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ゲームとことば#71「焼きそばパンください!!」

おそらく世界で最も折り目正しく、焼きそばパンを買い求める青年の発言。

『十三機兵防衛圏』の主人公の一人である比治山隆俊は、太平洋戦争末期の日本人兵士だ。
本土決戦も噂されるなど戦況は思わしくないが、彼は実直に己の務めを果たそうとしている。
しかし彼もほかの主人公たちと同様、「機兵」をめぐる物語に巻き込まれることになり、突如40年後の未来である1985年にワープしてしまう。
様変わりした祖国に混乱し、帰るあてもない比治山は空腹に襲われる。
そして、偶然通りかかった少女に施しを受ける形で、比治山は「焼きそばパン」に出会うのだった。

日本国内への空襲も激しくなっていたころなので、兵隊といえども満足な食事はできなかったことだろう。特に調味料は貴重だと思うので、味は薄かったと考えられる。
十代後半の比治山にとって、突然連れてこられた昭和60年。
そこで口にした味の濃い食べ物は、どのように感じるものなのだろうか。
平和な時代の我々には想像しがたいが、画面上には満面の笑みを浮かべた青年がいる。

ちなみに本作の開発会社ヴァニラウェアの作品は、ゲーム中に出てくる食べ物がおいしそうだと定評がある。
「ヴァニラ飯」と呼ばれるそれらの逸品は、『朧村正』や『ドラゴンズクラウン』でも人気が高い。私はまだ手を付けられていないが、最新作の『ユニコーンオーバーロード』でもどうやら健在のようだ。
個人的には『朧村正』の風呂吹き大根や水ようかんが特に印象深い。
ちょっとずつ食べる描写もあり、水ようかんは切り分けるたびに"プルン"と弾む。野外料理なら火をかけて作る描写まであり、見ているだけで非常に腹が減るのだ。
『十三機兵防衛圏』にはそれほど多く食べ物は登場しないのだけど、ゲーム中のグラフィックを見られる「鞍部の部屋」というDLCで、そのグラフィックを閲覧できる。
改めて「焼きそばパン」を見てみよう。

まず目に入るのがパンのツヤ。多分パンだけ食べてもほんのり甘くておいしいはずだ。
メインの焼きそばはあまり色が濃くない。ソースは甘めなのかもしれない。
真ん中には絶妙な分量の紅ショウガ。端から食べていけばちょうど中間地点にあるので、いいアクセントになるだろう。
文字にしながら腹が減る。
「焼きそばパンください!!」
コンビニに買いに走ろうかしら。

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