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キブラバニスと私

スリランカに来た当初、私の好きなスリランカフードはキブラバニス(本当はブの前に小さいンが入る発音)だった。
キブラバニスとは日本語で直訳するとキブラ=ワニ、バニス=パンでワニパンと言われている砂糖がかかっている甘いパンである。形がワニみたいに見えるからワニパンと言われているのだが、正直ワニらしさはそこまで感じていない。

このパンは上に砂糖がかかっているのだが、お店によってはその部分がカリカリになっていたりして美味しい。私は運良く、最初に美味しいカリカリのキブラバニスを食べることが出来た。それから3日に1回はそのお店でキブラバニスを食べるようになった。(毎日食べないのは糖分過多になりそうだから)

そんな流れでキブラバニスはあっさりと私の好きなスリランカフード1位になったのだが、ここ1か月ほどキブラバニスを食べる気になれなかった。理由としては、新居に移った日に大家さんから「好きな食べ物はなに?」と聞かれた時に「キブラバニス」と言ったことから始まったキブラバニス大襲撃事件が原因だ。
現地の人からしたらスリランカフードであるキブラバニスが好きと聞いて、嬉しくなったのだろう。2日連続でキブラバニスを買ってきてくれた。1日目は1個、2日目には5個。きっと私自身を喜ばせたくてキブラバニスを買ってきてくれたに違いない。しかし、新居に移った当初の私はお腹を下していて、砂糖のかかったキブラバニスを食べる気になんてなれなかった。

お腹の調子が悪くて、キブラバニスを食べる元気なんてない。「お腹壊しているからご飯はいらない」と言っても、何故か次の日には倍増しているキブラバニスを見て、最早恐怖を感じていた。大家さんは「なんで何も食べないの?」みたいな顔をしてトイレから出てきた私に「カンナ」(食べなさい)と言う。だから、お腹が少し落ち着いた時にちょっと食べて、またお腹を下すの繰り返し。とにかくしんどかった思い出しかない。どれぐらいしんどかったかと言うと、トイレの中で「これからは絶対好きな食べ物キブラバニスって言わない」と誓うほどにしんどかった。現に今好きな食べ物を聞かれたらマンゴーって答えている。マンゴーなら多少いっぱい来ても食べられるから。

今、思うにスリランカの人はとにかくよく食べる。基本的にずっと食べている。だからこそ、ご飯を食べないという選択肢がそもそも思想として無かったのではないか?と感じる。
私も今となっては毎食大量のお米を食べれるようになったほど、スリランカのご飯に馴染みつつあるからこそ、人にとって「食べること」ってやっぱり重要なことが分かってくるし、それを共有する形が現地の人たちにとって(無意識的にかもしれないけど)わりと重要な意味があるように思えてくる。

そんなキブラバニス大襲撃事件があったこともあり、私は自然とキブラバニスのことを避けるようになっていた。好きな食べ物を聞かれてもパリップ(豆カレー)かマンゴーって答えるようになったし、パン屋さんに行ってもプレーンパンばっかり買うようになった。

でも昨日、スリランカにいる友人がSNSでキブラバニスの写真をアップしているのを見て、自分も久しぶりに食べたいなぁと思っておやつに近所のパン屋さんでキブラバニスを買った。そう言えば、あんまり近所のキブラバニス探訪が出来ていなかったと思いながら、久しぶりにキブラバニスを食べる。周囲には砂糖の匂いを嗅ぎつけたアリが集まってくる。(彼らの恐ろしい所はプラスチックの袋を突破してしまうポテンシャルがある所)久しぶりのキブラバニスはまずまずの美味しさだった。もっと美味しいカリカリのキブラバニスを近所でも見つけたい。

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