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美術に疎い素人が名画を見て何か言う#9『堕天使を深淵に落とす大天使ミカエル』ルカ・ジョルダーノ

西洋美術に明るくない私がなんとなく気に入った絵を見て、ド素人なりにかっこつけて感想を述べてみるコーナーです。久しぶりに更新しました第9回ではルカ・ジョルダーノの作品を見てみます。
上下のコントラストがかっこいい名画『堕天使を深淵に落とす大天使ミカエル』。

『堕天使を深淵に落とす大天使ミカエル』
作者:ルカ・ジョルダーノ
年代:1666年
所蔵:美術史美術館(ウィーン/オーストリア)

中央の剣を手にしたカラフルな天使はミカエルです。
その下に足で蹴落とされているのが堕天使ルシフェル。
何とか這い上がろうとするところを首筋を執拗に蹴って追い返しているのでしょうか。
ミカエルは軽やかなポーズをとっているので「ごめんふんじゃった」という表情にも見えます。
身もだえするルシフェルも苦しそうですが、右下で「ヒエッ」とした表情をする男(?)もいい味出していますね。
ところでミカエルってどんな天使なのでしょうか?

天使のヒエラルキーの頂点に立つ四大天使の一者で
「神のごとき者」を意味する名を持った最高位の天使
神自身が右腕とたのむ存在で
手には、いかなる刃と切り結んでも打ち克つ
神秘の武器を握るという

真・女神転生Ⅴ 日めくり悪魔動画 Vol.197
https://www.youtube.com/watch?v=8rMlkHiOt0o

思ったより偉い天使でした。神のごときとまで言われているとは。
この絵で右手に持っている武器が「いかなる刃と切り結んでも打ち克つ神秘の武器」なのでしょうか。
絵では手に掲げているだけですが、これから使うのかそれとも足蹴りだけで押し込むのか。
使うとすればこのままルシフェルの首や胸にグサリ、という恐ろしい絵が頭に浮かびます。
宗教改革以降、天使はいかつい武具を装備し悪魔や堕天使と戦う様子が、多くの絵画のモチーフになったようです。

この絵のように天使は優位な位置に置かれ、悠然とした態度で描かれることが多いのは、キリスト教側からすれば当然でしょう。
もしかしたら天使が負けていたり、痛めつけられている絵もあったのかもしれませんが闇に葬られてしまったのかもしれません。
絵を発注するのは基本教会側なので、需要自体もあまりなかったのでしょうが、ちょっと見てみたい。(実際あるのかもしれませんが)
もしくはもう少し拮抗した戦いを描いたものもあってもよさそうです。
ですが、やはり宗教的意義から考えると、戦いを煽るようで不謹慎に見られそうですね。

そして冒頭でも少し述べましたが、右下の人(?)の表情が面白い。

「ヒエッ」という表情

耳を両手で塞ぎ、おびえるような表情をした男性は、ルシフェルを踏んずけるミカエルの真下にいます。
ちょうどミカエルのご尊顔が見える位置にいる彼には、どのような表情が見えていたのでしょうか。
この男の顔から私は「ミカエルの攻撃」に対して、というより「ミカエルの表情」におびえているように感じました。
絵では大天使は穏やかに描かれていますが、正面で相対した堕天使たちには恐ろしい顔つきに見えたのかもしれませんね。

(参考文献:『1日1ページで世界の名画がわかる 366日の西洋美術』三才ブックス)

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