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現地の人からお金を借りる

先日、スリランカに来て初めて、現地人からお金を借りた。
と言うのも、私は財布を家に忘れてきてしまったからだ。しかも、そんな日に限ってホストファザーが行きは職場まで車で送ってくれた為、財布を忘れたことに気付いたのは職場に着いてからだった。

お昼ごはんはティータイムのお菓子でしのげるとしても、帰りのバス代はない。一応自分のカバンの奥底に忍ばせている緊急用の5000ルピーがあるのは知っていた。しかし、バス代50ルピーを払うのに5000ルピーを出す人なんて、まずいない。(そしてきっと外国人だからって理由でお釣りをごまかされる)
ああ、どうしたものかと思っていた時、Uberアプリに自分のクレジットカードを連携させていたことを思い出した。バスに比べて多少お金はかかってしまうけど、これなら何とか家に帰れる!そう思って職場から帰るタイミングでUberアプリを開いた。

その日は久しぶりに仲良しのグラフィックミスと退勤するタイミングが一緒になった。彼女と一緒にゲート近くまで行き、「私はスリーウィラーで帰るから」と言って別れようとすると、グラフィックミスは「ハルカはバスで帰れるでしょ?なんで?」と聞いてきた。ここで嘘を言ってもすぐにバレてしまうので、正直に「今日、財布を忘れたからお金がないの」と私は言った。それを聞いたグラフィックミスは案の定バス代を貸そうとしてくれた。しかし、トゥクトゥクで帰れば家にはお金があるから大丈夫と言っても、彼女は「トゥクトゥクなんかに乗ったら高いし、ハルカはバスに乗れるんだから、お金は出すからバスで帰りなさい」と言った。しかし、ここで私も折れる訳にはいかない。彼女には散々ネスカフェを頂いてしまっているのだから、ここでバス代まで借りることは出来ない。もっと言うと彼女との関係性を大事にしたいからこそ、私は彼女からお金を借りたくないのだ。
とは言え、グラフィックミスもそんなことでは折れない。最終的には「キーヤック オーネダ?(いくら必要なの?)」という彼女の問いに対して、私は口をつむぎ続ける我慢戦に突入した。しかし結局、私が折れてしまい、ミスから40ルピーを借りることになった。

翌朝、借りた40ルピーと一緒にお礼のレモンビスケットを持ってグラフィックミスの所に行った。すると彼女はすぐさま「エパー(ダメよ)」と言った。そして彼女は続けて「そんな小さいお金あげるわよ」と言う。
しかし、私からしたら借りたお金に小さいも大きいもない。「金額が小さいとか大きいとか関係ない。絶対受け取ってほしい」と私は伝える。
するとグラフィックミスは「エパー、メーカ ドゥンナ。アピ デンナ アーサイ。(だめよ。これはあげたものなんだから、私たちは与えるのが好きなのよ)」と言い、またしても両者とも譲らない姿勢が発生した。
しばらくそんな攻防が続いたのち、グラフィックミスから「マタ タラハイ(私は怒る)」と言い出した。この時はタラハイの意味が分からず、良くないとかそういうニュアンス何だろうと思った。しかし、こればかりは私も譲れない気持ちがあり「グラフィックミスの事を大事にしたい、だから受け取ってほしい」と言い続け、最終的に受け取ってもらった。

しかし、今振り返るに、このやり取りはかなり概念と概念のぶつかりだったように思う。その時は理解してなかったけど、彼女が「タラハイ」と言い出すぐらい、現地人からしたら自分があげたと思っていたものを返されるのは嫌だったのだろう。(恐らくそれがお金であっても)しかし、日本人からするとお金はお金である。「金の切れ目が縁の切れ目」と言うぐらい、お金が絡んだトラブルになると幾ら仲の良い友達でも疎遠になってしまうもの。だからこそ小さいお金だったとしても貸し借りはかなり厳密だし、そもそもお金を貸し借りすること自体が良しとされてない。
そう思うと、私はもう少しあの場でグラフィックミスに説明を行うべきだったと思った。私が今思ったことだけでもシンハラ語で伝えるとなると、どうやって言おうかと、頭の中で考えてみるが、考えれば考えるほど感覚的な話になってくる気がして、難しい。
正直、概念と概念のぶつかり合いだからこそ、説明してどうにかなる話ではないのかもしれない。しかし、実際に海外で生活する中で真正面からぶつかり合って話ができる人なんて少ないからこそ、この機会は大事にしたいと思う。

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