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ゲームとことば#83「もらえる報酬 スズメの涙」

誰しも、労働の対価はキッチリいただきたいものだろう。
それがたとえ正義のヒーローであっても。

メガドライブとドリームキャストで発売されたセガのアクションRPG『レンタヒーロー』は、ちょっとユニークなヒーローだ。
本作の主人公は、戦闘能力が大幅にアップするコンバットスーツを着用して戦う。
これだけ聞くとわりとオーソドックスなヒーローだが、契約形態がなんとも世知辛い。
半ば強制的に契約させられたうえ、会社からはスーツの使用料金を請求されるのだから。
そして彼は、その支払いのために有料で人助けを始めるのである。

表題のことばは主題歌『君は人のためにレンタヒーローになれるか』の歌詞。
ことば通りに解釈すれば、人助けをして得られる対価の少なさを嘆いているのだろう。その切実な思いに涙を禁じ得ない。
お金をもらって人助けをするヒーローといえば、かつて「Vジャンプ」に連載されていた鳥山明先生の『貯金戦士キャッシュマン』を思い出す。
あの漫画は故郷の星に変えるために必要な燃料(金)を得るため、強大な力で人助けをし、金銭をしっかり要求するという話だった。レンタヒーローと少し似ている。

ここで気になるのが、人助けの報酬の相場である。
『レンタヒーロー』はネット上のシステムで依頼された時点で、受け取れる金額が確定していた。おそらくクライアントが提示した金額なのだろう。
基本的に仕事の難易度に比例して、報酬がアップしていたはずである。
仕事内容は簡単なおつかいからボディーガードまでと多岐にわたり、危険性が高いあやしい仕事は高収入、といった感じだ。
ただ、表題のように報酬が"スズメの涙”であるならば、主人公は納得のいく収入はあまり得ていないのかもしれない。
このあたりは個人事業主のつらいところである。
自身の価値がどの程度で、どうやったら高い報酬を得られるのか。そこの見極めが重要だ。

たしかあの世界でも、主人公と同じように活動しているヒーローはいなかったと思う。(ドリキャス版に女性ヒーローの「レンタヒロコ」というキャラが1人だけいたが)
他に比較対象のないレンタヒーローは、もう少し強気に出てもいいのかもしれない。
そういった意味で現実世界に置き換えてみると、某「なんにもしない人」が立ち位置として近いのだろうか。
こういった特殊なサービスで二匹目のドジョウはなかなか狙えないだろう。その時点では、唯一無二の存在なのである。

商品・サービスの価格は需要・供給曲線が一致する均衡点で決まると、その昔教科書で習った気がする。
孤独に戦うレンタヒーローは、自分の価格を、価値を、立ち位置を、どうやって決めていけばいいのだろう。

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