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昔っぽいサスペンスドラマができるまで

「昔の2時間サスペンスを、フィルムエストの〝あの雰囲気〟でやりたいねん!」

2023年10月

友近さんが目をキラキラと輝かせて熱く語る姿を見て、心を突き動かされたのがすべての始まりでした。

「2時間ドラマでしか見ない演技」を、あそこまで巧みにできるのは、友近さんだけ。

そこに、私たちが得意とする「〝あの雰囲気〟の映像」が組み合わさったら――。

こんな画を撮ることを夢見て、始動。

2023年 冬

脚本を考えるにあたって取材を開始しました。

友近さんから提案された、2つのテーマ。それは「愛媛」と「ストリップ」。

どちらに対しても理解が浅かったため、まずは都心のストリップ劇場を訪れてみることにしました。すると…

・暗い場内は超満席!男だけかと思いきや、若い女性の姿も。
・デジカメで踊り子さんの写真を撮れる!?
・そして、観客席のマナーがとっても良い…

それは一つの文化と呼ぶべき空間。
想像したものとは、ずいぶん違う光景が広がっていました。

今作の舞台となった、松山の「ニュー道後ミュージック」

現役ポールダンサーさんや、ストリッパーの方と直接お話する機会もいただきながら、脚本のヒントになることがないか、何度もやりとりを重ねました。

2024年 春

愛媛へロケハンに伺いました。

友近さんがずっと大切にしてきた地元だけに、撮影に対しても皆さんとても協力的。お人柄が垣間見えました。

「どこでも使って」と融通してくれた、お好み焼き屋「昌万」のミーコちゃん
最後まで悩んだ「崖」は、愛媛の方に教えてもらった秘密のスポット

学生時代、弾丸旅行で一度来ただけの愛媛でしたが、「目線」をもって訪れると、ずいぶん見え方が違いました。

「にしいさん、表敬訪問しましょう!」

何が何だかなまま、愛媛県知事のもとへ。
「昔っぽい2時間サスペンスを撮ります!」と報告しました。

民放全局いる…(汗)

こんな〝オオゴト〟になった以上は、こちらも本気です。

いつもの倍以上のスタッフを集める必要があります。プロデューサーが必死になって各所をあたりましたが…

「ドラマに毛が生えたようなもんでしょ?協力できないですね」

と、そっけない言葉を投げつけられたこともあったそう。

映像業界の端くれの端にいるフィルムエスト。とはいえ、あまりにも失礼すぎやしないか。

それが私たちにますます火を付けました。

2024年5月

連日連夜、夜通しの準備と打ち合わせ。睡眠不足のなか、撮影がスタート。

本家2時間サスペンスの撮影期間は約2週間、スタッフは40人ほどになるそうですが、今回はわずか17人のスタッフと、たった6日の撮影期間。

「本当に撮り切れるのだろうか」という不安を抱きながらのシュートでした。

分かりやすく頭を抱えるにしい

しかし、スタッフ・出演者さんとも全員が、200%の力を発揮して、本当にすべてのカットを撮り切ったのでした。

これまでもいろんな方とお仕事をさせていただきましたが、こんなに情熱的に、そして、ここまできちんと作品に向き合ってくださった皆さんは初めてでした。

地元の方に振る舞ってもらった昼食

迷惑もたくさんかけてしまいましたが、本当に嬉しかったです。

だからこそ、編集に向けて、一層の気合が入りました。

2024年 初夏

が、、、膨大なデータを前に慄然とするばかり。
音声を含めると、素材だけで40~50時間超はあろうかという有様です。
スクリプターさんの手も借りつつ、1つずつそれを整理するところから始まりました。

ようやく編集が始められる状況になったものの、いつもと勝手の違うやり方に戸惑う日々。どうしても編集時の動作は重くなるし、画質を〝タイムマシン〟にかける作業は、一晩かかっても終わりません。

シーケンスは、できるだけ散らかさずに…

誰とも会話せず、起きてから寝るまで、部屋でずっと編集する生活が、通算1か月半ほどありました。

そして、サスペンスに欠かせないのが魅力的な「主題歌」です。

オリジナル楽曲制作にあたり、プロミュージシャンの松田ナオトさんには本当にお世話になりました。

ライブで多忙を極めるなか作業してくれた松田さん(右)
音色にこだわるあまり「当時モノのシンセサイザー」を購入

こだわりが爆発してしまい、何度も何度も修正のやりとりを重ねましたが、その甲斐あって見事に〝聞いたことある気がする〟けど「新しい曲」に仕上がっています。

2024年9月

一般公開に先駆けて、愛媛県今治市で地元にゆかりのある映像作品を上映する「いまばり映画祭」というイベントが開催され、フィルムエストの『道後ストリップ嬢連続殺人』も公開されることとなりました。

イオンモールのなかにある映画館には、200人を超える大行列。

応募人数に対して倍率は5倍だったそう

「西井君!」

カメラマンや助監督、撮影でお世話になった皆さんや、出演者の方が駆けつけてくれました。

たった6日間しかご一緒しなかったはずなのに、この温かさはなんだろう。
思わず胸が熱くなりました。

大スクリーンで流れる低画質の作品。前例がないだけに、皆さんの目にどう映るか心配でしたが、上映後の拍手を聞いてほっとしました。

作品をつくる喜びを、1年かけて味わわせてもらったこと。

動機が「地元愛」だったからこそ、本当に喜んでいただけたこと。

観客席の顔ぶれが、みんな笑顔だったこと。

そうだったよなあ。
映像って見て喜んでもらうためにあるもんなあ。。

今治市・徳永市長(右)も鑑賞に来られました

拍手の音をかみしめながら、スクリーンを後にしました。

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上映会が終わって、劇場の通路に立っていると、観客から声をかけていただきました。

「第2弾の舞台はどこにします?」

第2弾かあ…

今回は紹介できなかった南予のほうにするか、別の地方――たとえば、下呂温泉あたりまで飛ぶか…。

いや、でも当分はお腹いっぱいかなぁ……。。

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9月21日(土)昼、フィルムエストが大阪でイベントを開催します!
本ドラマをはじめ、この半年に公開した作品の撮影舞台裏エピソードを語り尽くします。

また、衣裳・小道具・美術品などを初めて展示します!
ぜひ「生」の感想をお伺いできればと思っております。皆様とお会いできるのを、楽しみにしております^^

目下構想&準備中です

また、東京・名古屋でもイベントが開催できればと奮闘中です!

公式ツイッター(X)などで情報発信してまいりますので、ぜひ今後ともチェックいただけますと幸いです!


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