「ここが好き!!」名作モノクロ映画2選〜『カサブランカ』と『第三の男』に見る男の哀愁編〜
「古い映画って面白いの?」「名前は聞いたことあるけど・・・」「なんか難しそう」
名作と名高い昔のモノクロ映画を、最初はただイキリたいだけで見始めた筆者が、少しでもその魅力を伝えられたらいいな、そんな気持ちで書いたレビュー記事です。
①カサブランカ 1942年 監督:マイケル・カーティス 出演:ハンフリー・ボガード、イングリッド・バーグマンほか
【あらすじ】
第二次世界大戦。ヨーロッパの戦禍から逃れる人々の、アメリカ亡命の中継地点となっていたモロッコ、カサブランカが舞台。
主人公のリックは、混沌としたカサブランカで酒場を経営している。ある日、彼の酒場にかつての恋人イルザが訪れる。イルザはパリ陥落の際に突如、リックの前から姿を消しており、二人の再会はそれ以来だった。
イルザは、ドイツに抵抗する夫ラズロと共に亡命の機会を伺い、その最中に偶然リックの店にやってきたのだった。リックは自身を捨てた昔の恋人との再会にショックを抱える中、ラズロに亡命の協力を求められる。一方で、リックに肩入れしてきた警察署長ルノーは、接近してきたラズロには協力するなと釘を刺す。
【こんな映画】
「君の瞳に乾杯」という名文句は、リックがイルザに向けたセリフの邦訳だ。
非常に古い映像だが、イルザ役のイングリッド・バーグマンは、確かに乾杯したくなるようなキラッキラのおめめをしている。悲しい表情もはにかんだ表情も、引き込まれるような瞳が印象的だ。まじで可愛い。
リックは序盤、彼に好意を持っていた別の女性に対してクールな返しをする。
女「昨日は何をしていたの?」リック「そんな昔のことは覚えていない」
女「今夜は会える?」リック「そんな先のことはわからない」
ちょっと時間感覚が刹那すぎやしませんかね。
ルノー署長も見抜いているが、リックはクールでシニカルな態度をとりつつも、本当は情に厚い人間である。それは戦時中の酒場、それも対立する人々が交錯するという特殊な場所で、酸いも甘いも噛み分けた男だけが持つ哀愁として描かれている。
そんな当時のカサブランカという土地の特殊性を表す、非常に印象深いシーンがある。
リックの酒場で意気揚々と「ラインの守り」を歌うドイツ軍の兵士たちに対抗して、それをかき消すように「ラ・マルセイエーズ」を歌い出すラズロたち。このシーンは銃器を出さずに緊迫した戦争下を表現した、映画史に残る名場面だと思う。それにしてもフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」はちょっとせこい。曲調がカッコ良すぎる。
戦時中の混沌とした世の中で表現される男の哀愁。この辺りに魅力を感じる映画だ。
②第三の男 1949年 監督:キャロル・リード 出演:ジョゼフ・コットン、オーソン・ウェルズ、アリダ・ヴァリほか
【あらすじ】
第二次世界大戦後、分割統治下のオーストリア、ウィーンが舞台。アメリカ人の三文作家ホリー・マーチンは、親友のハリー・ライムに誘われウィーンへ行く。しかし、ホリーは訪ねたアパートの管理人から、ハリーが交通事故で死んだと知らされる。
ホリーは葬儀で出会ったキャロウェイ少佐に、ハリーは薬の密売の主犯であると告げられるも、彼の悪事と死に疑問を抱き、独自で事件の解明に奔走する。
【こんな映画】
某『ちょっと贅沢なビール』のCMでも使われた名曲と、ポプラ並木での長回しラストシーンが有名。
ミステリーではあるが、それほど凝ったシナリオではなくテンポ良く進む。
死んだはずのハリーが暗がりの中現れるシーンでは、ハリー役のオーソン・ウェルズがニヤリと不敵に笑い、こいつは悪いヤツだなと一発で表現してくれる。
終盤で下水道に逃げたハリーを追い詰める場面では、地上から警官が次々と入り口の蓋を開けるシーンをしつこいぐらい映し、緊迫感を高めている。テンポ良く進む、と言ったが、この下水道のシーンは贅沢に時間を使っており、この辺りに昔の映画らしさを感じる。
有名なラストシーンもそう。
ハリーの恋人アンナに素通りされるホリー哀愁は、長回しの贅沢な時間の使い方で、非常に効果的に表現されている。
境遇やキャラクターの違いはあれど、「カサブランカ」も「第三の男」も失恋する男の哀愁が、モノクロで色濃く表現されていると思う。
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