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ゲームとことば#69「鬼計算」

鬼のように過酷な計算問題。それが「鬼計算」。

かつて話題となった東北大学・川島教授監修の『脳トレ』を覚えているだろうか。DSで爆発的にヒットしたソフトだ。
そこからさらにパワーアップしたものが『東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング』である。長い。
「加齢による脳機能の低下を予防すること」が目的であった『脳トレ』に対し「ワーキングメモリーを鍛えて脳の機能を向上すること」を目的としたものが『鬼トレ』だ。
ニンテンドー3DS専用ソフトである。

ワーキングメモリーとは「作業に必要な情報を一時的に記憶し、処理する能力」のことだそうだ。
「レシピを思い出しながら料理をする」とか「会議中にメモを取りながら次の打ち合わせ時間を気にする」のように、日常生活や仕事で当たり前のように使っている機能である。
その機能を鍛えれば、要領がよくてテキパキ動ける人になるのだろう。
つまり『鬼トレ』は、かしこくなれるゲームというわけだ!(短絡的)

かしこくなりたい私は発売日に『鬼トレ』を買い、3か月ほど頑張ってトレーニングに励んだ。
ラジオ体操カードみたいに毎日出席したらハンコをもらえるのが、なんだかうれしかった。
いくつかメニューがあるのだが、私はよく表題の「鬼計算」をやっていた。本作の代表的トレーニングメニューである。
どういう内容かというと「5分間、次々に出題される簡単な計算問題の答えを覚えながら、前に出題された問題の答えを書いていく」というもの。
はじめは「1バック」といって、1つ前の答えを以下のような手順で答えていく。

まずゲーム画面に
2-1=? と表示され、少し経ってから消える。
次に
3+4=? と表示されるのだが、ここで先ほどの2-1の答えである「1」を記入する。
すると今度は3+4=?の表示が消えて
7-2=? と表示される。そして3+4の答えである「7」を記入するのだ。
頭の中で、もしくは口に出して「1、7…」「7、5…」と覚えては忘れ、忘れては覚えを短い時間に繰り返し進めていく。

ややこしいね。
これをクリアすると次は2バック、3バックと2問前3問前の答えを書かせるようになり、どんどん難しくなっていく。
2バックなら先ほどの例でいうと、3問目の「7-2=?」の時にようやく1問目の答えである「1」を記入するということ。2問目の答えは、さらにその次の問題が出たときに答える。

私はなんとか頑張って「速い8バック」までいけた。
ただ昔の話なので、今となっては3バックすら危ういだろう。
すごい方は10バックもスラスラこなせるそうだ。信じられない能力だ。
とにかく頭が沸騰するような(そんなセリフの漫画がありましたね)脳のトレーニング。まさに「鬼」である。
トレーニングメニューはほかにもある。
文章を次々と読みながら、特定の単語だけを覚えて答えさせる「鬼朗読」。どんどん枚数が増えていく一人神経衰弱「鬼めくり」など計8種類の鬼が待ち構えているのだ。
どれも「鬼」の名にふさわしい、強烈な頭のトレーニングである。

プレイしていたころは心地よい疲労感を味わえたものの、かしこくなったかはわからない。
根気よく続けていれば、何か変わったのかもしれないが。
ただ、『鬼トレ』は集中力の向上にもつながるらしい。
誘惑の多い自宅での仕事をしている今こそ、やったほうがいいのかもしれない。
ちょっと3DSを起動してみようか。

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