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ゲームとことば#31「ホンキ度」

ニンテンドー3DSのアクションゲーム『新・光神話 パルテナの鏡』のストーリーモードでは、プレイヤーが難易度をステージごとに設定する。
本作ではその難易度を「ホンキ度」と呼び、このホンキ度は0.0~9.0まで0.1単位で目盛りを動かすように決めていく。

開始時に悪魔の釜というおどろおどろしい釜にハート(ゲーム内のスコア兼通貨的なもの)をささげてホンキ度を決定するのだが、ハートを多く釜にささげてホンキ度を上げるほど敵が強くなる。その代わり、ステージ内で獲得できるハートが増えたりいいアイテムがもらえたりする。
逆にホンキ度を下げれば敵は弱くなり簡単にクリアできるが、その分見返りは少なくなってしまう。
また、ゲームオーバーになると強制的にホンキ度を少し下げられ、最初にささげたハートも無駄になってしまう、というのがこのゲームのルールだ。

このホンキ度の設定は、桜井政博さんがゲームの面白さの一つとして提唱する「リスクとリターン」(※)を視覚的にも肌感覚的にもわかりやすくしたシステムだ。そして最も重要な"気軽さ"も兼ね備えている。
下記に任天堂公式HPに掲載されている元任天堂社長の岩田さん(故人)と桜井さんの対談の一部を引用する。

岩田
ホワイトボードに『インベーダー』ゲームの絵を描いて、
『インベーダー』というゲームは
インベーダーの下に砲台を持っていって撃たないと、
相手をやっつけられない。
でも、相手の下に行くということは、
相手が撃つミサイルにやられるかもしれないリスクがある。
でも、リスクがあるからリターンもあるので、
この“リスクとリターン”の関係をどうするかで、
ゲームの駆け引きはだいたい説明できる、
という主旨の話をしてくれて。
そのとき、ものすごく納得したのを覚えています。

(※リスクとリターンについて)任天堂公式HPより 社長が訊く『新・光神話 パルテナの鏡』
https://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/akdj/vol1/index3.html

自分で都度微調整した難易度は、それによって起こった結果(勝った負けた)に納得がいきやすく、よくできているなと非常に感心したものだ。

他の一般的なゲームの難易度設定だと、開始時にハードやイージーなどから選択することが多く、そう頻繁に変更するものでもない。基本的に最初から最後まで同じ難易度で進むため、進み具合によってはやっぱりハードが良かったかな?イージーが良かったかな?と悩むことも、なくはないのではないか。

しかし『新パルテナ』は章立てのストーリーの開始時にこのステップを踏むことで「よし、慣れてきたから次はホンキ度を上げるか」とか「難しいけど先進みたいからホンキ度めっちゃ下げるか」といった具合にその都度気軽に難易度をいじることができる。この気軽さとゲーム自体のテンポの良さによって、本作は最初から最後までストレスなく楽しめた。

ところで他のゲームの場合、難易度設定はどうしていただろう?
3段階だと真ん中、5段階でも真ん中か、せいぜい一つ上(5段階中4)ぐらいだろうか?
メーカーによってさじ加減が違うが、だいたいこんな感じだ。
何か負けた気がするので一番下にはしないが、へたくそなので一番上にもしない。まぁ、こんな理由だ。

ここまで語ってきてふと思う。
ゲームの難易度はこだわるくせに、自分の仕事は楽に逃げていやしないかと。
もっとホンキ度9.0でやっていかなきゃだな。

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