PP西村

フリーのwebライター、webコンテンツエディターです。リテールマーケティング(販売士)1級所持。 ここではゲーム、本、絵画、映画の感想や、そこでふと引っかかった言葉について書いています。 よろしければ、フォローいただけると嬉しいです。

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最近の記事

「銀河鉄道の夜」の書き出し1文を読んでみた。

好きな小説をあらためて読む。なぜこの1文から始まったのだろう。 この一文を声に出して読んでみると、普段は早口の私でさえ、ゆっくりと丁寧に読んでしまう。 なんとなく、そうしなければならない気がしたのだ。 内容は授業中の教師の問いかけである。 「ご承知ですか。」がすごく丁寧。 いい先生なんだろうなと思う。 子どもを預けるならこんな先生がいいだろう。子どもいないけど。 続く場面では、うまく答えられないジョバンニとカムパネルラに対しても、せかしたり、苦言を呈したりすることなく授業を

    • 「アラビアの夜の種族」の書き出し1文を読んでみた。

      好きな小説をあらためて読む。なぜこの1文から始まったのだろう。 とても紳士的な書き出しだ。 サクサク紹介してくれてもいいのに、律儀に「紹介したい」と言ってくれる。 こちらとしては「どうもご丁寧に。それではよろしくお願いいたします」てなもんよ。 本作は、ナポレオンの侵攻に対峙する、エジプトのカイロを舞台とした作品だ。 圧倒的な武力を持つナポレオン軍を撃退する秘策として、『災厄の書』というものがあるらしい。 その本は一度手に取ると、寝食を忘れて読みふけってしまうほどの魔力があ

      • 闘え!うどんソルジャー

        平日お昼のうどん屋は忙しい。 そこが人通りの多い一等地に建つ人気店であるならなおさらだ。 中学生のころ、よく食べに行っていたうどん屋がそんな場所だった。 当時から私は、その店の従業員はソルジャーのようだと思っていた。 お昼時はお客の群れをかき分けるように注文を取り、水を運び、うどんを運ぶ。 そこでの店員さんの動きは「システマティックに洗練されている」というよりは、「任務遂行の為にある程度許容している雑さ」をはらんでいる。 「雑さ」と書いたが、決して接客態度が悪いとか、ミスを

        • 「檸檬」の書き出し1文を読んでみた。

          好きな小説をあらためて読む。なぜこの1文から始まったのだろう。 すごい息苦しそうな書き出し。 えたいが知れないのだから、対処のしようもないのではないか。 おさえつけるという言葉に圧という字を使っていて、文字通り圧迫感があり、ぺちゃんこにつぶされてしまうような無力感が出ている。 終始っていうぐらいだから、休みどころもないのだろう。 ただ、心が圧えつけられるというのは身体的な苦痛なのか、それとも精神的なものか。あるいはその両方なのか。 読み進めてみると、主人公は重い病気を患っ

          ゲームとことば#103「見つけたよ。誰にも渡さないよ。これで大金持ちだよ!」

          強欲な人の哀れな末路。 ロマンシングサガのリメイク作である『ロマンシングサガ ミンストレルソング』(通称:ミンサガ)で追加された、とあるサブイベントのラストを飾るセリフだ。 イベントの内容をかいつまんで説明する。 海の神ウコムの持つニンフ像が、何者かによって盗まれる。 主人公は、港で出会ったマリーンという名の娘に、像を探してほしいと鬱陶しいぐらいしつこく頼まれるのであった。 各地を巡り事件を追っていくと、盗んだ犯人が像をあきらめきれず、魔物に襲われて死んでしまうといった不幸

          ゲームとことば#103「見つけたよ。誰にも渡さないよ。これで大金持ちだよ!」

          すごいよ!長崎スタジアムシティさん

          長崎スタジアムシティ 今月、長崎県長崎市にオープンした長崎スタジアムシティへ行ってきました。 長崎スタジアムシティとは、ジャパネットHDが作った、サッカースタジアムとバスケ用アリーナを中心とした複合施設。 JR長崎駅・浦上駅から徒歩で約10分といった好立地です。 サッカーJ2のヴィ・ファーレン長崎と、バスケBリーグの長崎ヴェルカがそれぞれホームスタジアム、ホームアリーナとして使用します。 この日はサッカーやバスケの試合はなく、スタジアムの客席はほぼ解放されていました。 さら

          すごいよ!長崎スタジアムシティさん

          「罪と罰」の書き出し1文を読んでみた。

          好きな小説をあらためて読む。なぜこの1文から始まったのだろう。 「めっぽう熱い」、「狭くるしい」、「のろくさ」、「ためらいがちに」、とネガティブワードが並ぶ書き出し。 鬱屈とした気だるさがひしひしと伝わってくる。 「また借り」というのもいささかギルティな状況だ。 この時点ではまだ主人公の詳しい背景は不明だが、少なくとも「今日もいい天気!毎日楽しいなルンルン♪」という雰囲気でないことがわかる。 その環境が、主人公ラスコーリニコフの凶行を後押ししたのだろうか。 若人が老人を手に

          「罪と罰」の書き出し1文を読んでみた。

          「火花」の書き出し1文を読んでみた。

          好きな小説をあらためて読む。なぜこの1文から始まったのだろう。 まず初めに祭囃子の様子が書かれている。 太鼓の低い音と、笛の高い音がそれぞれ目立っているのだろうが、「大地を震わす」なんて大げさな表現が良い。 いや、すぐそばで演っている漫才がかき消されるほどだから、このぐらいダイナミックな音なのだろう。 かき消されたところで誰も気にしない悲しい漫才なのだけれど。 イマイチうだつが上がらない漫才師が主人公の本作は、最後までうだつが上がらない漫才師だった私にもバッチリ刺さった。

          「火花」の書き出し1文を読んでみた。

          PS2で遊んでいた頃の話

          大学生時代の話。 ろくに授業も受けずに『真・三國無双』シリーズを朝から晩までプレイしていたら、ある日外を歩く人の頭の上にHPゲージが見えた。 ゲーム中毒極まれり。 腹が減ったら道中の壺を割って肉まんゲットして食べよう、などと考えたぐらいだ。 脳みそが『無双』に支配されたような気がして、いよいよ限界だなと思い、しばらくプレイステーション2を封印したのである。 ゲームにハマり込みすぎると、ゴーグルなしでVRを体験できるみたいだ。 一方で、現実社会に引き戻してくれたのもゲームだっ

          PS2で遊んでいた頃の話

          ゲームとことば#102「こちらが みがまえるまえに おそいかかってきた!」

          モンスターから不意打ちを食らった時の表現。 「こちらが身構える前に襲い掛かってきた。」 臨場感にあふれ、テキストで状況を表すのにとても優れた表現だと思う。 単に「先制攻撃された」などというのもわかりやすくて良いのだが、どうせことばで説明するのならキャラクターが生き生きと感じられる表現にしたい、という心意気を感じる。 ウィザードリィには「Monster surprised  you!」という表現があるが、表題の場合は「こちらが」と、プレイヤー側に立った表現になっている。 より、

          ゲームとことば#102「こちらが みがまえるまえに おそいかかってきた!」

          「壬生義士伝」の書き出し1文を読んでみた。

          好きな小説をあらためて読む。なぜこの1文から始まったのだろう。 日付と場所がはっきりと記された書き出し。 日本史、特に幕末・維新に詳しい人なら、慶応四年というだけで日本がどういった状況だったのかわかるだろう。 そして、夜更けに満身創痍の侍。 なんだか物々しい雰囲気だ。 この侍は、果たしてどんな信条を持って、どんな敵と戦い、どんな心情で屋敷にたどり着いたのだろうか。 侍に思いを寄せるために与えられた情報は多く、傷ついた経緯を知りたくなるような物語のスタートだと思う。 正直、

          「壬生義士伝」の書き出し1文を読んでみた。

          「こゝろ」の書き出し1文を読んでみた。

          好きな小説をあらためて読む。なぜこの1文から始まったのだろう。 主人公「私」の語りから始まるパターン。 重要人物に対する呼称の説明から入っている。 そして、「本名は言わない。イニシャルも使いたくない。先生と呼ぶのが自然だったからそう呼んでいる。」ということらしい。 誰が、誰を、何と呼ぶのか。 それが重要なんだろう。 教科書にも載っている漱石後期の名作は、こんな感じの書き出しだった。 呼称の違いは登場人物の関係性を表すのに重要な要素だと思う。 名字呼び、名前呼び、敬称の有無

          「こゝろ」の書き出し1文を読んでみた。

          #7「くにおくんは時代劇グルメゲーム!?江戸時代の外食相場は?」~ゲームとお店~

          お店:めしや・そばや など ゲーム:くにおくんの時代劇だよ全員集合! 提供サービス:料理や飲料の提供。飲食店 くにおくんは江戸時代の日本をめぐり、旅先で飯をかっくらう。 劇中劇の外食シーン。その価格設定は? ファミコンの名作『くにおくんの時代劇だよ全員集合!』は、おなじみ「くにおくん」たちが暴れる時代劇アクションゲームだ。 くにおくん演じる「くにまさ」が、子分を連れて江戸時代の日本で、喧嘩、喧嘩のバイオレンス行脚を繰り広げる、という劇中劇のような内容である。 劇のスト

          #7「くにおくんは時代劇グルメゲーム!?江戸時代の外食相場は?」~ゲームとお店~

          「占星術殺人事件」の書き出し1文を読んでみた。

          好きな小説をあらためて読む。なぜこの1文から始まったのだろう。 本格ミステリー小説の金字塔的本作は、冒頭からめっちゃハードルを上げてくる。 私はすこぶる勘が鈍いので、推理小説の類は「謎を解いてやろう!」という気持ちでは読めない。 そこらへんは大人しく登場人物に任せたいタイプだ。 あと、自分の推理が違ってたら恥ずいし。 ただ、おそらく世の中には「なるべく早くトリックを解いてやろう」と意気込んで読む人もいるだろうから、本書のプロローグはそういった読者に対してなかなかに挑戦的であ

          「占星術殺人事件」の書き出し1文を読んでみた。

          #6「マネキンは動いてナンボ?アンドロイドで未来のディスプレイ」~ゲームとお店~

          お店:アパレルショップ ゲーム:デトロイトビカムヒューマン 提供サービス:服飾品の販売 未来のアパレルショップは、マネキンが自在にポーズを取るかもしれない。 洋服を魅力的に見せるには、ただ立っている人形に着せるよりも、着て動いて見せる方が効果的だろう。 アンドロイドが新しいデザインの服を着用して、ショーウィンドウでポージング。 だがそれは果たして、陳列什器と呼んでよいものだろうか? 『デトロイト ビカム ヒューマン』は、3人のアンドロイドのストーリーを追っていくアド

          #6「マネキンは動いてナンボ?アンドロイドで未来のディスプレイ」~ゲームとお店~

          「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」の書き出し1文を読んでみた。

          好きな小説をあらためて読む。なぜこの1文から始まったのだろう。 なになに?どういう状況?と思わせる書き出し。 何百人もの人が同じ方向を見ているとだけ書かれると、まったく内容を知らない人は何を想像するのだろうか。 ローマ教皇を決めるコンクラーベとかか? 本作は高校の吹奏楽部を舞台にした作品で、冒頭は主人公、黄前久美子の中学時代の回想である。 シーンは、中学校の吹奏楽コンクールの結果発表。 1校当たり何十人もの演奏者がいて、それが何校も集まっている。 さらに、それぞれの学校の

          「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」の書き出し1文を読んでみた。