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#枡酒

ここで終わりにするのか、それとも広島へ進むのか。僕は岡山駅で悩みに悩んでいた。
 
 岐路に直面した僕は、瀬戸内海の潮風に背中を押され、特急しおかぜに飛び乗った。

 そして途中の丸亀駅で確信する。
『そうか!僕はうどんを食べたかったのだ。しかも、ここ香川県だし!』

 早速、金刀比羅宮で讃岐うどんと枡酒。さりげなく平皿に添えられたお塩。

 ところで『居酒屋』という言葉の元来の意味は『居ることのできる酒屋』である。

 つまり江戸の酒屋は『立ち飲みパブ』の役割をも担ったのである。

 『枡』は、そもそも町人が持参した大徳利に漏斗をあてて量り売りする酒屋の必須アイテム。常連客には気持お酒をサービスしたのだろう。


 
 そして酒屋は、枡できっちり一合お酒を酌量して立ち飲み客に提供する。受け皿にこぼれた分が、その気持(情状酌量?)の部分である。

 酒屋で気の利いた肴と言えば、店で扱っている塩くらいだったのだろう。
(当時の塩はミネラル豊富で溶けやすく手間がかかる高級品、特に夏場は好まれた。)

 こんぴらさんの参道。そんな酒屋風情の名残りが僕は愛おしくてたまらない。



 こんな時代背景を押さえながら、あとは枡酒とお塩を各人のスタイルで愉しむ。
 そのセンスが『大人の遊び』なんだと思う。

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