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ゲームとことば#89「マリオは昔の友達なんだけど、元気かアイツは?」

ことばを解する人面魚「シーマン」に「任天堂」の話を振ると、このような質問を投げかけてくる。
こっち(プレイヤー)に聞かれても、我々は元気なマリオしか存じ上げないのだよ。
まあ、食欲がなくてキノコ半分残すマリオとか、Bダッシュで息切れして救心を飲むマリオは見たくないよね。
いつまでも元気でいてください。

『シーマン ~禁断のペット~』は1999年、セガのドリームキャストから発売された奇ゲー。発売当初から不気味さが話題になった作品だ。
のっぺりとした顔を持つ謎の生物を自然の中で育てていく、気持ち悪いたまごっちのようなゲーム。
人面魚のイメージが強いが魚を一個体育てるのではなく、幼虫から魚、そしてカエルのような形に、世代を超えて進化していく過程を眺めていくといった感じ。
少し成長して大きな個体になると、コントローラーにくっつけたマイクを使い、話しかけることができる。
古いゲームなのである程度決まったワードしか拾わず、反応に時間もかかるのだが、シーマンから返ってくる「ことば」は下世話なものから説教めいたものまでと多種多様。
基本的にけだるそうに、上から目線で話しかけてくるのが彼(?)のスタイルだ。

中学生だった私は、毎日学校に行く前にその進化の過程を眺めていた。
当時「キモかわいい」というワードはなかったと思うが、今の基準で見ても「キモい」がダブルスコアで勝つシーマン。
そんな珍妙な生物でも、毎朝世話をしていると不思議と愛着がわいてくる。単純接触効果というやつだろうか。

そんなシーマンとの会話のなかで、思い出深いことばが表題。
冒頭に説明した通り「任天堂」と声をかけると、シーマンがこういったセリフを返してくる。
セガハードのゲーム(注)で任天堂の話をするというのが、なんだかきわどいネタのようでワクワクしたことを思い出す。(注:開発元はビバリウムという会社で、のちにPS2版も発売)
異様な存在感を放つ彼が言うと本当にマリオの友達だったようにも聞こえるし、地元の先輩の真偽不明な武勇伝のようにも聞こえてくる。
その堂々たる怪しさがクセになるので、プレイヤーは色々な会話を試したくなるのだ。
ほかには「カツヤ」と声をかけるとDJの小林克也さんのモノマネをしていたのが印象的。けっこう似ていた気がする。

しかし、こういう奇天烈なゲームって2000年ごろに多かったような気がするな。
世紀末だからなのだろうか。

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