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帰りにほろよいを買って帰る、それが大人への小さな一歩。

うどん、ヨーグルト。うどん、ヨーグルト。電車の中でそれを心で唱えながら最寄りの駅で降りる。今日は家に迎え前に近くのスーパーでうどんとヨーグルトを購入する予定なのだ。

とても忘れっぽい私は大体買おうと思っていたものが複数あればあるほど忘れる。そして大体予定にないものを買って、帰り道に本当に必要だったものに気付く。だから私は帰りの電車の中でうどん、ヨーグルト。うどん、ヨーグルト。と心の中で唱えていた。
先日、野菜などの食材はまとめて購入していた為、細々としたものをその時々に購入するぐらいで日々の食事は事足りたのだ。

スーパーに到着して、順調にうどんとヨーグルトをカゴに入れる。こういう時こそ、無駄なものを購入してはいけないのだ、そう思ってお会計に向かった。その時、ふと季節限定のほろよいを見付けてしまった。

甘夏味。私はもっぱら冷やしパインなどの夏限定のほろよいが好きな人間なので、気付けば甘夏味のほろよいをカゴの中に入れていた。私はそれで嬉しくなったのか、気付けばチューハイコーナーにいて、梅酒ソーダ味のほろよいもカゴに入れていた。

こうやっていつも、予定にない買い物ばかりしてしまう。しかし、私もついに会社帰りにお酒を買って帰る人間になったのだ。何となく、その事実だけでも少し大人になったような気がした。炭酸が嫌いで、お酒も日常的に飲まない私が、わざわざ家で飲みたいと思うだけでも立派な成長である。

「お酒は飲まないんですか?」
「はい、飲めないというより、飲まないんです。」

ほろよいで好きな味は定番なら梅酒ソーダ、グレープ、はちみつレモン。季節限定のものは基本的にどれも好き。実家にいた頃はたまに飲むほろよいを半分ほど飲んだところで、母親が炭酸の抜けた残りのほろよいを飲む。
両親はお酒が好きな人たちなので、缶ゴミが比較的よく集まる。私は週に一回、缶ゴミが出るか、出ないかの人間であった。だから、いつも缶は洗って一番近所の自販機のゴミ箱に捨てていた。

自転車でその近所の自販機まで行く道中、自転車カゴに入れた缶がカランカランカラン、と音が鳴る。ちょっとうるさいようにも感じる。

集落で移動手段のメインが自転車なのは私ぐらいだ。だから、初めて挨拶したおばちゃんでも、私が自転車で移動している事を知っている。それならいっその事、私が通った事を皆知ればいいや、そう思うと、ちょっと面白く感じた。坂道を下ると、またカランカランカラン、と音が鳴る。


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