヒロインの運命が自分の好みにハマったのがやっぱりとても大きい気がします。
キャラクター、特にムジカートはキャラクター原案のLAM氏の作風が強く出ているのですが、人間は落ち着いたトーンにしてムジカートは服装も含めてビビッドな色使いにすることでムジカート=異質な存在という世界観を支えているのは間違いないかと思います。

本作はPVに起用されている1話でピアノを背負うシーンでの運命の顔が良くて思わず観始めてしまったのですが、以降もモクモクと甘いものを食べる姿や真っ直ぐな物言いから個人的にはどんどん好きになっていきました。
基本的に取り繕わないだけで真面目な子なのでなんというか口の悪い妹のような印象があり、そこから徐々に交流を重ねてタクトを含む周囲の人々と打ち解けていくところも本作の魅力的な要素の一つでした。
なので、その大きな転換点でもあった8話「運命-Cosette-」は表題からしてもグッと来ましたね。


全体に良い流れを生み出す存在としてレニーと巨人の存在は非常に大きく、作品としても物語としても嫌味なく陰ながら支えてくれる魅力的なペアで良かったですね。
10話「師弟-Lenny-」はその二人のメイン話数。
なぜレニーがタクトたちの力になろうとしたのか、このレニーと巨人の関係性とは、レニーにとっての「音楽」とは何かという部分に焦点を当てた話で一番好きかも知れません。
普段飄々としている巨人みたいな子が服装を変えて本気を出すみたいな流れみんな好きですよね、自分もです。
その後の11話でレニーがいないからなのか、本人としてもすごく気が立っているのかシンフォニカへ乗り込んだ際にタクト・運命に対してちょっと口が悪い感じが出ているのが知らない一面が垣間見えたようで良かったです。


ラストのその先

タクトへ思いを託して消えてしまった運命。そして、そのタクトから更に思いを受け取ったアンナが運命の姿になる。
という終わり方をするのですが、やはりアンナがどうやってそうなったのかが気なってくるところでしょうか。
設定上、素体の人間を上書きすることでムジカートが存在するので変身的な方法では無いとは思いつつ、タクトと運命がそもそも普通のコンダクターとムジカートではないという設定もあるので、この謎自体がやはりゲームへの導線なんでしょうかね…。(実際自分もこの終わり方を通じてゲームへの興味は少し高くなりました。)

割と序盤の話数辺りでアニメとゲームで運命のCVが違うということから最終的にコゼットを取り戻すためにアンナがムジカートになる・入れ替わるようなラストは想像していたのですが、もっとふわっとした終わり方になりましたね。


終わり

オリジナルIPとして「また変な擬人化きたな」と当初思っていたところから、思いのほかしっかりと作り込まれた世界観と近年稀に見る力の入れようで排出されたアニメーションで大変良かったです。
正直なところですと内容よりも今ノリに乗っているMAPPA×MADHOUSEという強い布陣で届けられる作画の良さというとこが一番の話題の中心であったため、脚本自体はそこまで取り沙汰されるほどの仕上がりではなかったのですが十分楽しむことができましたし、刺さるものになったのではないかと思います。
今後リリースされるであろうゲームの出来次第では評価も上がるでしょうし、ウマ娘と同じく時間が経ってから更に評価されるということもあるのではないかと思います(ウマ娘は導線感はあまりない単独作品という感じですが)

惜しむらくはゲームへの導線感が非常に強いのでいつかゲームが終わったその後にこの作品に触れる人は十分に楽しむことができない可能性があるので、ゲームがヒットした暁にはその内容をベースに運命たちのその後にまたアニメで出会えることを期待します。
今後の動向も楽しみにしています!

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