見出し画像

ゲームとことば#8「いませんよ」

二人の掛け合いが聞く人の笑いを生む。
これは一人喋りにはない絶妙なタイミングによって起こる笑いで、早すぎても遅すぎてもいけない。
Wii専用ソフト『斬撃のレギンレイヴ』の一幕で有名な掛け合いと言えば、イズンとフレイヤの

フレイヤ「この付近に魔物はいる?」
イズン「いませんよ」
フレイヤ「いるじゃない!」

である。
このやり取りは流れるように美しく、空手の達人同士で行われる約束組手のようだとも言われている(言われていない)。
古いゲームで他機種に移植等もされていないので、ご存知ない方に説明する。

『斬撃のレギンレイヴ』は北欧神話を舞台にしたアクションゲームで、任天堂のWiiで発売された。
開発は『地球防衛軍』シリーズでおなじみのサンドロッドだ。
ざっくり言うと『斬撃のレギンレイヴ』はいわば北欧神話版地球防衛軍といったゲームで、プレイヤーは双子の神フレイもしくはフレイヤを操作し、巨神をバッタバッタと切り伏せる。
Wiiのモーションコントローラーを使用した体感型アクションゲームだが、なんとかしてSwitchなどで出してほしい傑作だ。

表題の場面は、妹のフレイヤが洞窟を一人で進んでいくシーン。
道中をサポートするため、女神イズンがフレイヤに語り掛けるのだが、プレイヤーには操作画面の左上にふわっとイズンの立ち絵が見えて、魔物うごめく戦いの場面にシュールな印象を与える。

一人必死に戦うフレイヤ(cv遠藤綾)。
おっとり優しく語り掛けるイズン(cv折笠富美子)。
一対多の地獄の現場と離れた場所からの吞気なアドバイス。

しかも魔物がいたことに対して特に詫びもなく、しれっと進んでいくからおかしい。その上通信が届かなくなったとかでフェードアウトするイズン。
しかしなんでイズンはこんなにも自信たっぷりに「いませんよ」と言い切ったのか、といつも思う。すでに通信が悪い場所で探知がうまくいっていなかったのかもしれないが、だとすればより慎重に判断してほしいものである。

ギャグキャラというわけでもないイズンが、これほどネタにされるのはこの掛け合いが強く印象深いからだ。
言葉って何気ないものでも、状況や相手の返しまたはそのテンポで面白くなるもんだなあと思う。大好きなゲームの大好きな一場面だ。

≪前回の記事≫


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?